”雫“
私は雨が好きだ
結構な1人は雨が嫌いな1人が多い
お母さんが言っていた
私の名前の由来
私が産まれる日
土砂降りの雨が降っていた
雷も鳴っていて
嵐のような天気だったそう
私が産まれたすぐに
空には虹がかかるほどお天気になったらしい
母が病室に戻り窓の外をみていると
紫陽花の葉に小さいカタツムリが
気持ち良さそうに
陽の光を浴びていたらしい
それはまるで額縁の中の絵のように
きれいな景色だったと
そしてそのカタツムリの上から
ひと粒の雫が落ちた
カタツムリは気持ち良さそうに
頭を天に向けたらしい
お母さんはそれを見て
この子にも誰かの乾いた心に
ひと粒の雫で幸せにしてあげられるような
いつでも笑顔で優しい人になってほしいと
“雫”と決めたそうだった。
だから私は雨が好きだ
雨が上がった後は
たくさんの雫で乾いた心に
幸せの雫をあげられるから
“何もいらない”
昔から毎回悩む事がある
それは誰かの誕生日のプレゼント
出来る限り喜んでもらいたい
そんな気持ちから
私はずいぶん前から考え始める
けれど結局ありふれた
プレゼントになってしまう
私はその誰かに聞いてみた
”誕生日何がほしい?“
するとその誰かが言った
“何もいらないよ”と笑顔で言った
”そうだよね~“と
私は聞いた事に後悔した
誕生日当日
私は普通のプレゼントを渡した
その誰かは笑顔で“ありがとう”
と受け取ってくれた
その誰かは私に言った
”来年は何もいらないよ。ただ、
これからもずっと隣で笑っていてほしい“
そしてその誰かは
私に最高のプレゼントをくれた
”もしも未来を見れるなら“
もしも未来を見れるなら
僕は誰の未来が見たいかな?
僕の未来?怖くて無理かも
やっぱり君の未来を
少しだけ覗き見してみたい
近い未来じゃなくて
ちょっと遠くの未来が良いな
今はまだ“結婚してほしい”とは
言えてないけど
もう少しだけ待っててね
急いで準備するからね
君を幸せにする為の準備
もしも未来を見れるなら
ちょっと覗き見させてね
君が笑顔でいられているか?
僕は君を幸せにしているか?
確認するから
そして
大切な君を守れる男になる為に
今のうちにちゃんと
起動修正するからね
”無色の世界“
私の友人でもある
バイオリニストの話をしよう
私の友人は生まれた時から
目が見えていない
だからお母さんの顔も知らない
もちろん日本の四季折々の景色も色も
彼は見たことがない
しかし彼の奏でる音色には色がある
その時々の情景がフアッと目の前に現れる
彼は色自体を知らない
全てが無色の世界
私は昔彼に聞いた事がある
“なぜ見た事が無いものを
こんなに綺麗に表現出来るのか”と。
すると彼は笑いながら私に言った。
”僕は何も見た事がないから、触った物の形しかわからない。だけど花を触ってみてそれが一面に咲いている事は想像出来る。だから僕はただそれを奏でているだけ。僕が奏でた曲に色を付けて素敵な曲に仕上げてくれてるのは君だよ“と。
それから私はずっと友人としても
人としても彼を尊敬している。
そして私は今日も彼の奏でるバイオリンに
綺麗な色をプラスしていく。
”桜散る“
春になると思い出す
ずっと昔の私の想い出
桜が満開だった高校の卒業式の日
私達は付き合い始めた
桜の花びらが桜吹雪となっていたあの日
私達は初めてキスをした
何回目かの春がすぎ
満開を過ぎた桜の木の下で
私達は別れを選んだ
そして桜散る道を
お互い別の道を歩いて行った
まるでそれは
私達それぞれにエールを贈るように
桜の花びらが春の風と共に
ひらひらと舞い続けた