『届かない』
“理想”は、自分が行き着くことのできない場所を指す言葉だと思う。
だって、そうじゃなきゃ”目標”って言うはずでしょ?
私にとって理想のあの子は、私よりも何十歩も先にいる。
その上努力を続けるのだから、私が追いかけたところでその差は埋まらない。
「そんなの気合いでなんとかなるだろ!」
「努力が足りないんだ!」
そんな意見もあるかもしれない。
私だって自分の努力が充分だなんて決して思っちゃいない。
だけど、努力よりもそのずっと前、人の性格、経験、環境なんてものはそれぞれ違う。
この領域は努力でなんとかなるものじゃない。
それも加味して、理想のあの子には到底敵わない。
だから、これからも私は”理想”のあの子を遠目に見ながら、”目標”に向かって努力していくしかないのだ。
お題【理想のあなた】
『交差』
きっと明確に意識した訳じゃなくて
気付いたら別の方向を向いていただけ
それは、年齢を重ねたからなのか、会わない時間がそうさせたのか
わからないけれど、道は分たれてしまった
だからこれは私の決断でもなく、あなたの決断でもなく
単なる自然現象
わたしたちは異なる道を歩んでいく
だけどもし、道をずっと進んだ先に
再び交差する道があるのならば
その時はまた巡り合える
だからそれまでしばらくの「さようなら」
もしくは一生やってこない「またね」
お題【別れ】
『好きな童話』※微百合
「えー、そうだなぁ。わたしは『シンデレラ』が好きかなぁ」
ーーどうして?
「どうしてって、シンデレラストーリーっていうじゃない? 虐げられていた主人公が、王子様に見初められて幸せになる物語。お話として夢があるわよねぇ」
ーー夢がある、ねぇ。やっぱりさ……
「恋愛に限らずサクセスストーリーは読んでいて気持ちいいからね」
ーーサクセスストーリー……。私たちの人生は成功へ向かっていると思う?
「突然変なこと言い出すのね。成功じゃなきゃ今ここにいないわよ。わたしも、あなたも」
ーーでも……。もし、
「あの時、舞踏会に行っていればわたしが王子様に見初められていたとでも言いたいの?」
ーーえぇ。あなたは素敵な子なのだからきっとそうなるはずだった。
「でもねぇ。例えそうだったとして幸せになれる保証なんてないわ。だったらわたしは自分で幸せになる道を選びたかった。あなたを巻き込んだのは申し訳なかったと思っているわ」
ーーそんなこと……どちらにせよ私は舞踏会が終わる前にはあの国を出るつもりだったから。
「そう、ならわたしたちの成功ね。これからきっとわたしたちは幸せになれる、そうでしょ? 偉大なる魔女様?」
ーーえぇ。そうね。
家族に虐げられていた少女の元へ一晩だけ魔法をかけるために現れた魔女は、少女たっての願いで旅に出ることとなった。
これはかの御伽話とは別の物語。
自ら幸せを掴む少女と魔女の物語。
お題【恋物語】
ひとこと) n番煎じかもしれない……。
『未解決事件の真相』
「後悔先に立たず」と言うけれど、 僕が探偵人生の中で出会ったこの事件こそ、まさにこの諺を体現していると言ってもいいだろう。
思えばこの事件は初めから奇妙だったのだ。普段は事件に興味のある素振りを見せない助手が、この事件に関してだけはやけに熱中していたから。
事件の概要はこうだ。とある富豪の屋敷から稀代の天才彫刻師が作った「彫刻」が盜まれた。それは奇妙な形の作品で、先端が鋭利な刃物のように尖っていて、素手で触ると怪我をするほどなのだとか。そんな危険な代物であるから、それはもう厳重にガラスケースの中に仕舞われていたし、そもそも屋敷の警備がしっかりしていたから、下手人が潛り込むことすら困難な筈であった。
