ノイシュ

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・鳥かご
・それが誰かのためになるなら+神様が舞い降りてきて、こう言った

○鳥かご
鳥かごを買った。
1ケース五千円。
鳥を飼う予定は、ない。

1
スーパーの帰り道だった。
今日はこのまま家に帰るのが、嫌で。
その気持ちから逃げるように、私は雑貨屋に寄り道をした。その時に見つけたのが、この鳥かごだった。

良く言えば運命的。
悪く言えば衝動的だった。

アンティーク調でクリーム色が可愛かったから。
そんな理由で、鳥を飼う予定などないのに買ってしまったのだった。


2
家に着いた頃には、時計の針は8を指していた。

あの人は帰って来ていない。

だから、いつも通り自分の夕飯だけ準備をする。
今日はやる気が出なくてスーパーの弁当。そして、缶ビールを3本。
その内の1本は、家に帰る途中に空けてしまった。だから、酔っているのかもしれない。私は鳥かごをテーブルの上においてまじまじと観察を始めた。けれど、結局鳥かごは鳥かごだった。

私は、少し期待していたみたいだった。
ちょっぴり悲しい。鳥かごなのか、あの人に対してかは分からない。
分からないのが、もっと寂しかった。

3
ゴーン……ゴーン……。
日付が変わる音がした。
私はいつの間にか眠っていたようだった。

結局あの人は帰ってこなかった。
昨日は結婚記念日だった。

あの人は鳥なのね。
そんな事を思った。

あの人はきっと何処かで、羽を休めているのでしょう。ずっと鳥かごに閉じ込められていたから。自由になりたかったのね。

鳥かごのゲージは開いたままだった。
だけどもう閉じることは無いのだろう。

私は冷蔵庫から、ショートケーキを取り出した。
あの人がいつか美味しいと言っていたケーキだった。やっぱり私は馬鹿だった。
ケーキを食べた。

なんだかしょっぱかった。


○誰かのためになるなら+神様が舞い降りきて、こう言った。
神様が私の目の前に現れた。
なんでも、一つだけ願いをきいてくれるらしい。
私は迷った。
自分の事に使うのか、誰かのために使うのか。
そして私は、誰かのために使うことに決めた。

「世界中から戦争をなくしてほしい」

神様は言った。
「そうか。私も上から人間の争いを見てきた。あれほど辛く、悲しいことはないだろう。私もいつか争いが無くなることを願っている。」

神様は消えた。
テレビを見た。
何も変わっていなかった。


結局神様は神様だった。






7/27/2023, 10:08:04 PM