自鳴琴

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いつもと変わらぬ帰り道
茜色に染まる空に 薄ら白い月がよく映える
足を進める度に 止む気配もなく共鳴するヒグラシ

何気なく足元の小石を蹴ってみた
その先に細長くも丸い影がひとつ
顔を上げると、真っ黒な毛に包まれた二つの瞳

きらきらと輝く輪郭に 一瞬呼吸が止まる
夕陽の光に照らされた姿は
羨ましいほどに無垢な生き物に見えた

優雅に立ち去るそれを見届けた後、
やっぱり来世は猫になりたいと強く願ったのだ


『フィルター』

9/9/2025, 3:38:23 PM