君と下校するたび、あと何度一緒に隣を歩けるんだろうと思ってしまう時がある。必ず学生生活には終わりが来るものだし、いつかは君と離れる期間もあるんだろう。そんなことは重々承知だが、今寂しいと思っている原因は、私以外の誰かの隣を歩く君が、すごく嫌だということなんだ。
離れてしまう期間…というのは、卒業するとき、もしくは、私が唐突に人生をドロップアウトしたときのみに限られる。君が私に幻滅しても、私が君に幻滅したとしても、どちらかが歩み寄るだろう。それなりの信頼と友情は、互いにあるのだ。それが友情か愛情かの違いだけで、互いに大切であるということは変わらない。はず、、である。
私たちがもし離れたとしても、君とのこの甘酸っぱい、いや、甘すぎる帰り道を忘れないだろう。そしてこの学生生活を、君と過ごした街をも、美しい思い出と包まれるんだろう。
“街”
今日は安定薬を飲むのを忘れて、情緒不安定なまま部活に向かった。部活の準備をしていると、私の座っている横に君がきて、「これはわたしの仕事!」と道具を奪ってきた。ちょうど体が痛くなってきたので助かる。わたしはその隣で土下座をして、弱音を吐く。なぜ土下座なのかというと、存在が縮まった気がして安心するからだ。君の横で「テストの点数に満足いかない、もっと勉強したらよかった、後輩ともどうやって対応したら良いの…?、どう頑張ったら最適解なの、」と不安を呟く。そんなわたしに君は、「そうだね〜、あなたなりに頑張ったと思うよ」と、うずくまっている私の頭を撫でてくれた。それは、5秒間とか、なでなで、とかじゃなくて、さっと私の頭に手を置いてくれただけなのだけれど、それがすごく嬉しくて、どきどきというより、安心できた。どこか居心地が良くて、すきだなと思った。
これを思い出した22時のわたしが一番やりたいことは、今すぐ君に会いたいということ。一番やりたくないことは、君に触れてもらえたこの頭を洗わなくてはならないということ。どちらもいずれ訪れるけれど、、今の私には大きすぎる試練だ。
“やりたいこと”
最近、1日が終わるのが、ものすごく早い。こう思う度に、君との日々も過ぎ去ってしまうんじゃないかと、すごく不安になる。君に不安を抱いてるとか、信用しきれていないとかそういうことではないんだけどね。
こうやって夜に気持ちを整理して、うとうとして、また明日、君に会えるのを楽しみにしてる。1日が早く終わるのは、君がそばにいてくれて、充実しているからかもしれない。また明日、電車が同じ時間で、おはようと声をかけられたりしないかな、、そんな期待に胸を馳せている。私は、君と朝日の温もりの、あのぽかぽかの中を、2人でゆっくりと歩いた日を思い出した。なんだか、いまの私もぽかぽかしてきた。また明日の君に期待を抱いて、眠りにつき、また今日を終える。
“朝日の温もり”
六月。衣替えが始まって、長袖が綻んでゆく時期
君と昼食を共にしている時に聞かれた、「夏になるのに、制服半袖にしないの?」という問いに、なぜかパッと出てきたのは「長袖だって、折れば短くなって涼しいからね。」そんなことは微塵も思っていない。私だって半袖を着て君の隣を歩きたい。けれど、本当のことが口から出なかった。君とはこんなにも壮大な信頼関係が築かれていて、1番の友人だというのに。その時気付いてしまった。私は普通とは違うと理解して生きてきたはずなのに、今更本当のことを伝えて避けられたらどうしようかと、普通でないと知られたらどうしようかと、最後まで自分勝手で惨めな人間であると。
だって、どうしよう?。もし腕の傷跡を見られて、幻滅されて、こんなことをする人だと思っていなかったと思われたら?そもそも、信頼関係は築かれていると想っていたのが私だけだったとしたら。こんなにも愛してやまない君に嘘をついてしまった事と、過去の私への後悔、怒りが募り、その日は涙に溺れてしまった
翌日、落ち着いて考えてみた。どんなに好きであっても、全てを伝えなくたって良いのかも…しれない。少なくとも私の傷跡は、共に過ごして行く中でいつかは知ってしまうことだし、綺麗さっぱり消えるような跡ではない。それも含めて私だと、君だけの私だと知ってほしい。いつか、君がまだ知らない私の心ごと、抱き寄せてほしい
”誰にも言えない秘密”
梅雨
紫陽花が微笑んで、雨に濡れる情景が浮かぶ
それは確かに、明るい未来に包まれてる紫陽花
いつかの君と相合傘をしたのもこんな季節だった
肩が濡れてたって、君となら良いんだよ
わたしたちだけの、2人だけのその季節は、もうどこに消えたかわからないけれど
好きだっていう気持ちはすぐそこにあるんだ
また雨が降って、2人傘をさして、君だけの世界に浸りたい 雨が上がって、虹が橋をかけて。
2人で指をさして微笑みたいね