ねぇ、アタシのこと誘ってみせてよ。
どうしたんだい。突然。
アタシだって、乙女なの。月が綺麗ですね位、言って欲しいわ。
キミが、乙女ね。
何がおかしいの。
ごめんごめん。じゃあ月が綺麗ですね。
ダメよ。もうアタシが言ってしまったもの。
好きです。
ダメ。
愛してる。
ダメ。
たとえ嵐が来ようとも君を守るよ。
ダメね。
はは。手厳しいな。
貴方なら、手慣れていると思っていたのに。残念だわ。
残念だけれど。僕は手慣れてなんかいないよ。
ふーん。
僕は好いた女の、爪先にすら触れられない。
キミが想像している男であったなら、
今頃僕は、獣になっているだろうね。
獣。けもの、ね。
そうだ。
僕は今もキミの手に触れたいと思っている。
欲を言ってしまえば、キミを喰いたい。
唇だけじゃない。頭から足のつま先まで、
しゃぶりつきたいくらいに。
……。まぁ、次第点てところかしら。
もう帰るのかい。
そうよ、貴方の家に。
僕の家にかい。
そう。
さっきの口説き文句の返事のつもりなんだけれど。
さっきの。
鈍いわね。
アタシ、貴方になら喰われてもいいと言っているの。でも残さずに食べてね。
残さずに、よ。
7/30/2023, 9:12:22 AM