法事に帰った実家の縁側で
麦茶を飲みながら夕涼み
まだこの時期なら
陽が落ちれば
昼間の暑さも
少しは和らいでくれる
やがて来る灼熱を乗り切れるかは
また別の話し
『夏の気配』
●No.24
長患いをしていた私
終わりの時が近づいた今
傍らには手を握る彼
静かな時間が流れる
「幸せだったよ、ありがとう」
「こちらこそ」
だんだんと瞼が重くなり始める
伝えなければと必死になる
「大好きだよ、おやすみ」
精一杯の笑顔とありったけの愛情を込めて
言い切ったと同時に意識を手放した
『最後の声』
No.23
起きた途端のダルさと熱に
休みの連絡を入れて
ベッドに体を沈みこませ目を閉じる
こういう時に限って
夢見が悪いことの自覚はあった
なかなか眠れない
しばらくして玄関から音がする
きっと合鍵を持っている彼だろう
時刻を見れば彼は昼休みの時間だ
心配して来てくれたのだろうか
ノックとともに声をかけ部屋に入ってきた彼
「大丈夫じゃなさそうだな。
食欲があるなら何か作る」
言い置いて部屋を出ていこうとした
彼の服の裾を無意識に掴んで
『どこにも行かないで』
●No.22
夢を見た
だだっ広い平原のど真ん中
私から遠く離れた位置に
反対側の地平線の方角を向いて
立ち尽くすあなたを見つけた
ようやく見つけたあなたは、しばらくして
その地平線の方へ足を運び始めた
「行ってしまうの?なら私も着いていく」
溢れる気持ちを抑えられなくて
私は小走りで離れた場所からその背を追う
あなたは独りじゃない
私がそっと見守っているよ
『君の背中を追って』
●No.21
自分がいくら好きなことだとしても
夢中になってやっているとしても
それが上手くいかない場面はある
そんな機会が何回も重なって
思わず「嫌いだ」とつぶやいてしまった
それでも続けるのだけど
何回かして
また成功した時に僕は気がついた
それが嫌いになったわけではなかった
好きなことなのに
上手くいかないことが、もどかしく
成功できない自分自身が嫌だったのだと
『好き、嫌い、』
●No.20