だからこそ身内の犯行が疑われた訳であった。関係者は以下の通りだ。(※プライバシーの観点から、人物名についての記述は差し控える)
・屋敷の主人: 盜品に遭った被害者。「彫刻」を見るために毎日部屋にこもっている。
・妻: 「彫刻」を毛嫌いしていた。
・息子: 独り立ちしてすでに実家を出ているが、事件の前日実家を訪れている。
・家政婦: 二日に一度、家事をしにやってくる。事件の日は休日だったため屋敷には来ていない。
・庭師: 週に二度、庭の手入れにやってくる。事件発覚前の昼間に手入れに来ていた。
助手がこの事件に関する新聞記事を持って来たとき、僕はすぐに犯人に関する予想を立てた。僕の過ちは、それを口に出して言ってしまったことだ。
「犯人は息子だろう」と。
僕の見立てでは、この「彫刻」によってこの家族は壊れてしまったのだろうと推測できた。「彫刻」に夢中な主人…それを嫌悪する妻…そして早々に独り立ちした息子…。息子は家族を壊したこの呪物を屠ろうと実家を訪れて、それを盜む計画を立てたのだ。
その計画とは、前日に実家を訪れて一旦帰ったふりをし、屋敷の中に潜んで主人たちが寝静まった夜中に「彫刻」を盜み出すと言うものだ。
一見杜撰に思う僕の推理が、本当に正解だったのかはわからない。だけど、おそらく正解だったのだろう。
容疑者とされた息子はその後姿を消した。それと同じタイミングで僕の助手も行方をくらました。
事件は未解決のまま時が経ち、ある時僕宛に差出人不明の手紙が届いた。それにはこのように書いてあった。
[この便りが届く頃にはもうこの身は朽ち果てていることでしょう。これがあの時告げられなかった、最期の挨拶となることをお許しください。あの時点では、貴方にこの事件を解決される訳にはいかなかったのです。だから解決の手掛かりとなる私自身が消えるしかなかった。−−中略−− やっと準備が整ったので、私は呪物と共に眠ることにしました。願わくば、貴方のこれからが幸せでありますように。]
僕はこの手紙をどうすれば良いのかわからなかった。彼に「呪物」とまで言わしめた「彫刻」とは一体なんだったのだろう。
あの時僕が彼に推理なんて伝えなければ、彼は今も助手として何食わぬ顔で此処にいたのではないか。そんなたらればばかりが頭に浮かぶ。僕は深いため息と共に、その手紙を机の引き出しの奥底にしまった。
それから数日も経たぬ頃、事件は思わぬ形で解決を迎えた。
とある新興宗教の教祖が逮捕されたのだ。その宗教のシンボルマークとしてニュースに取り上げられたのは、先端が尖った生物のようなナニカ。まさに「呪物」と言っていいほどの代物だった。
お題【後悔】
『歴戦の猛者がいうことには』
突然だが、愛を叫ぶ人を見たことがあるだろうか。おそらく多くの人はNoと答えるだろう。
しかし、大変稀なことに私は愛を叫ぶ人を何度も見てきた。それが私の友人である。
友人は久々に会うと大抵新しい恋人ができている。学生時代でさえ頻繁に恋人が変わっていたのだから、さもありなん、といったところだろうか。恋多きことから軽薄なのかと思いきや、意外にも友人は一途でその時々の恋人を大切にしていた。
高校の文化祭、友人は恋人と模擬店を周り幸せオーラを振り撒いていた。そして、「未成年の主張」のオマージュのようなステージに自ら上がり、大声で叫んだ。
「愛してるー!」と。
お察しの方もいるだろうが、友人はこのような行動を当たり前にやってのける人物なのだ。
私には到底辿り着けない領域に至っている友人に、ある時尋ねてみた。
「どうしてそんなに愛情を伝えられる?」と。
友人の答えは実に単純だった。
「どうしてって、そりゃ言える時に言っとかなきゃ後悔するかもだから」
お題【愛を叫ぶ。】