時雨

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9/7/2025, 7:07:29 AM

誰もいない教室
〜プロローグ〜
「ガラガラガラ」扉を開け夕焼けに染まった教室を見渡す。
このクラスとももうお別れか、、、


役割
「先生さようなら〜」
「おー、気をつけて帰るんだよ。」
俺の名前は新木 優希。春からこのクラスの担任になった
教師歴は6年程なのもあり生徒達からは優先生と呼ばれ、親しげに話しかけてくる子も増えてはきた。
だが、俺は正直子供が苦手だ。教えるのは昔から両親が教師なのもあり他の人よりかは優れているのが評価されたらしい。

教科はと言うと社会を教えている。
地理、産業、世界の歴史など1.2年の時とは内容が複雑になり覚える事も多くなる。
それ故に莫大な内容の中からピックアップをしながら生徒達の理解を促す工夫をする授業は神経が日に日にすり減らされていくのが現状だ。

だが辛いことばかりでは無い。例えば俺の授業でクラス全体のテストの平均点数が上がるのは年数を重ねていくほど嬉しいものだ。


記憶
光が窓から優しく包み込む教室。
黒板には卒業と書かれた文字に生徒達が楽しげに書いたそれぞれの想いを綴った文字や絵が繊細にでも色鮮やかに載っている。

今まで卒業自体は数回経験してきたが今年は違う。
俺自身、次のステップに進むために中学の教員免許を習得したのだ。
場所は、県外にある中学の教師をする事が、このクラスを受け持った後に決まった。
無論、生徒達からは応援の言葉はもらったが、内心この場所で多くを学んできた身からすると複雑な心境だ。

一人一人の机を触り物思いに老けていると
「おや、優先生?珍しいですね。」
声が聞こえる方に振り向くと
「小山校長、、、」
俺が新人の時によくお世話になったお爺ちゃん先生だ。
小山校長は俺の方にゆっくりと近づきながら話を続ける。
「いつもの君ならこの時間帯はとっくの昔に帰ってるはずだろう。」
俺はあはは、、とぎこちなく笑いながら話を続ける。
「卒業を何回も経験してきたからこそ今回のクラスには考え深いものがあります。
この6年間、私は教師という立場を上手くをできていたのでしょうか。」
すると校長は「君は悪い意味でも真面目だったからのぉ〜」「だが、それこそが生徒達の心を強く掴みここまで続けてこれたと言っても過言ではなかろうかい。」と微笑みながら俺の方を向いた。

俺は「確かにそうなのかも知れませんね。」と呟き誰もいない教室を後にした。



〜エピローグ〜
「やっべ、、遅れる」
時刻は約束の時間まで後30分を切っていた。
俺はベッドから飛び起き新品のスーツに袖を通す。
今日は教え子の結婚式だ。
あの学校を退職して20年が過ぎた頃に突然連絡があり今では飲みに行く中にまでになった。
偶然が重なったのか、神様のいたずらなのかはさておきバタバタと身支度を済ます。
タクシーに乗り式場に着くと開始時刻まで残り数分だった。「はぁ、、間に合った。」
俺は息を切らして席に着く。すると昔の教え子も何人かいるみたいで会話を楽しんでいる様子がみえた。

昔はやんちゃしてた子達もやはり大人になると見違える程逞しく、綺麗に成長しているのを目の当たりにし既に目頭が熱くなる。

「いかん、いかん、年を取ると涙腺が熱くなる。」
俺は心に言い聞かせる。

司会の人が「それではお待たせしました。新郎の入場です。拍手でお迎えください。」

その合図で奥の扉が開き、初々しいかった頃の面影はなく自信に満ち溢れた教え子の姿がみえる。

俺は手が赤くなるほどの拍手を送り、ハンカチをびちょ濡れになるまで泣いたのを式終わりの数日後に届いたビデオ内で見つけた。

fin








8/6/2025, 11:55:35 PM

またね

またねと声に出ずとも笑顔でこちらを向いて手を振るきみは誰よりも輝いていた。


日常
ほらーー、早くしなさい!遅れるわよ。今日は大事な日でしょ。そう呼びかける君の声を聞き目を覚ます。

洗面台に行き顔を洗う。歯を磨く。髪の寝癖を治す。
普段ならこれでいいだろうが今日は違う。
念入りに丁寧に自分の身なりを整え、クリーニングで洗いたてのスーツに身を包む。顔は平然を装っているが内心はザワザワして気が気では無い。

キッチンには君が忙しそうに朝食を作っているのを横目に食卓につく。普段は新聞を読むのが日課で好きな番組の時間をいつも確認しているのだが、今日は新聞の内容が頭に入らずめくる音だけが響く。
そうこうしている間に君が朝食を持ってきた。
「はーい、お待たせ。今日はなんだか気分が良くて張り切っちゃった。」
そういって出された朝食は食パン、スープ、サラダ、そして鮭である。 君もソワソワして落ち着かないのだろう。

