タイムマシン
タイムマシンに乗って。
私はこれから、10年前に戻ります。
タイムマシンに乗って、貴方に会いに行きます。
天鵞絨の絨毯に宝石が散りばめられたような、
そんな美しい夜のことでした。
10年前の今日、私は貴方に告白をされたのです。
「好きです」
ありきたりで退屈な言葉でした。
でも私は断らなかった。貴方が不器用で、そして私の事が大好きなのは分かっていたから。
本当はもっと言って欲しかったけれど、貴方の手がすごく震えているから、何だか愛おしくなってしまって 、YESと伝えるかわりに私は彼をそっと抱きしめました。
すると目の前の天鵞絨に一筋の光が落ちました。
私はそれが、流れ星だと分かった時には、運命なんだなと、彼の温もりを感じながら思ったのを今でも覚えています。
タイムマシンに乗って。
タイムマシンは殆どが金属で出来ていて、顔の部分だけガラス製で、周りが見えるようになっていました。中は思ったよりも狭く、まるで棺の中にいるような感覚になりました。
3,2....カウントダウンが始まって、ゼロ、と言われた時には、私はとてつもない浮遊感に襲われました。光よりも早く進むだけあって、見たことの無い景色が連続していました。だけど、タイムマシンの中は景色に反して、ゆっくりと進んでいるようでした。
連続していた景色から、見たことのある景色になりました。天鵞絨です。10年前の、あの美しい夜。
私は嬉しくなりました。
貴方に会える。貴方を交通事故で亡くしてしまった時から、会いたかった貴方に。私は貴方を救う為に10年前に戻ってきたの。
すると目の前に一筋の光が見えました。
それはタイムマシンでした。
一筋の光、それはあの時見た流れ星のようでした。
そう、そういう事だったの。
私の目には涙が溢れました。
ーーーーーマモナクトウチャクシマス。
私が彼を抱きしめた時、目の前の天鵞絨に2つの光が落ちました。
私はそれが、流れ星だと分かった時には、思いました。
運命だな、と。
7/23/2023, 12:52:23 AM