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1/11/2026, 8:10:23 AM

「うぅー寒い…でも……」
冬至も過ぎ新年になったというのに更に寒くなっていくこの気温を恨みつつ、のそのそとコタツから這い出る。
…そう(と急に言われても分からないだろうが)、1生に1度しかない成人式──もとい二十歳の集いの準備をするためにだ。
「…そういえばあいつも来るのか。」
あいつ、とは保育園の頃からの幼馴染である佐原なつみのことである。ちなみに現在は違う大学に通っている。
「2年ぶりか…久しぶりだな」
なつみとの思い出は基本、なつみが俺にべたべた付きまとってそれを俺が適当にあしらうというものばかりだった。まぁ、それでもなんだかんだ幼馴染。面倒とは思いつつも勿論嫌いではないので、小中高3年間の修学旅行では毎回同じ班だったり(無理やり)ほぼ毎日共に登下校したり(無理やりその2)はしていたのだが。
「…って、そろそろ行かないと!?」
ちょっと回想に浸りすぎたか……じゃなくて!!!急がないと!!
────────────────────────
「よぉ〜翔、久しぶり〜」
「おぉっ!樹じゃ〜んおっひさー!」
「お前高校のときよりでかくなったか?」
「そうか?…でもたしかに目線の高低差が大きくなった気がするな笑」
「うっせぇよww」
昔からの友達、昔と変わらない会話。まるで過去に戻った気分になる。そんな風にまたもや思い出に浸っていた時間は
「あ!樹だぁぁー!!でけぇ!!!」
と、相変わらずの爆音で遮断された。
「久しぶりだな、なつみ」
「ね〜!てかまじで樹でかすぎない?前はこーんなだったのにね〜」
「そんな小さかったことねぇよ」
なつみはそういいつつ以前の如く抱きついてきた。着付けも髪の毛崩れるぞ。
「こうしてると懐かしいねぇ〜」
そういいながらなつみは、今までと同じように、でも今までよりも少しだけ大人びたような笑顔をこちらに向ける。
「…お前なんか前より可愛くなったか?前より…こう……?」
「きゃー!今までそんなこと言ってくれなかったのに!離れた期間のおかげかな?」
「うっせぇよ…」
でも、たしかに今までそういうことは一度も言ったことがなかった。思春期の恥ずかしさもあったが、幼馴染だったこともあってあまり意識をしていなかった気がする。そう思うとたしかに離れた期間がそうさせたのかもしれない。
「でもなんでだろ〜。うーん…」
「…あ!彼氏が出来たからかも!!」
…えっ?
「カ、カレシ…?」
「ふっはははww樹のそんな顔初めて見たww」
「だ、だって…」
そういえばなつみも、勿論のことながら俺も、高校生まで一回も恋人なんてできていなかった。
まぁ、当たり前だ。2人ともお互いとずっと一緒にいるのだ。付け入る隙もなかったのだろう。
だから、当然今も恋人なんていないと思っていた。なんなら今日あっちから抱きついてきたし。
「あ、あいちゃんだ〜!樹またねぇ〜!!」
「あっちょっ……」
…なんなのだろうか、この喪失感は。なつみのことを恋愛対象だなんて思っていなかったはずだ。というか別に今も思ってはいない。
「娘を取られた、みたいな感情になってるのか…?」
いや、だとしたらとんだ厄介人間だ。ただの幼馴染だってのにこんな感情を抱くなんて迷惑すぎるだろ。じゃあ何故……
「自分がなつみちゃんの中の1番じゃ無くなったからじゃないか?」
「…え?てか翔どこいってたんだよ。」
「お前がなつみちゃんと話してたから二人で話せるようにどっか行ってたの!こんなこと言わせんなよ!!」
「別にそんなことしなくていいのに…じゃなくて。なんて言った?」
「んぁ?だから、自分がなつみちゃんの中の1番じゃ無くなったからじゃない?って」
「1番……」
そう言われると腑に落ちた。確かになつみ、他の友達よりも俺の方が一緒にいる時間長かったし…。
「まっ、子供くせぇ嫉妬みたいなもんだろ!」
「えぇ…なんかそんな風にまとめられると、俺、すごくめんどくさいやつじゃない?」
「ん〜、まっ!そんなこともあるだろ!気にせず次行こうぜ!!」
「…それもそうだな。」
執着していたのは、なつみより俺の方だったのかもしれない。

