なんで私を置いていくの。
もう何年も連れ添ってきたのに。
実家を出る時だって、無理して選んだ家。
全部君のためだった。
でも、仕方ないのかな。
もう17歳になった愛猫の君。
まだ一緒にいたかった。
どこにも行かないで、これからもそばにいてよ…
「どこにも行かないで」
難関と言われる高校に合格した。
ずっと野球に打ち込んできた僕の成績は平均的で、合格は厳しいと言われた。
三者面談では、両親と先生の両方に現実を見ろと言われた。
でも、僕はめげずに勉強を続け、合格した。
野球部のマネージャーを務める先輩の背中を追って。
彼女が卒業する時、僕は告白した。
君は
「私と同じ高校に入学できたら、いいよ」
と微笑んだ。
彼女は僕の成績を知ってて、そう言った。
きっと付き合う気はなかったからそう言ったのかも知れない。
「先輩。僕、合格しましたよ」
彼女は目を丸くして僕を見ている。
でもすぐに微笑んで
「1年間、信じて待ってたよ」
同じ高校に来るよう伝えたのも、離れ離れになるのが寂しかったから…と後でこっそり教えてくれた。
今では、野球部内で公認のカップルとなっている。
君の背中を追って、頑張って良かった。
「君の背中を追って」
今日は久し振りの外出。
在宅ワークで、食材の買い物もネットスーパーで済ませてるから、外出する機会なんてほとんどない。
そんな私がどうして久し振りに外出するのかって?
さて、どうしてでしょうね?
久し振りの外の空気は気持ちがいい。
駅まで徒歩10分。
近いような遠いような。
電車に揺られて30分。
だいぶ都会に来た気がする。
ここから歩いて3分。
待ち合わせの場所へ着いた。
彼は、来るのがいつも早い。
にこやかに手を振っている彼の顔を見るのはいつぶりだろう。
もう半年は会ってなかったと思う。遠距離恋愛だしね。
久し振りの彼に会うため、私は精一杯オシャレしてきた。
この季節によく合う色のワンピースに、今日は帽子も被ってみたりして。
「今日も可愛いね。ワンピースと帽子の相性もいいね。よく似合ってるよ。」
彼はいつも褒めてくれるから、自信が持てる。
今日は楽しい1日にするぞー!
「帽子かぶって」
「あらまぁ、こんなに熱あるなら学校はお休みだねぇ。」
私の体温を測った体温計を眺めながら、母がそう呟き、部屋を出て行った。
ずっと風邪なんて引いてなかったのに…
こんなに辛かったっけ…
そんなことを思いながら、自室のベッドで横になっていた。
横になっているうちに、眠ってしまっていたらしい。
時刻は、11時30分。
コン、コン
部屋をノックされた。
「はーい」
返事をすると、母が入ってきた。
「食欲はある?少しでも良いから、何か食べなさいね。これ、置いていくから」
そう言い残し、お粥やプリンを置いていってくれた。
久し振りに食べる母のお粥。
こっちのプリンは手作りみたい。
そういえばこのプリン、私がまだ幼かった頃、風邪を引いた時よく作ってくれてたっけ。
懐かしい…
ふとスマホを見ると、何件かラインが来ている。
「早く良くなってね!」
「寂しいぞ〜!待ってるからね〜!」
親友たちからの連絡だった。
私は周りから愛されてるんだ…。
体は辛いけど、心は温かくなった。
早く風邪治して、お母さんにプリンの作り方聞いて、親友たちにプリン作ってみようかな。
「風邪」
今年の積雪は遅い。
もう12月も中旬なのに、少し降っては溶けてを繰り返している。
私は雪が積もるのは憂鬱だが、愛犬のハスキー、イオが雪を待ち侘びている。
いつもの散歩時間はおよそ1時間程度。
雪が積もると2時間。それ以上の日もある。
イオは外が寒くなってくると、ソワソワし始める。
「イオ、雪はまだだよ(笑)」
私がそう声をかけると、少し寂しそうにクゥーンと鳴く。
イオと家族になるまで雪が憂鬱だった私だが、イオと過ごすようになってから私も雪を待つようになった。
また雪が積もったらいっぱい遊ぼうね、イオ。
「雪を待つ」