私は彼に片想いしてる。
もう6年くらいになるかな…
彼は気付いていないようだけど。
彼と同じ高校に行きたくて受験も頑張った。
部活も彼を見たくて、マネージャーになった。
偶然、クラスも同じ。
席は少し離れてるけど、彼を眺められる席。
今日も彼は部活。
私も部活へ行く。
彼が頑張ってる姿を眺められる。
彼は部活が終わると、一人で帰ってしまう。
友達がいないわけではないようだが、方向が違うらしい。
私も方向は違うけど、途中までは同じだ。
今日こそは一緒に帰りたい…
私は勇気を振り絞って、彼に声をかけてみた。
すんなりとOKしてくれた。
嬉しさと緊張で何を話せば良いのか分からなかったが、学校のことや部活のことを話した気がする。
それからは、彼と途中まで帰るようになった。
彼のことを知って、ますます好きになった。
ああ神様…
1つだけ願いが叶うなら…
彼に告白する勇気を、私にください…
「1つだけ」
「今日の宿題は作文です!皆さんの大切なものについて作文を書いてみましょう」
放課後、担任の先生がそう告げ全員に2枚ずつ作文用紙を配っている。
「大切なものってなんだろうね」
私と友人は下校しながらそんな話をしていた。
友人も悩んでいる。
幸い、今日は週末なので考える時間は多めにある。
これは週末丸潰れだな…なんて考えながら友人と溜息をつきながら歩いている。
「大切なものって一言で片付けても、色々あるよねぇ…趣味とか、人とか、ものとかさぁー」
「そうだねー。色々あるもんね。でもね、私決めた。私は、、、やっぱり秘密。」
友人の大切なものは秘密にされてしまった。
友人にとって大切なものってなんだろう?人の心配なんかしてる場合じゃないのに。
家に着き、お母さんにも相談してみるが、あんたが一番だと思うものを書いてみなよ!と言われるだけだった。
せっかくの週末を台無しにしたくない私は、さっさと書き終えるため夜更かししながら考えていた。
ゆっくり考える週末も終わり、いざ発表の時が来た。
みんなそれぞれ大切にしていることやものについて話している。
野球やサッカー、本や家族、ゲームの話をしている人もいる。
次は私の番。
「私にとって大切なものは、家族と友人です」
ありきたりかも知れないけど、いつも当たり前にそばにいてくれる家族や友人は私にとっては大切で、かけがえのない存在なのである。
偶然なのか、毎日一緒に登下校している友人も私のことについて作文を書いてくれたようだ。
大切なものは人それぞれ違くて、目に見えないものもあるのだなと知った中学2年生の頃の話。
「大切なもの」
「おばあちゃんなんか、死んじゃえー!」
おばあちゃんは、少し悲しそうな顔をしていたが、すぐにいつもの笑顔に戻り、
「エイプリルフールかい?人が傷つくような冗談はおばあちゃんにだけ言いなさいね。他の人には言っちゃダメだよ」
小学4年先だった当時の私は、冗談で言ったことに対して叱られた気がして、ムスッとした。
本当に、冗談のつもりだった。
その日の午後、おばあちゃんは事故に遭い、そのまま亡くなった。
私はおばあちゃんが大好きだ。
後悔しても、何度後悔しても、後悔しきれない。
ちゃんと謝れなかった。仲直りしてない。
10周忌の日、私はおばあちゃんの仏壇にボソリと呟いた。
「おばあちゃん、ごめんなさい。大好きだよ。戻ってきてよ…仲直りしたいよ」
今は午後14時30分。嘘をついていいのは、午前中だけ。
私の気持ちをおばあちゃんに伝えたい一心だった。
仏壇の前で泣いていると、一枚の紙が落ちていた。
開くとそこには、
「私の大好きな孫へ、おばあちゃんも大好きだよ。
おばあちゃんは怒ってないよ」
どうしてこんな紙が落ちていたのかは分からない。
10年前の私がおばあちゃんに言ってはいけないことを言ってしまったことは誰も知らないし、話してもいないから、誰も知り得ないこと。
そして、この特徴的な字は明らかにおばあちゃんの字だった。
私は、この紙を抱きしめながら泣いた。
10年越しに、おばあちゃんと仲直りできた気がしたから。
それから20年が過ぎたが、今でも忘れられないエイプリルフールのエピソードだ。
あの時のおばあちゃんからの手紙は、大事にとってある。
「エイプリルフール」
「私ね、、、結婚することになったの」
元カノからのライン。
別れてから2年、俺はまだ吹っ切れていない。
順調に付き合ってて、結婚も視野に入れていた元カノ。
急に、好きな人ができたから別れたいと告げられ、そのまま別れる運びになってしまった。
俺は、別れてから2年間ずっと彼女に片思いしている。
他の女性と食事に行くこともあったが、やはり彼女が忘れられなくて付き合うには至らなかった。
女々しいと思われるかも知れない、でも彼女が忘れられない。
そんな彼女が結婚するらしい。
銃で頭を撃ち抜かれるような衝撃だった。
分かっていた。好きな人ができて別れたのだから当然、将来的に結婚はしていただろう。
その相手が俺じゃないことが辛い。
でも、彼女の幸せは俺の幸せなのだ。
だから、俺から彼女へのラインの返しはこうだ。
「どうか幸せに…」
その後、彼女の連絡先は全て消去した。
「幸せに」
私は気付いている。
何気ないふりして彼は、いつも車道側を歩いてくれる。
そんなこと気にしなくても、もう子どもじゃないんだけどね。とは思うけど、やはりちょっと嬉しい。
きっと彼なりに、守りたいと思ってくれてるのだろうと。
不器用だけど、そんな彼にずっとついていきたい。
…いいよね?
彼は照れくさそうに、微笑を浮かべる。
「何気ないふり」