自鳴琴

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9/9/2025, 3:38:23 PM

いつもと変わらぬ帰り道
茜色に染まる空に 薄ら白い月がよく映える
足を進める度に 止む気配もなく共鳴するヒグラシ

何気なく足元の小石を蹴ってみた
その先に細長くも丸い影がひとつ
顔を上げると、真っ黒な毛に包まれた二つの瞳

きらきらと輝く輪郭に 一瞬呼吸が止まる
夕陽の光に照らされた姿は
羨ましいほどに無垢な生き物に見えた

優雅に立ち去るそれを見届けた後、
やっぱり来世は猫になりたいと強く願ったのだ


『フィルター』

9/6/2025, 3:00:33 PM

放課後、静まり返った教室から外を眺めると
普段と変わらない貴方の笑顔が目に留まる。

私の中に小さな光が宿ったような
はたまた一日の疲労感が一気に吹き飛ぶような感覚。

貴方以外では作用しない、
窓際に一人佇む私だけの特権である感覚。

その顔がこちらに気づいて振り向いた時、
私の心臓は爆発しそうな程の早鐘を打っていた。



『誰もいない教室』

8/25/2025, 7:02:47 AM

電車に揺られていると、どうしようもなく
名も知らない街へ行きたい衝動に駆られる。

果てしなく終わりの見えない日々の中では
誰しもが心のどこかで自分に嫌気が差している。

毎日必死に探していても、そう簡単に
自らの思い描いた情景は見つけられない。

寂しさを埋めてくれるその場所に辿り着くまで、
私は走り続けていられるだろうか。


『見知らぬ街』

8/7/2025, 1:31:44 PM

人の心はいつだって方向感覚が狂う。

生きていれば、迷いが生まれるのは当然だ。

歩いていれば、誰だって道を踏み外すことはある。

けれど、どうしてもそれを恥じる人もいる。

人の一生を生きるのはどうにも難しい。


『心の羅針盤』

8/6/2025, 11:04:11 PM

帰り際、貴方に手を振ることは
また貴方に会いたいと思っているから。

帰り際、貴方に笑顔を向けることは
また貴方と話したいと願っているから。

帰り際、貴方が見えなくなるまで見送るのは
いつだって貴方の無事を祈っているから。

二人の夜が明けて、再び朝日が昇る日まで


またね

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