……20XX年、明日で地球は終わりを迎える。
もし明日晴れたらどうする、そう貴方に聞いた。
そしたら貴方、僕達は明日死ぬんだよって、真面目な顔して言うんだもの。
私思わず笑ってしまったわ。
だって私達は死なないの。
いつか地球はまた生まれる。
そして新しい命に、私達の魂が吹き込まれる。
動物かもしれないし、植物か、もしかしたらミジンコかもしれない。
けれど、私達はそうして何かに生まれ変わって、また会えるの。
会えたら私、貴方を抱きしめて言うの。
今日はいい天気ねって。
そしたら沢山遊んで、沢山お話するわ。
ね、もう一度聞いていい。
もし明日晴れたらどうしたい。
ねぇ、アタシのこと誘ってみせてよ。
どうしたんだい。突然。
アタシだって、乙女なの。月が綺麗ですね位、言って欲しいわ。
キミが、乙女ね。
何がおかしいの。
ごめんごめん。じゃあ月が綺麗ですね。
ダメよ。もうアタシが言ってしまったもの。
好きです。
ダメ。
愛してる。
ダメ。
たとえ嵐が来ようとも君を守るよ。
ダメね。
はは。手厳しいな。
貴方なら、手慣れていると思っていたのに。残念だわ。
残念だけれど。僕は手慣れてなんかいないよ。
ふーん。
僕は好いた女の、爪先にすら触れられない。
キミが想像している男であったなら、
今頃僕は、獣になっているだろうね。
獣。けもの、ね。
そうだ。
僕は今もキミの手に触れたいと思っている。
欲を言ってしまえば、キミを喰いたい。
唇だけじゃない。頭から足のつま先まで、
しゃぶりつきたいくらいに。
……。まぁ、次第点てところかしら。
もう帰るのかい。
そうよ、貴方の家に。
僕の家にかい。
そう。
さっきの口説き文句の返事のつもりなんだけれど。
さっきの。
鈍いわね。
アタシ、貴方になら喰われてもいいと言っているの。でも残さずに食べてね。
残さずに、よ。
・鳥かご
・それが誰かのためになるなら+神様が舞い降りてきて、こう言った
○鳥かご
鳥かごを買った。
1ケース五千円。
鳥を飼う予定は、ない。
1
スーパーの帰り道だった。
今日はこのまま家に帰るのが、嫌で。
その気持ちから逃げるように、私は雑貨屋に寄り道をした。その時に見つけたのが、この鳥かごだった。
良く言えば運命的。
悪く言えば衝動的だった。
アンティーク調でクリーム色が可愛かったから。
そんな理由で、鳥を飼う予定などないのに買ってしまったのだった。
2
家に着いた頃には、時計の針は8を指していた。
あの人は帰って来ていない。
だから、いつも通り自分の夕飯だけ準備をする。
今日はやる気が出なくてスーパーの弁当。そして、缶ビールを3本。
その内の1本は、家に帰る途中に空けてしまった。だから、酔っているのかもしれない。私は鳥かごをテーブルの上においてまじまじと観察を始めた。けれど、結局鳥かごは鳥かごだった。
私は、少し期待していたみたいだった。
ちょっぴり悲しい。鳥かごなのか、あの人に対してかは分からない。
分からないのが、もっと寂しかった。
3
ゴーン……ゴーン……。
日付が変わる音がした。
私はいつの間にか眠っていたようだった。
結局あの人は帰ってこなかった。
昨日は結婚記念日だった。
あの人は鳥なのね。
そんな事を思った。
あの人はきっと何処かで、羽を休めているのでしょう。ずっと鳥かごに閉じ込められていたから。自由になりたかったのね。
鳥かごのゲージは開いたままだった。
だけどもう閉じることは無いのだろう。
私は冷蔵庫から、ショートケーキを取り出した。
あの人がいつか美味しいと言っていたケーキだった。やっぱり私は馬鹿だった。
ケーキを食べた。
なんだかしょっぱかった。
○誰かのためになるなら+神様が舞い降りきて、こう言った。
神様が私の目の前に現れた。
なんでも、一つだけ願いをきいてくれるらしい。
私は迷った。
自分の事に使うのか、誰かのために使うのか。
そして私は、誰かのために使うことに決めた。
「世界中から戦争をなくしてほしい」
神様は言った。
「そうか。私も上から人間の争いを見てきた。あれほど辛く、悲しいことはないだろう。私もいつか争いが無くなることを願っている。」
神様は消えた。
テレビを見た。
何も変わっていなかった。
結局神様は神様だった。
今日は、お母さんもお父さんもいない。
こんな寂しい夜は、アナタを呼んで一緒に遊びましょう。
お人形遊びをしたり、おままごとをしたり。
お母さんの口紅をつけて、大人ぶってみたり。
そして、大人ぶった私はアナタの唇にキスをした。
アナタの唇はひんやりしていて、かたい。
だけど心は、じんと温かくなった。
私は笑顔になる。
アナタも私と同じくらい笑顔になる。
アナタの口、おかしいわ。
口紅をつけたままキスをしたから、アナタの口にはワインレッドがベットリとくっついていた。
でも、お互い様ね。
私はお腹が痛くなるくらい笑った。
アナタも私と同じくらい、笑った。
「ねぇ、だれと話してるの」
お母さんが帰ってきた。
今日はもう遊びはおしまい。
じゃあね、また今度。
私はティッシュでワインレッドを拭った。
目の前には、私が居る。
タイムマシン
タイムマシンに乗って。
私はこれから、10年前に戻ります。
タイムマシンに乗って、貴方に会いに行きます。
天鵞絨の絨毯に宝石が散りばめられたような、
そんな美しい夜のことでした。
10年前の今日、私は貴方に告白をされたのです。
「好きです」
ありきたりで退屈な言葉でした。
でも私は断らなかった。貴方が不器用で、そして私の事が大好きなのは分かっていたから。
本当はもっと言って欲しかったけれど、貴方の手がすごく震えているから、何だか愛おしくなってしまって 、YESと伝えるかわりに私は彼をそっと抱きしめました。
すると目の前の天鵞絨に一筋の光が落ちました。
私はそれが、流れ星だと分かった時には、運命なんだなと、彼の温もりを感じながら思ったのを今でも覚えています。
タイムマシンに乗って。
タイムマシンは殆どが金属で出来ていて、顔の部分だけガラス製で、周りが見えるようになっていました。中は思ったよりも狭く、まるで棺の中にいるような感覚になりました。
3,2....カウントダウンが始まって、ゼロ、と言われた時には、私はとてつもない浮遊感に襲われました。光よりも早く進むだけあって、見たことの無い景色が連続していました。だけど、タイムマシンの中は景色に反して、ゆっくりと進んでいるようでした。
連続していた景色から、見たことのある景色になりました。天鵞絨です。10年前の、あの美しい夜。
私は嬉しくなりました。
貴方に会える。貴方を交通事故で亡くしてしまった時から、会いたかった貴方に。私は貴方を救う為に10年前に戻ってきたの。
すると目の前に一筋の光が見えました。
それはタイムマシンでした。
一筋の光、それはあの時見た流れ星のようでした。
そう、そういう事だったの。
私の目には涙が溢れました。
ーーーーーマモナクトウチャクシマス。
私が彼を抱きしめた時、目の前の天鵞絨に2つの光が落ちました。
私はそれが、流れ星だと分かった時には、思いました。
運命だな、と。