今日は久し振りのデート。
つい先日、入社式を終えた私たち。
大学を卒業する直前まで、何かと予定が入っていて会えていなかった。
社会人になってから初めてのデートだ。
学生時代は実家に住んでいた私。
心配性な母がいた為、夜遅くまで遊びに行くことは御法度だったから、夜にデートなんてしたことがなかった。
就職を機に、私たちは県外に出た為、それぞれ一人暮らしを始めた。
私は早めに仕事が終わったから、一度帰って準備をする。
彼は少し遅くなるみたい。
待ち合わせの場所。
初めてくる所だから、ここでいいのかなと心配になる。
私も母に似て、心配性なのかな。
少し待っていると、彼から連絡が来た。
「ごめん!すぐ向かうね。」
「分かった、待ってるよ!」
まだ少し肌寒い星空の下で、彼が来るのを待っている。
「星空の下で」
私の親友は、自分のことが嫌いらしい。
顔も特別可愛いわけじゃなくて、どちらかというとブスで、これといった特技や趣味もなくて、特徴がない、と本人は言っている。
よく、「私って生きてる意味あるのかな」と話している。
生きてる意味はあるよ。
私にとって、貴女は唯一の親友だから。
かくいう私も、顔は可愛くないし、人に自慢できるようなことは何もない。
だから、貴女は貴女のままでいいんだよ。
私が悩んでる時に、そっと寄り添ってくれたのは貴女だったよ。
嬉しい時に一緒に喜んでくれたのは貴女だったよ。
悲しい時に一緒に泣いてくれたのは貴女だったよ。
これからも隣で一緒に笑ったり泣いたりしたい。
それだけで、十分なんだよ。
貴女は、貴女のままでいい。
それでいいんだよ。
「それでいい」
私は彼に片想いしてる。
もう6年くらいになるかな…
彼は気付いていないようだけど。
彼と同じ高校に行きたくて受験も頑張った。
部活も彼を見たくて、マネージャーになった。
偶然、クラスも同じ。
席は少し離れてるけど、彼を眺められる席。
今日も彼は部活。
私も部活へ行く。
彼が頑張ってる姿を眺められる。
彼は部活が終わると、一人で帰ってしまう。
友達がいないわけではないようだが、方向が違うらしい。
私も方向は違うけど、途中までは同じだ。
今日こそは一緒に帰りたい…
私は勇気を振り絞って、彼に声をかけてみた。
すんなりとOKしてくれた。
嬉しさと緊張で何を話せば良いのか分からなかったが、学校のことや部活のことを話した気がする。
それからは、彼と途中まで帰るようになった。
彼のことを知って、ますます好きになった。
ああ神様…
1つだけ願いが叶うなら…
彼に告白する勇気を、私にください…
「1つだけ」
「今日の宿題は作文です!皆さんの大切なものについて作文を書いてみましょう」
放課後、担任の先生がそう告げ全員に2枚ずつ作文用紙を配っている。
「大切なものってなんだろうね」
私と友人は下校しながらそんな話をしていた。
友人も悩んでいる。
幸い、今日は週末なので考える時間は多めにある。
これは週末丸潰れだな…なんて考えながら友人と溜息をつきながら歩いている。
「大切なものって一言で片付けても、色々あるよねぇ…趣味とか、人とか、ものとかさぁー」
「そうだねー。色々あるもんね。でもね、私決めた。私は、、、やっぱり秘密。」
友人の大切なものは秘密にされてしまった。
友人にとって大切なものってなんだろう?人の心配なんかしてる場合じゃないのに。
家に着き、お母さんにも相談してみるが、あんたが一番だと思うものを書いてみなよ!と言われるだけだった。
せっかくの週末を台無しにしたくない私は、さっさと書き終えるため夜更かししながら考えていた。
ゆっくり考える週末も終わり、いざ発表の時が来た。
みんなそれぞれ大切にしていることやものについて話している。
野球やサッカー、本や家族、ゲームの話をしている人もいる。
次は私の番。
「私にとって大切なものは、家族と友人です」
ありきたりかも知れないけど、いつも当たり前にそばにいてくれる家族や友人は私にとっては大切で、かけがえのない存在なのである。
偶然なのか、毎日一緒に登下校している友人も私のことについて作文を書いてくれたようだ。
大切なものは人それぞれ違くて、目に見えないものもあるのだなと知った中学2年生の頃の話。
「大切なもの」
「おばあちゃんなんか、死んじゃえー!」
おばあちゃんは、少し悲しそうな顔をしていたが、すぐにいつもの笑顔に戻り、
「エイプリルフールかい?人が傷つくような冗談はおばあちゃんにだけ言いなさいね。他の人には言っちゃダメだよ」
小学4年先だった当時の私は、冗談で言ったことに対して叱られた気がして、ムスッとした。
本当に、冗談のつもりだった。
その日の午後、おばあちゃんは事故に遭い、そのまま亡くなった。
私はおばあちゃんが大好きだ。
後悔しても、何度後悔しても、後悔しきれない。
ちゃんと謝れなかった。仲直りしてない。
10周忌の日、私はおばあちゃんの仏壇にボソリと呟いた。
「おばあちゃん、ごめんなさい。大好きだよ。戻ってきてよ…仲直りしたいよ」
今は午後14時30分。嘘をついていいのは、午前中だけ。
私の気持ちをおばあちゃんに伝えたい一心だった。
仏壇の前で泣いていると、一枚の紙が落ちていた。
開くとそこには、
「私の大好きな孫へ、おばあちゃんも大好きだよ。
おばあちゃんは怒ってないよ」
どうしてこんな紙が落ちていたのかは分からない。
10年前の私がおばあちゃんに言ってはいけないことを言ってしまったことは誰も知らないし、話してもいないから、誰も知り得ないこと。
そして、この特徴的な字は明らかにおばあちゃんの字だった。
私は、この紙を抱きしめながら泣いた。
10年越しに、おばあちゃんと仲直りできた気がしたから。
それから20年が過ぎたが、今でも忘れられないエイプリルフールのエピソードだ。
あの時のおばあちゃんからの手紙は、大事にとってある。
「エイプリルフール」