風伯

Open App
8/25/2024, 10:10:05 AM




        
         「向かい合わせ」




      洗面所に向かうと,鏡面に「僕」が映る。





     「今日で夏休みは終わりか。」と溜息を吐く。

 



     「それなら代わろうか?」と頭で声が響く。





     馬鹿馬鹿しいと一笑に付す。





      君はここから出せと怒りを滲ませて言う。





     何を今更,君が現実社会が嫌だと言ったんでしょう?




     君の代わりに僕が楽しむよ。

8/25/2024, 12:32:07 AM

        


         「やるせない気持ち」




   「ねえ,相談に乗って欲しい事があるんだけど……。」



  綾香は少し頬を赤らめながら聞いてきた。



  なんとなく嫌な予感がした。



  「〇〇君と仲良いよね? 〇〇君って付き合っている人



  いるのかな?」



  それからの会話はほとんど覚えていない。



  気付くと,綾香は立ち去り,僕は一人で立ち尽くしていた。



  こんな時に心を癒す方法なんてない。


  
  ただただ苦しい時間を過ごすしかない。



  人生にはそんな瞬間がある。

8/23/2024, 3:53:20 PM



           「海へ」



        急な坂道を降っていくと,

 

      コンクリートに砂が混じってきた。



      炎天下,額から汗が滲んで頬を伝う。



      ナツメヤシ🌴の下で水を飲んで小休止する。



      意を決して,再び歩き出すと,



      建物の隙間から光り輝く海が見えた。



   浮き輪を持った子どもや,水着姿の男女とすれ違う。



      どこかともなく磯の香りが漂ってくる。



    不意に坂道が終わり,大きな道路に突き当たる。



     耳を澄ますと遠く潮騒の音が聞こえてくる。



    僕は喜びを噛み締めながら浜辺をゆっくり歩いて



        一気に海へ飛び込んだ。

8/23/2024, 9:36:37 AM

         


           「裏返し」



  小学生の頃,好きな女の子に素っ気無い態度を取っていた。



 好きな相手なら好意を示せば良いし,その方が相手にも好かれる可



 能性が高まる。



  それは子どもでも分かる事だが,「頭」では分かっていても,



 「心」は分からない。それが人間の性(さが)である。



 非合理的で,不条理で,時にひどく醜くさえある。


 
 しかし,それこそが生成AIには無い人間性そのものである。



 当時は羞恥心にかられて逃げ出したくなる裏腹な気持ちさえも,



 今は笑顔で受け止められるだけの心の余裕がある。

8/21/2024, 10:35:35 AM

       

          「鳥のように」



    小学校の卒業文集に「鳥」になりたいと書いた。


     子どもの頃はひどい閉塞感に苛まれていて,


       いつも窓の外ばかり見ていた。


     両親の将来の為だからという心温まる話も,

   
     学校の先生の教育愛に満ちたお説教も,


      学習塾の講師の魔法のテクニックも,


     友達の皆で盛り上がるバラエティー番組の話も,


        全部が好きじゃなかった。


     自分を取り巻く世界の全てを変えたかった。


      鳥だって好き勝手飛んでいる訳じゃない。


       だけど,その時はそう思っていた。

       
        

      

Next