『夜明け前』
なんかこう、言葉にできない良さがあるよね。
空が不思議な、幻想的な感じというか。
それに、町が静かなのもいい味出してる。
いつか夜明け前の町を、一人のびのび歩いてみたいなぁ。
多分、タブレットの空き容量が写真で埋まるよ。
『本気の恋』
例え、歪んでいようと、紛れもなくこれは恋だ。
叶うことのない、そんな恋。
「どんなコメント送ったら反応してくれるかなぁ…………金欠だからなぁ…………」
推しのVtuberの配信を見ながら、送るコメントを選ぶ。
[いつも見てます。ありがとうございます。大好きです。]
君が反応しなかろうと、構わない。
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歪んだ感情でも、皆はわたしを愛している。
正確には、『アバター』を愛しているのだけど…。
「続いてのコーナーは~!質問コーナー~っ!!このコーナーは…………」
送られたコメントを見つつ、いつも通り元気に喋っている時、一つのコメントが目に入る。
[いつも見てます。ありがとうございます。大好きです。]
色はなくても、反応できなくても、ちゃんと届いてるよ、その言葉。
『カレンダー』
「……はぁ。」
ソファーが揺れる程勢い良く座る。というか飛び込む。
で、こんな行動にもワケがある。
今、俺はクソ程疲れている。
なんでかって……
「グループ活動、ほんっとクソ……。」
学校でグループ活動があった。それも生徒が個人個人でグループを作る奴。
こんな協調性、発言力、やる気共にゼロな奴、だぁれも引き取りゃしない。
「消える、か……。」
SNSで時々、『消えたい』と言う奴が居るが、俺の場合もう既に消えているから消えようがない。というか寧ろ知られててほしい。いや、皆俺の事を知ってて無視してるのは知ってるんだが。
「…頭痛ぇ…………」
俺が皆から、『居ない者』扱いされたのはいつからだろう。そんなの、今更知ったって何にも変わらない。
誰からも。家族も、同級生も、お偉いさんも。
みぃんな、見て見ぬ振り。ここまで来ると、逆に清々しい。
誰にも気を使わず騒げるし、逆に助かる。
「……多分、小学生の頃か。」
形だけの勉強机に乗ったカレンダーを見つめ、呟く。
あの勉強机、今はゲームとかパソコンの作業とか、そういう事にしか使ってない。
正直、授業だけで十分理解は追い付く。というか先を越している。
…俺の頭が、学校にとって場違いなだけなのだろうが。
「だから何なんだ。…………知るか。」
最近の会話は、自問自答しかしていない。そうでもしないと気が狂う。
もう、手遅れだろうが。
脳に悲観的な思考がカビの様に付く。
棄てられた?罪を犯した?気味悪がられた?何かおかしい点があった?
「っ…く、うっせぇ、何なんだよ…………。何なんだよ……!」
怒りが少し混じりながら、またカレンダーを見つめる。
俺の部屋に見所が全くないからなのだが。
「…っ、まだ月曜かよ………っ、はぁ…。」
もう、疲れた。何もしていないのにも関わらず。
それでも、まだ頭はズキズキ痛む。
時々、小さいころに戻りたいと思う。
小さい時、当たり前のようにあった物を、どこかで無くしてしまった気がするから。
小さい時は、自信に満ち溢れていた。
小さい時は、楽しさに満ち溢れていた。
小さい時は、時間がたくさんあった。
……あ、あと。
小さい時は、お年玉を貰えていた。
小さい時は、クリスマスプレゼントも貰えていた。
……それが無くなるのは当然だけど。
『喪失感』
『世界に一つだけ』
あなたという人間は、世界に一人しかいない。
見た目がどんなに似ていようと、性格が似ていようと。
”同じ”にはなれない。
それは、私が一番知っている。
私は、演技が得意でね。
時に優等生を演じ、時に聖人を演じていた。
でも、”本物”には成れなかった。
だってそうでしょう?
優等生に成れるほど私に才能も無いし、聖人に成れるほど私の心根は優しくない。
当然よ。
…どんなに周りより劣っていても、どんなに周りより穢れていても。
あなたという人間は、世界に一人しかいないの。
だから、泣かないで、私。