流れ着いたメッセージボトル

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12/24/2024, 3:51:52 AM


今年のプレゼントは何がいい?だなんて愛しい彼女が尋ねるものだから、悪戯心でその華奢な身体を抱き寄せて可愛らしい唇にキスをひとつ。

「ふふ、プレゼントは貴方じゃないの?」
「〜〜〜ッもう、お姉様ったらずるい…っ!!」

顔を赤く染めて非難するようにこちらを見つめられても、ただただ愛しさが増すだけである。
しばらくしてふと目線をずらしたかと思うと、

「…だって私の全部は、もうお姉様にあげてるから……」

ごにょごにょと小さく呟かれたその言葉に今日はもう彼女を寮へ返さない事を誓った。
耳元でそっと彼女の名前を囁くと、今度は期待と嬉しさが混ざった瞳で見つめられる。


一体“ずるい”のはどちらかしら?



#プレゼント HPMA side.T

12/20/2024, 8:44:04 AM


寂しさを飲み込んだら
息が詰まって苦しくなった

だから苦しさも飲み込んで
平気だよと嘘を吐いた

自分自身に嘘を重ねる
それが唯一、自分を守る為の方法だった



#寂しさ

12/11/2024, 1:37:42 PM


強く腕を掴まれて


ほどほどにしときなよ、と一言


こちらを見透かすようなその瞳を見つめ返し


何のこと?と笑いかけると


ただ苦虫を噛み潰したような顔をして黙ってしまった


((…わかってるくせに))


#何でもないフリ

12/5/2024, 8:03:47 AM


「はぁっ、はぁっ、はぁ……っ!!」

ナニカが追って来る

暗い森の中をがむしゃらに走って、走って、走り続けた。
しかしどれだけ走って逃げてもソレは僕を捕まえようと迫ってくる。
森はどこまでも暗く、自分が一体どこへ向かって走っているのかも分からない。

どこでもいい、早く、早く遠くに…!

捕まったら終わりだと本能が叫んでいる。
息が苦しい。手足がちぎれそうだ。
もうとっくに限界を越えて体中が悲鳴をあげているがそれでも足を止める訳にはいかない。

「はぁっ、はぁっ、……っうわ!?」

走り続けていよいよ視界も霞んできたその時、とうとう木の根に足を引っ掛け盛大に転んでしまった。

「!?〜〜痛っ、………っ、に、逃げ、ないと…!」

ここで止まってる暇は無い。だが一度走ることをやめてしまった身体は鉛のように重くなかなか起き上がれない。
無理やり足に力を入れてフラフラと立ち上がったところで周りの空気が凍てつくような温度に変わった。
心臓がドクリと嫌な音を立てる。

「!!…………っ…」

そんな、もうここまで…?
だめだ振り返るな、考えるな、逃げろ

分かってはいるのに身体は金縛りにあったようにピクリとも動かない。逃げろ、走れ、と頭の中で警鐘がガンガンと鳴り響く。流れ落ちる冷や汗を拭うことも出来ず自らの意思に反してゆっくり、ゆっくりと振り返ると……

───暗く冷たい闇は眼の前まで迫ってきていた。


─────
──────────

「ッうわあぁぁぁ!!!?」

叫びながら勢いよくベッドから跳ね起きる。
静かな部屋に自分の荒い呼吸音だけが響き渡り、ようやく今まで悪い夢を見ていたのだと気づく。

「…は、はは………夢、か…」

未だ微かに震えている手をギュッと握りこんで深呼吸する。
目を閉じると間際に夢で見た光景がフラッシュバックして思わず身震いした。

大丈夫、大丈夫、ここに奴は入って来れない。襲われることは無い、大丈夫…。
何とか自分に言い聞かせたが、恐らく今夜はもう眠れそうにないだろう。
早々に寝る事を諦め起き上がるとベッドサイドの棚に沢山の小包が置いてあるのが目に入った。

「……そういや、みんながチョコレートくれたんだっけ…。」

曰く、甘いものを食べると気分が少し良くなるらしい。
小さな包みをひとつ摘んで月明かりの差し込む窓枠に腰掛ける。
そのままぼんやり外を眺めながらチョコレートを口に放り込むと優しい甘さがじんわりと身体に広がった。

「………、はは、うん、甘いや…」

ほんの少し先程よりも張り詰めていた気分が和らいだ気がする。
じわりと滲んだ視界に気付かないふりしてもうひとつチョコレートを口に放り込んだ。



#夢と現実
HPMA side.S S8 幕間の話

11/24/2024, 4:27:40 PM

今年も冬がやってきた。
外は静かに雪が降り続け、数日の間にホグワーツはすっかり銀世界に包まれた。
城の周りの湖も凍って何人かの生徒がスケートして遊んでいるのが窓から見える。

「ついこの間までハロウィンパーティーしてたのに、もうあっという間に冬だね。」
「...ん~?だねぇ...」

窓際の向日葵に水やりしながら部屋に遊びに来ていた幼馴染にそう声をかけると、間延びした返事が返ってきた。
さっきまでマルキンの新作衣装がオシャレだっただの、ハニーデュークスに行くと必要以上にお菓子を買ってしまうだのと、楽しそうな近況を話していたはずなのに一体どうしたんだとそちらを見やると、彼女は暖炉の前のロッキングチェアに揺られてウトウトと船を漕いでいた。
手元にある編みかけの編み物はすっかり動きを止めてしまっている。

「....おーい?」
「...ん~なぁに...」
「眠いなら部屋に戻った方が...」
「......ん~....?んん...そ...だねぇ...」

返事は返ってくるも寝落ちる寸前の様子。
...そういや最近不規則に寝てしまうせいでまとまった睡眠が取れてないって言ってたっけ。
このままここで寝かせるのもどうかとは思うがせっかく眠気が来てるなら無理に起こすのも良くないか...と少し思案した後、ブランケットを杖で呼び寄せる。
起こさないようにそっとかけてあげると幼馴染は既にスヤスヤと寝息を立てていた。

「......全く、困ったもんだよ。」

どうにもこの幼馴染には甘くなってしまう自分に苦笑する。
恐らく互いに自分が一番近しい存在で、同時に一番堅実な存在だと分かっているからだろう。
それが僕らにとって最適解だということも。
心地の良いこの関係に名前をつけることは最早無粋な気さえするのだ。

「だからといってあまりにも無防備過ぎるのは良くないと思うんだけどさ。」

眠りの妨げにならないようかけている眼鏡をそっと外してやり、傍らのテーブルに置く。
意趣返しのつもりで頬をつつくと、うにゃうにゃ...と形にならない寝言が返ってきた。

「ふふ、...おやすみ」

幼馴染の反応に満足し、そっと頭を撫でて再び水やりの作業に戻る。
寝かせてあげたかったから...というのは建前で
本当はもう少しだけ一緒に居たかったから。
...だから起こさなかった、ということはここだけの秘密にしておこう。


“ピィ”と相棒であるフクロウがひと鳴きして僕を見つめる。
「しぃー....分かってるよ、そろそろ準備しないとな。」

時計を確認して手紙を書き始める。
どうか貴方の記憶に残る楽しい一日になりますようにと願いを込めて。
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“ピィー!ピィーッ!キュルル...”

「んん...?あれ......寝落ちてた...?」

フクロウがプレゼントを運んでくる声で目を覚ました幼馴染が僕の書いた手紙によってあちこち奔走するのはその後しばらくしてからの話である。



HPMA side.S

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