自鳴琴

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昼休み。
日照り雨が続いている為少し蒸し暑い。
図書室へ入り窓際の特等席に触れると、掌に暖かな感触が残る。外から微かに聞こえる葉音に耳を澄ませる。

一人静かに本を読み進めていると、少しずつ胸の奥の蟠りが消えていくような感覚に包まれる。
いつになっても、人生の分岐点に立って物事を考えるという事は慣れないものであって、今日も私は逃げるようにして静閑なこの空間へと足を踏み入れた。

自分を一人の人間として扱うには何が正解なのか。

自らを大事にするという事は、自らの意見を尊重する事と同等の行為である。けれども軟弱すぎるが故に、それすらも恐れ目の前の出来事を投げ出す事が、今では私のお決まりとなっている。

そうしているうちに、今日も昼休みは過ぎていく。
答えは未だ決まらないまま、私は図書室を後にした。

夏もそろそろ終わるだろう。



『答えは、まだ』

9/17/2025, 7:58:49 AM