ノイシュ

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8/2/2023, 9:53:02 AM

……20XX年、明日で地球は終わりを迎える。

もし明日晴れたらどうする、そう貴方に聞いた。
そしたら貴方、僕達は明日死ぬんだよって、真面目な顔して言うんだもの。
私思わず笑ってしまったわ。

だって私達は死なないの。

いつか地球はまた生まれる。
そして新しい命に、私達の魂が吹き込まれる。
動物かもしれないし、植物か、もしかしたらミジンコかもしれない。
けれど、私達はそうして何かに生まれ変わって、また会えるの。
会えたら私、貴方を抱きしめて言うの。
今日はいい天気ねって。
そしたら沢山遊んで、沢山お話するわ。





ね、もう一度聞いていい。




もし明日晴れたらどうしたい。




7/30/2023, 9:12:22 AM

ねぇ、アタシのこと誘ってみせてよ。

どうしたんだい。突然。

アタシだって、乙女なの。月が綺麗ですね位、言って欲しいわ。

キミが、乙女ね。

何がおかしいの。

ごめんごめん。じゃあ月が綺麗ですね。

ダメよ。もうアタシが言ってしまったもの。

好きです。

ダメ。

愛してる。

ダメ。

たとえ嵐が来ようとも君を守るよ。

ダメね。

はは。手厳しいな。

貴方なら、手慣れていると思っていたのに。残念だわ。

残念だけれど。僕は手慣れてなんかいないよ。

ふーん。

僕は好いた女の、爪先にすら触れられない。
キミが想像している男であったなら、
今頃僕は、獣になっているだろうね。

獣。けもの、ね。

そうだ。
僕は今もキミの手に触れたいと思っている。
欲を言ってしまえば、キミを喰いたい。
唇だけじゃない。頭から足のつま先まで、
しゃぶりつきたいくらいに。

……。まぁ、次第点てところかしら。

もう帰るのかい。

そうよ、貴方の家に。

僕の家にかい。

そう。
さっきの口説き文句の返事のつもりなんだけれど。

さっきの。

鈍いわね。
アタシ、貴方になら喰われてもいいと言っているの。でも残さずに食べてね。





残さずに、よ。

















7/27/2023, 10:08:04 PM

・鳥かご
・それが誰かのためになるなら+神様が舞い降りてきて、こう言った

○鳥かご
鳥かごを買った。
1ケース五千円。
鳥を飼う予定は、ない。

1
スーパーの帰り道だった。
今日はこのまま家に帰るのが、嫌で。
その気持ちから逃げるように、私は雑貨屋に寄り道をした。その時に見つけたのが、この鳥かごだった。

良く言えば運命的。
悪く言えば衝動的だった。

アンティーク調でクリーム色が可愛かったから。
そんな理由で、鳥を飼う予定などないのに買ってしまったのだった。


2
家に着いた頃には、時計の針は8を指していた。

あの人は帰って来ていない。

だから、いつも通り自分の夕飯だけ準備をする。
今日はやる気が出なくてスーパーの弁当。そして、缶ビールを3本。
その内の1本は、家に帰る途中に空けてしまった。だから、酔っているのかもしれない。私は鳥かごをテーブルの上においてまじまじと観察を始めた。けれど、結局鳥かごは鳥かごだった。

私は、少し期待していたみたいだった。
ちょっぴり悲しい。鳥かごなのか、あの人に対してかは分からない。
分からないのが、もっと寂しかった。

3
ゴーン……ゴーン……。
日付が変わる音がした。
私はいつの間にか眠っていたようだった。

結局あの人は帰ってこなかった。
昨日は結婚記念日だった。

あの人は鳥なのね。
そんな事を思った。

あの人はきっと何処かで、羽を休めているのでしょう。ずっと鳥かごに閉じ込められていたから。自由になりたかったのね。

鳥かごのゲージは開いたままだった。
だけどもう閉じることは無いのだろう。

私は冷蔵庫から、ショートケーキを取り出した。
あの人がいつか美味しいと言っていたケーキだった。やっぱり私は馬鹿だった。
ケーキを食べた。

なんだかしょっぱかった。


○誰かのためになるなら+神様が舞い降りきて、こう言った。
神様が私の目の前に現れた。
なんでも、一つだけ願いをきいてくれるらしい。
私は迷った。
自分の事に使うのか、誰かのために使うのか。
そして私は、誰かのために使うことに決めた。

