「あらまぁ、こんなに熱あるなら学校はお休みだねぇ。」
私の体温を測った体温計を眺めながら、母がそう呟き、部屋を出て行った。
ずっと風邪なんて引いてなかったのに…
こんなに辛かったっけ…
そんなことを思いながら、自室のベッドで横になっていた。
横になっているうちに、眠ってしまっていたらしい。
時刻は、11時30分。
コン、コン
部屋をノックされた。
「はーい」
返事をすると、母が入ってきた。
「食欲はある?少しでも良いから、何か食べなさいね。これ、置いていくから」
そう言い残し、お粥やプリンを置いていってくれた。
久し振りに食べる母のお粥。
こっちのプリンは手作りみたい。
そういえばこのプリン、私がまだ幼かった頃、風邪を引いた時よく作ってくれてたっけ。
懐かしい…
ふとスマホを見ると、何件かラインが来ている。
「早く良くなってね!」
「寂しいぞ〜!待ってるからね〜!」
親友たちからの連絡だった。
私は周りから愛されてるんだ…。
体は辛いけど、心は温かくなった。
早く風邪治して、お母さんにプリンの作り方聞いて、親友たちにプリン作ってみようかな。
「風邪」
今年の積雪は遅い。
もう12月も中旬なのに、少し降っては溶けてを繰り返している。
私は雪が積もるのは憂鬱だが、愛犬のハスキー、イオが雪を待ち侘びている。
いつもの散歩時間はおよそ1時間程度。
雪が積もると2時間。それ以上の日もある。
イオは外が寒くなってくると、ソワソワし始める。
「イオ、雪はまだだよ(笑)」
私がそう声をかけると、少し寂しそうにクゥーンと鳴く。
イオと家族になるまで雪が憂鬱だった私だが、イオと過ごすようになってから私も雪を待つようになった。
また雪が積もったらいっぱい遊ぼうね、イオ。
「雪を待つ」
私は鳥籠の中の鳥。
ペットショップで飼われ、この家にやってきた。
お父さん、お母さん、女の子の3人家族。
お父さんはあんまり家にいないけど、女の子は私をよく可愛がってくれた。
ご飯で困ることもないし、時々鳥籠から出してくれる。
この家は広いから、飛びがいがある!
でも、外を飛んでる鳥を見ると、私も大空の下を飛んでみたいなって思ってしまうんだ。
「夢見る心」
「今年もやっと咲いたねー!」
満開の桜を見て、隣で喜ぶ彼女。
こうして二人で花見に来るのは、7回目。
僕らはちょうど7年前の3月末、僕からの一言がきっかけで付き合うようになった。
僕は彼女のことが好きで、それは今も変わらない。
だから、付き合えた時はとても嬉しかった。
毎年、記念日には思い出の場所に来て花見を楽しんでいる。
だが今年は開花が遅れ、4月になってから咲き始めた。
咲くまで行くよ!という彼女に連れられ、毎週ここに足を運んでいた。
3月中に咲くことはなくて、4月になってからもここに来てるってわけですよ。
僕はまだ心の準備ができてなくて誘えなかったが、彼女が誘ってくれたから勇気が出た。
「今年も一緒に見られて良かったよ、いつもありがとう。今日は、プレゼントしたいものがあってね…」
「あら、奇遇だね!私もプレゼントがあるの!」
僕が彼女に渡したプレゼントは、婚約指輪。
彼女が僕にくれたプレゼントは、かけがけのない新しい命だった。
風で桜の花びらが宙を舞う。
やっぱり、春って最高…
僕は今、桜の花びらに包まれながら、幸せを噛み締めている。
「春爛漫」
僕は人よりも劣っている。
勉強も苦手で、運動もできない。
だから、学校ではよくからかわれる。
最初こそ満更でも無かったが、最近は度が過ぎており、いじめられてるように感じるようになった。
そんな僕でも、大事にしてるものがある。
何年も前から集めてきた大事なコレクション。
僕は、機械をいじるのが好きで、休みの日は度々リサイクルショップへ行っては、所謂ガラクタを集めている。
このガラクタの山は、僕にとっては宝物で、大事なコレクションなのだ。
そのガラクタでPCを作ったり、家のテレビやゲームを治したりしている。
学校では冴えない僕だが、家では誰よりもずっと頼りにされている。
何か壊れたら僕を頼ってくれる家族がいる。
今は暗くても、未来は明るい。
僕はこれからも、ガラクタ集めを続けようと思う。
「誰よりも、ずっと」