六月。衣替えが始まって、長袖が綻んでゆく時期
君と昼食を共にしている時に聞かれた、「夏になるのに、制服半袖にしないの?」という問いに、なぜかパッと出てきたのは「長袖だって、折れば短くなって涼しいからね。」そんなことは微塵も思っていない。私だって半袖を着て君の隣を歩きたい。けれど、本当のことが口から出なかった。君とはこんなにも壮大な信頼関係が築かれていて、1番の友人だというのに。その時気付いてしまった。私は普通とは違うと理解して生きてきたはずなのに、今更本当のことを伝えて避けられたらどうしようかと、普通でないと知られたらどうしようかと、最後まで自分勝手で惨めな人間であると。
だって、どうしよう?。もし腕の傷跡を見られて、幻滅されて、こんなことをする人だと思っていなかったと思われたら?そもそも、信頼関係は築かれていると想っていたのが私だけだったとしたら。こんなにも愛してやまない君に嘘をついてしまった事と、過去の私への後悔、怒りが募り、その日は涙に溺れてしまった
翌日、落ち着いて考えてみた。どんなに好きであっても、全てを伝えなくたって良いのかも…しれない。少なくとも私の傷跡は、共に過ごして行く中でいつかは知ってしまうことだし、綺麗さっぱり消えるような跡ではない。それも含めて私だと、君だけの私だと知ってほしい。いつか、君がまだ知らない私の心ごと、抱き寄せてほしい
”誰にも言えない秘密”
6/5/2024, 10:38:49 AM