「世界中から戦争をなくしてほしい」

神様は言った。
「そうか。私も上から人間の争いを見てきた。あれほど辛く、悲しいことはないだろう。私もいつか争いが無くなることを願っている。」

神様は消えた。
テレビを見た。
何も変わっていなかった。


結局神様は神様だった。






7/24/2023, 11:42:47 AM

今日は、お母さんもお父さんもいない。
こんな寂しい夜は、アナタを呼んで一緒に遊びましょう。

お人形遊びをしたり、おままごとをしたり。
お母さんの口紅をつけて、大人ぶってみたり。
そして、大人ぶった私はアナタの唇にキスをした。

アナタの唇はひんやりしていて、かたい。
だけど心は、じんと温かくなった。

私は笑顔になる。
アナタも私と同じくらい笑顔になる。

アナタの口、おかしいわ。
口紅をつけたままキスをしたから、アナタの口にはワインレッドがベットリとくっついていた。

でも、お互い様ね。

私はお腹が痛くなるくらい笑った。
アナタも私と同じくらい、笑った。




「ねぇ、だれと話してるの」
お母さんが帰ってきた。
今日はもう遊びはおしまい。

じゃあね、また今度。

私はティッシュでワインレッドを拭った。

目の前には、私が居る。











7/23/2023, 12:52:23 AM

タイムマシン

タイムマシンに乗って。
私はこれから、10年前に戻ります。
タイムマシンに乗って、貴方に会いに行きます。


天鵞絨の絨毯に宝石が散りばめられたような、
そんな美しい夜のことでした。
10年前の今日、私は貴方に告白をされたのです。

「好きです」

ありきたりで退屈な言葉でした。
でも私は断らなかった。貴方が不器用で、そして私の事が大好きなのは分かっていたから。
本当はもっと言って欲しかったけれど、貴方の手がすごく震えているから、何だか愛おしくなってしまって 、YESと伝えるかわりに私は彼をそっと抱きしめました。
すると目の前の天鵞絨に一筋の光が落ちました。
私はそれが、流れ星だと分かった時には、運命なんだなと、彼の温もりを感じながら思ったのを今でも覚えています。



タイムマシンに乗って。
タイムマシンは殆どが金属で出来ていて、顔の部分だけガラス製で、周りが見えるようになっていました。中は思ったよりも狭く、まるで棺の中にいるような感覚になりました。
3,2....カウントダウンが始まって、ゼロ、と言われた時には、私はとてつもない浮遊感に襲われました。光よりも早く進むだけあって、見たことの無い景色が連続していました。だけど、タイムマシンの中は景色に反して、ゆっくりと進んでいるようでした。
連続していた景色から、見たことのある景色になりました。天鵞絨です。10年前の、あの美しい夜。
私は嬉しくなりました。
貴方に会える。貴方を交通事故で亡くしてしまった時から、会いたかった貴方に。私は貴方を救う為に10年前に戻ってきたの。
すると目の前に一筋の光が見えました。
それはタイムマシンでした。
一筋の光、それはあの時見た流れ星のようでした。
そう、そういう事だったの。
私の目には涙が溢れました。
ーーーーーマモナクトウチャクシマス。


私が彼を抱きしめた時、目の前の天鵞絨に2つの光が落ちました。
私はそれが、流れ星だと分かった時には、思いました。

運命だな、と。












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