病室
そこで目が醒めた。
近くにある窓からは自分が最期に見た空とは違い、
輝く煌めきで満たされていた。
その煌めきに照らされるのは、そこらじゅうに散らばる
瓦礫と硝子たち。
とても美しく見えた。
だが、踏んで仕舞えば傷がついてしまう。
何しろ、今の自分は何故か裸足なのだから。
だけれど、「ずっとここにいても飽きてしまうだろう」
冷静にそう考えて、怪我をする覚悟で足を動かした。
こんな異常事態で、なにもパニックを起こさず冷静でいられる自分を不思議に思いながら。
足の痛みを我慢しながらも、暫くのあいだ歩いた。
幸い、そこまで広い病院ではないみたいで、
思っていた以上にすぐ出口らしき扉を見つけた。
扉のまわりにも矢張り、瓦礫や硝子が散らばっていた。
だけれど、そんなのお構い無しに、扉に手を伸ばした。
扉を開けた瞬間、とても眩しい光に包まれて、思わず目を瞑った。
暫くして目を開いた先にあったのは、
花だった。
余り見ない花が咲いていたものだから驚いたけど、
それよりも驚くことが起こった。
あの人がいたんだ。
足の痛みですら忘れ、思わず走った。
また会えたことの嬉しさで、泣いてしまった自分を優しく彼の人は包んでくれた。
とても幸せだ
あんな処よりも
ずっと ずっと。
あの人の後を追って、良かったぁ。
私だけ
仲間外れ
無視
独りぼっち
まるで、私だけ、この世界の人に、見えていないみたい
赤い糸
それは運命の糸
真っ赤な糸
私と君を結んでいる糸
でもそれは、元々“白かった”みたいね
だけど今は、赤い糸
元々白かったこの糸を、赤い糸とは呼ばないかもしれない...
でもそんなことどうだっていい
だってやっと私たちは運命の赤い糸で結ばれたんだから!
君と、私の小指につながっている
これはきっと、『運命の赤い糸』で間違いないんだから!
“夏”
それは、汗が鬱陶しいぐらいに付き纏っていた頃。
部活で校庭にいて、涼しくない訳でもないような感じのぬるい風が頬を掠った。
マジで暑くて天を仰いでいたら、ある人と目が合った。幼い頃から一緒にいた人。つい、手を振ってしまった
よく見たらなんでかあの子は顔が赤くなってた
あの子は顔を隠しながら手を振り返していた
『手を振っただけなのに?』
『暑いのかな?』
などと色々考えていたら、友達に呼ばれた。
すごく気になるが、部活をしなきゃいけないから仕方なく考えるのをやめた。
戻ってる途中、もしかして...と考えた。
俺のこと、少しは意識してくれたのかな……?
繊細な花
それは儚く、触れるだけで散ってしまうような“花”
それは美しく、見た者が全員惚れてしまうような“花”
それは私にとって、程遠い存在の“花”
そんな風に言われているはずの“花”が、どうして、私と一緒にいるんだろう。
そんな事を思っていると、一緒にいる“花”に言われた。
「“華”って繊細だよね。」
「“華”って触れちゃうだけで、花びらになって散っちゃいそう。」
「“華”って綺麗だよねぇ。見た人みんなが惚れちゃうんじゃない?」