【収穫祭】星が溢れる
今日は年に一度の収穫祭。
誰もが待ちに待ったお祭り……だそうだ。
子供達は朝早くから籠を準備してそわそわと落ち着かない様子だ。
大人達もそんな子供達を見守りながら、お祭りに思いを馳せている。
「あんた、旅の人かい? ちょうど収穫祭の日にこの街にいるなんて、ツイてるねぇ!」
不思議そうにこの街の浮き足ムードについて訊ねる私に、宿屋の女将さんが教えてくれた。
何せこの街を訪れるのは初めてで、まさか旅程が特別なお祭りと重なるなんて思ってもみなかったから。
「どうりで籠も持たずに歩いてるってわけかい」
籠を持っていないのがそんなにおかしかったのだろうか。
「この街に住んでいる人間で籠を持っていないのなんていないさ! 籠がないと星を集められないからね」
星?星とは一体何のことだろう。
「あぁ、あんたは知らないんだったね。収穫祭にはねぇ、星を収穫するのさ。星蒼花《ブルースターフラワー》って聞いたことないかい?」
星蒼花、聞いたことはある。あるが……。
その花は図鑑に載っている伝説の花ではなかったか?
「伝説? そんなのは聞いたことないがねぇ。あんたの記憶違いじゃないかい?」
女将さんは親切にも私に籠を持たせてくれた。
「まぁとにかく行ってみることさ! 見りゃ一発でわかる。収穫祭ってね! アタシも後で行くけど、早い方がいい! ほら行った行った!」
宿から送り出されて、私は人の流れる方へと歩いて行った。
収穫祭は夕方から始まるらしい。空がオレンジ色に染まってきたから、そろそろ始まるのだろう。
会場である丘は人でごった返しており、皆今か今かと収穫を待っている。
ふと誰かが声を上げた。
「星が降ってきたよ!」
その声で誰もが上を見上げて籠を掲げる。
「綺麗〜!」
「今年もこの季節がやってきたねぇ」
「ママ、お星様!!」
「ちょっとあんた早くこっち来な!」
私も見よう見まねで籠を掲げ、空を見上げると、
そこには……
たくさんの星があった。
信じられないかもしれないが、星蒼花が空から降り注ぎ、掲げられた籠に集められていく。
間違いない、これは伝説の花と呼ばれる星蒼花だ。
各国を旅した私でもこんな光景は目にしたことがない。
籠はいつしか満杯になり、入り切らなかった星蒼花が溢れ落ちている。
薄く発光した青い花。
この街に住む人は毎年これを収穫しているというのか。
こんなにたくさんあるのに、どうして伝説なんて言われているのか不思議に思った。
その答えはすぐにわかることとなる。
収穫祭の翌日、私は女将さんに見送られながら宿屋を出た。
次の街に向かうためだ。
星蒼花はせっかくだからと鞄に入れられるだけ詰めて、残りは籠のお礼も兼ねて女将さんにお裾分けした。
街を出てしばらくして、ふと鞄を見てみた。
すると……そこにあったはずの星蒼花が跡形もなく消えていた。
あぁ、この花はあの街でしか存在できないんだ。
だから伝説などと言われていたのだ。
全てを悟った私は、おそらくもう二度と入ることはできないであろう街を想いながら、旅路を進んだ。
【誰かがどこかで】安らかな瞳
子供を見る、親の瞳。
慈しむように、ときおり心配するように。
友人と交わす、お互いの瞳。
ただただ笑顔で、相槌を打って。
想い人を追う、片想いの瞳。
振り向きませんように、と思いながら。
通りすがりに出会う、優しい瞳。
周りに伝播して、少し良い世界へ。
鏡の向こうのわたしを見る、わたしの瞳。
今日も頑張ろう、と背筋を伸ばして。
願わくば、誰かに向けられる誰かの瞳が
安らかでありますように。
【これからも】ずっと隣で
出会ってもう6年経つんだって。
長い?短い?
わからないけれど、私にとっては大切な6年。
私は知っている。
あなたが頑張り屋さんだってことも、完璧主義なところがあることも。
だから、あなたに大切な人が出来たとき嬉しかった。
……嘘。ほんとはちょっとだけ寂しかった。
私の方があなたのこと知ってるのに、って思った。
だけど、あなたが辛い思いをしていたあのときそばにいたのはその人で。
あなたのそばにいられない自分が情けなかった。
大切な人とお別れした、とメッセージが来た。
昨日のことだ。
私はびっくりして、どうして?と思った。
あんなに仲が良かったのに。
「いつでも話聴くから」としか言えなかった。
私もいつかあなたと別れることがあるのだろうか。
そう考えると、急に怖くなる。
一緒にいられる今を大切にしなければ。
もし、叶うのならこれからもずっと……、
ずっと隣で……。
【友人のこと】もっと知りたい
友人は、不思議なひとだった。
いつも優しくて、ニコニコしていて、誰に対しても人当たりが良い。だからといって周りに流されることもなく自分を貫いていたから、八方美人なんて言われることもなかった。
そんな友人はふとした瞬間、なんだか哀しそうな表情でどこかを見ていることがあった。
それは普段の友人からは想像もつかないような様子で、だからこそ気になってしまったのだ。
ある時、友人に問うてみた。
「何かあった?」と。
友人は不思議そうにこちらを見ながら、「何もないよ」とだけ答えた。
哀しい表情をしていることに、自身でも気付いていないのだろうか。
だとしたら……。
「ーーのこと、 。」