可惜夜

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病室
そこで目が醒めた。
近くにある窓からは自分が最期に見た空とは違い、
輝く煌めきで満たされていた。
その煌めきに照らされるのは、そこらじゅうに散らばる
瓦礫と硝子たち。

とても美しく見えた。
だが、踏んで仕舞えば傷がついてしまう。
何しろ、今の自分は何故か裸足なのだから。
だけれど、「ずっとここにいても飽きてしまうだろう」
冷静にそう考えて、怪我をする覚悟で足を動かした。

こんな異常事態で、なにもパニックを起こさず冷静でいられる自分を不思議に思いながら。

足の痛みを我慢しながらも、暫くのあいだ歩いた。
幸い、そこまで広い病院ではないみたいで、
思っていた以上にすぐ出口らしき扉を見つけた。
扉のまわりにも矢張り、瓦礫や硝子が散らばっていた。
だけれど、そんなのお構い無しに、扉に手を伸ばした。

扉を開けた瞬間、とても眩しい光に包まれて、思わず目を瞑った。

暫くして目を開いた先にあったのは、

花だった。

余り見ない花が咲いていたものだから驚いたけど、
それよりも驚くことが起こった。


あの人がいたんだ。

足の痛みですら忘れ、思わず走った。

また会えたことの嬉しさで、泣いてしまった自分を優しく彼の人は包んでくれた。

とても幸せだ
あんな処よりも
ずっと ずっと。




あの人の後を追って、良かったぁ。

8/2/2023, 11:42:43 AM