➹20歳

11/15/2025, 3:29:31 AM

「───約束だよっ!」
「うん!!」


あれから何年がたっただろうか。
何回も何回も心の中で反芻していたあの“約束“は、だんだんと時間も余裕も減っていく日々の中でとっくに忘れてしまった。
きっと今になっては些細すぎて笑えてしまうような、そんな小さな約束なんだろうけど…それでもあの子との大切な思い出の1つだった。
「これが、大人になるってことなのかな…」
だとしたら、大人になんてなりたくなかったな。

➹ささやかな約束

9/19/2025, 11:34:35 AM

秋は嫌いだ。
だってアイツが好きな季節だったから。
だってアイツの好きな色が橙色だったから。
だってアイツの好きな植物がモミジだったから。
だってアイツが、俺の前からいなくなった季節だから。
「あの、バカぁ…ッ」

秋色の目をしたアイツは、もう戻ってこない。

9/17/2025, 9:10:40 AM

この気持ちの答えは何なのだろうか。
数文字に収まるわけもない、とっても複雑で、それでいて単純明快な気もするこの気持ちの正解は…。
好きも嫌いも酸いも甘いも苦いもまるっと混ざったような、この気持ちの解答は……。
「大人になったら、分かるのかな…。」

9/16/2025, 4:31:28 AM

センチメンタル・ジャーニー:感傷旅行のこと。特に、失恋の傷を癒すための旅のことを指す。

「センチメンタル・ジャーニー」という言葉があることは知らなかったが、今回の旅行とも言えないこの小さな旅はまさにそう言えるものなのかもしれない───
「あぁ…思い出すとッ、ダメだな…ハハッ」
自然を見ると落ち着くかもしれないと思い、少し遠出をして人気の少ない山に登ったが、失恋の傷は寧ろ広がるばかりだった。
キラキラと日を反射する海、だんだんと紅葉してきた山々、山々の間を通り抜ける涼やかな風。
壮大な自然の美しさに少し小さくなった傷は、“アイツ“と一緒に来たかったという思いで今まで以上に広がってゆく。普段なら心地のよい爽やかな風も、今では俺の傷を突き刺す冷たい針のように感じる。
「アイツさぁ?あんなに気持ち悪がらなくてもいいじゃんか〜ついさっきまで、友達だったってのに……」
現実逃避を甚だしいが、こうでもしないとやっていられない。
「…あーぁ、あの時は、楽しかったな…グスッ」
目からポロリと涙が零れる
「はっ…人は見当たらないとはいえ、外で泣くとかッ…子供かよ笑…」
「グスッ、マジでッ…どうやったら止まるんだよこれぇ……ひくっ…うぅぅ〜…」
手すりにかけていた手を離しその場に蹲る。泣いている姿を見られたくない彼のその場でできるせめてもの抵抗だった。…一般男性並みの身長とはいえ、傍から見たら余計に子供らしくなっていたが。
「…グスッ」
「あの…」
「ひぅっ!?」
人がいないと油断していた中での他人の声に、彼は驚き痕は消えないと分かりつつ急いで涙を拭う。
「な、なんでしょうか?」
「あ、その…何があったんですか…?登っている途中で泣いてる声が聞こえたので急いで来たらあなたが蹲ってたので…大丈夫かな、と…。」
「あぁすみません、大丈夫です…グスッ」
「…あの!もし良ければ〜なんですが、ハグ…とかします?」
「…はい?」
およそつい数分…いや、数十秒前に出逢った人に言うことじゃないその言葉に俺はフリーズした。
「あ、そのハグって言うか〜いやまぁハグではあるんですが…。ハグをすると幸福度が上がる…とか安心する〜という話を聞いたことがあって!」
「あぁ、その話は聞いたことがあります…けど…。」
たしかにその話は聞いたことはある…が、そんなついさっき出逢った人としても効果はあるのだろうか…。
「ど、どうですかね…?」
「えっと、じゃあ…お願いします…。」
押しに負けてしまった…。
返事をしてしまったものは仕方がないので、そっと抱擁をするために近づく。正直少々どころではないくらい照れくさいが、まぁ…顔が見えないだけマシだと思っておこう。
抱擁をかわすと、先程までの多弁が嘘のように何も言わずに俺を強く抱きしめてくれた。
「ひっく…グスッ…あれっなんで…っ、さっきまで止まってたのに…グスッ」
「…辛かったんだね、でも、“僕“がいるから大丈夫だよ」
そう言う“彼“の優しさと温もりは、俺に新たな恋をもたらすのに十分すぎる程だった。

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