そんな様子をみて私は口を開く。

「君も緊張しているのか?」
すると君は
「そうですね。 ふふっ。
だって今日はあの子の人生で一番輝く日ですもの。」


決意
ふぅーと息を吐き気持ちを落ち着かせ整える。
手を胸に当てると心臓の鼓動が聞こえる。
その瞬間が刻一刻と迫る。

今日までの道のり長かったな。
そう呟くと昨日の親父との晩酌を思い出す。

俺は正直親父が苦手だった。
幼い頃から無口な上に無愛想。更に何事も厳しく育てられたからかもしれない。

だがあの日だけは心が通じる瞬間が確かにあった。
それに、、、ボソッと呟いた親父の言葉。
「頑張れよ、、、」その一言が今の俺を認められた気がした。


成長
「只今より新郎の入場です。皆様盛大な拍手でお迎えください。」
扉が開き白いタキシードスーツに身を包み一回り大人の顔になった息子がそこにはいた。

堂々とバージンロードを歩くその姿にこれまでの思い出が蘇り一筋の涙が頬をつたう。


成長させられたのは私達の方かもしれない。



帰省
今度息子が帰ってくるのを妻から聞いた。
なんでも第3子が生まれるらしいからその報告にだそうだ。
「あの子ちゃんと上手くやってるかしらね〜」
妻はそんな事を言いつつ晩御飯を作りに台所に立つ。

私は「豪華も程々にだぞ。と心の中で伝えた。」
思わず口に出そうものなら俺の分は無しになるからな。

さて、今回はどのお酒にしようか。
あれから息子とはちょくちょくオンラインとやらの画面越しでお酒を交わすような仲にまでなった。
昔では想像できない。
まあ結婚を機に何かが吹っ切れたのかもしれんがな。

そうこうしていると玄関のチャイムがなり、幼い足音が4足聞こえてくる。

「おじぃーーーー。」
満面の笑顔でわしの胸に飛び込んでくる宝物だ。
「おぉ〜よく来たな!」


妻は今日も騒がしくなるわとわしの顔を見る。
わしも妻の顔を見てそれも悪くないなと笑う。

fin















6/11/2025, 7:56:57 AM

美しい

この表現は人工的に造られたものでも奇跡が重なり生み出された自然の賜物でも用いられる。

使い方としては多種多様ではあるが一貫して言えるのは目の前の出来事に安堵や感情を揺さぶれる事に間違いはないだろうか。

それが例え醜く歪んだものであっても1部の人間又は生き物であっても表現の仕方を制限することはあってはならない。

ある小説で美しいと醜いは紙一重という言葉を見つけた事がある。
とても興味深いので読んでは見たが最終的な結論は人の感受性の問題とか何とか書いてあり何とも知らぬが仏状態になったのでここに書き記してみる。


美しいと鬱くしいの表現を正しく使いまた1歩輝きを放てるような生き方をしていきたいものである。

5/23/2025, 10:48:41 PM

そっと包み込んで
ふぁー、私は大あくびをかまし布団の上にいる飼い主にふと目を向ける。

昨日の徹夜でぐっすりなようだ、、、

私は愛しい飼い主の顔の上に肉球を乗せ身体を丸める。

うっ、、

ん?飼い主の声が少し苦しそうだがそれもじきに慣れるだろう。

なんたって私は飼い主の笑顔が大好きだからこそ癒しをあげたいのだ。

いつもありがとうね。

飼い主は苦しそうだが私の頭を撫でてくれた。

私はそれに応えるように「にゃー」となき眠りにつく。

5/22/2025, 10:44:16 PM

昨日と違う私
題名にしては曖昧な表現の言葉だが想像力は膨らむ。
昨日とは違う、、具体的にはどう違うのだろうか。
昨日(過去)よりも成長している?
昨日よりも人格が変わっている?
それともそんなに深く考えずに見た目の話をしている?
真相は分からないが何か内面、外見が変化をしている事だけは分かる。
自分だけが分かる変化だとしても変わっている、成長している事には変わりない。



社会人、学生、老人、子供という立場は日々変化していくものである。
まるでその環境で上手く適応せざるを得ないカメレオンみたいに、、、
世間渡りが上手いといえば聞こえがいいが仮面を被り偽ってるとも捉えられる。

だからこそ素を出せる場所に近い環境を作る必要がある


環境に適応するのも一つの手だが今いる環境を居心地よくするのもストレス軽減の一手だと私は考える。


昨日よりも居心地が良く笑顔が増える場所を。
ストレスなく自分の意見を言え成長が見込める環境を。
見た目、内面の変化を褒める心の余裕を。

過去は変えられる。遅くは無い。
結果は直ぐに出ないが1歩ずつは確実に進んでいる。
焦らず自分を信じ歩んでいきたいものである。
過去の私よりも喜怒哀楽を大切にできる自分を。

雑談にはなるが昨日の私と今の私は変わったことがある

それはお腹の膨らみが少しばかりワガママになった事
くらいである。


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