「おばあちゃんなんか、死んじゃえー!」
おばあちゃんは、少し悲しそうな顔をしていたが、すぐにいつもの笑顔に戻り、
「エイプリルフールかい?人が傷つくような冗談はおばあちゃんにだけ言いなさいね。他の人には言っちゃダメだよ」
小学4年先だった当時の私は、冗談で言ったことに対して叱られた気がして、ムスッとした。
本当に、冗談のつもりだった。
その日の午後、おばあちゃんは事故に遭い、そのまま亡くなった。
私はおばあちゃんが大好きだ。
後悔しても、何度後悔しても、後悔しきれない。
ちゃんと謝れなかった。仲直りしてない。
10周忌の日、私はおばあちゃんの仏壇にボソリと呟いた。
「おばあちゃん、ごめんなさい。大好きだよ。戻ってきてよ…仲直りしたいよ」
今は午後14時30分。嘘をついていいのは、午前中だけ。
私の気持ちをおばあちゃんに伝えたい一心だった。
仏壇の前で泣いていると、一枚の紙が落ちていた。
開くとそこには、
「私の大好きな孫へ、おばあちゃんも大好きだよ。
おばあちゃんは怒ってないよ」
どうしてこんな紙が落ちていたのかは分からない。
10年前の私がおばあちゃんに言ってはいけないことを言ってしまったことは誰も知らないし、話してもいないから、誰も知り得ないこと。
そして、この特徴的な字は明らかにおばあちゃんの字だった。
私は、この紙を抱きしめながら泣いた。
10年越しに、おばあちゃんと仲直りできた気がしたから。
それから20年が過ぎたが、今でも忘れられないエイプリルフールのエピソードだ。
あの時のおばあちゃんからの手紙は、大事にとってある。
「エイプリルフール」
4/1/2024, 1:14:23 PM