センチメンタル・ジャーニー
後ほど!
白い空。
空の白。
どこまでも澄んでいる青い空。
秋というには暑すぎる。
「ね、ダムの水ピンチだってよ」
「ま、仕方ないよ。ここ最近まったく雨降らないし。」
私は素っ気なく答えた。風鈴の音も聞こえない。
「じゃあみーこが外に出ないように見張っといてよ。
いくらみーこって言ってもさ、夏バテしちゃうし。」
「…わかったわかった。見張っとけばいいんでしょ。」
「うん。でもそれ以前に最近みーこあんま見掛けないような感じする。」
「みーこ最近いいオトコと出会ったって。マキに戻ってくる暇ないくらいにはイチャイチャしてんでしょ。」
「えぇ、みーこあんな気難しい性格のくせにどんなオトコと会ったって言うのよ! 私が許さない!」
「人様ならぬ猫様の恋を邪魔するんじゃない!
ったくもう! みーこのことになった瞬間あんた血眼だよね?」
「みーこぉお…」
みーこ。マキが大大大大好きなネコ。
三毛猫でミーと鳴くのでみーこ。
ミコト。愛称ミーコ。
3年前に死んだ、マキの大親友。
三毛猫なんて元からこの家にいなかったし、地域猫でもなかった。
記憶の断片すら割れ落ちたのだ、このマキという女は。
その一番の証拠、一番気づきやすい証拠に気づかない。
この家はアタシの家じゃない。
そしてアタシとあんたは、
初対面。
〔空白〕
疲れた。すごく疲れた。
手探りで鍵を取り出して差し込む。
部屋の中は暗い。いつも通りの。
時刻はまだ午後22:37。
スーツを適当に脱ぎ捨てる。靴下も一緒に脱いで洗濯籠に押し込んだ。
あーあ。もう洗わなきゃじゃん。この前洗濯したばっかなのに。ふと鏡に映った自分と目が合う。あんた、隈やばくない?それよか髪ぼさぼさ過ぎない?
「はあぁ…」
溜息を吐くと幸せが逃げるというが、ここ最近は幸せが来た覚えもないので遠慮なく溜息を吐く。
一人暮らし用の冷蔵庫を開けて、チューハイを一本取り出す。皮膚から伝わる冷えた感触が少し落ち着く。
光源は窓から差し込む、薄暗い月明かりで十分だ。電気をつけるのももう面倒くさい。
まさにアニメならグビッという音が鳴るであろう。それほど一気にアルコールを体内に注ぎ込んだ。
脳が錯覚を起こしているだろう。今私はとてもハッピーな気分だと。
明日も仕事か…あれ、明日たしか時間変更あったよね、何時からだっけ。
あ、明日めっちゃ早いなぁ…。どうしよ、もう寝ようかな。それともお風呂入ろうかな…。無理だ。今すぐ寝て、明日早く起きよう。それでお風呂入ろう。
え。推してるバンドがグッズ発売してる。うわー。でも今月の給料じゃな…なんか貯めておきたいんだよな。
もういいや、今日は寝よう。
あでも歯磨きはしなきゃ。やば、明日飲み会あるじゃん…。まじで無理なんだけど…
大学の友達とリモートで話そうかな。最近話してないんだよね。……うーん。やっぱいいかも。忙しいって言ってたし、最近会社の上司といい感じらしいし。
付け入る隙はないって感じっすかねぇ……。ホントお似合いな事だよ全く。
夜風が湿ってる。頭が冷やされた様な気がする。ノリで買った観葉植物、何気に生きてるんだよね。
あんた意地汚いな。最近世話してあげられてないのに、頑張ってる。
月明かり、照らしてくれるのが私だけだったらいい。
せめてあんた位は私に振り向いててよね。
〔ひとりきり〕
散りばめられた、あかのはなびら、
さりげなく私を着飾るやうなみどり、
すう、とさしこんだ貴方のあをのひとみ。
かなしきかな、貴方には一日でせうが、私には一生心にのこることです。
あゝ、どうかわすれられんことをねがう。
どれだけおせつかいでも、どうせ一夜の相手でも、
私は貴方様のことを好いております。
ご自愛下さい 吉原の街から
〔red, green, blue〕
あの強度、120%…いや、150%はあると思う。
彼はあの子が好きすぎる。
………いやいや、こんな能力持っててもどうせ無駄なんだよね…。
だって私が手を繋ぎたいと思ってる彼の、私に対するフィルターは普通よりちょっと下。
あーあ、ホント、使えない能力!
可愛いフィルターの強度が見られる能力、なんてさ。
〔フィルター〕