今年も冬がやってきた。
外は静かに雪が降り続け、数日の間にホグワーツはすっかり銀世界に包まれた。
城の周りの湖も凍って何人かの生徒がスケートして遊んでいるのが窓から見える。
「ついこの間までハロウィンパーティーしてたのに、もうあっという間に冬だね。」
「...ん~?だねぇ...」
窓際の向日葵に水やりしながら部屋に遊びに来ていた幼馴染にそう声をかけると、間延びした返事が返ってきた。
さっきまでマルキンの新作衣装がオシャレだっただの、ハニーデュークスに行くと必要以上にお菓子を買ってしまうだのと、楽しそうな近況を話していたはずなのに一体どうしたんだとそちらを見やると、彼女は暖炉の前のロッキングチェアに揺られてウトウトと船を漕いでいた。
手元にある編みかけの編み物はすっかり動きを止めてしまっている。
「....おーい?」
「...ん~なぁに...」
「眠いなら部屋に戻った方が...」
「......ん~....?んん...そ...だねぇ...」
返事は返ってくるも寝落ちる寸前の様子。
...そういや最近不規則に寝てしまうせいでまとまった睡眠が取れてないって言ってたっけ。
このままここで寝かせるのもどうかとは思うがせっかく眠気が来てるなら無理に起こすのも良くないか...と少し思案した後、ブランケットを杖で呼び寄せる。
起こさないようにそっとかけてあげると幼馴染は既にスヤスヤと寝息を立てていた。
「......全く、困ったもんだよ。」
どうにもこの幼馴染には甘くなってしまう自分に苦笑する。
恐らく互いに自分が一番近しい存在で、同時に一番堅実な存在だと分かっているからだろう。
それが僕らにとって最適解だということも。
心地の良いこの関係に名前をつけることは最早無粋な気さえするのだ。
「だからといってあまりにも無防備過ぎるのは良くないと思うんだけどさ。」
眠りの妨げにならないようかけている眼鏡をそっと外してやり、傍らのテーブルに置く。
意趣返しのつもりで頬をつつくと、うにゃうにゃ...と形にならない寝言が返ってきた。
「ふふ、...おやすみ」
幼馴染の反応に満足し、そっと頭を撫でて再び水やりの作業に戻る。
寝かせてあげたかったから...というのは建前で
本当はもう少しだけ一緒に居たかったから。
...だから起こさなかった、ということはここだけの秘密にしておこう。
“ピィ”と相棒であるフクロウがひと鳴きして僕を見つめる。
「しぃー....分かってるよ、そろそろ準備しないとな。」
時計を確認して手紙を書き始める。
どうか貴方の記憶に残る楽しい一日になりますようにと願いを込めて。
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“ピィー!ピィーッ!キュルル...”
「んん...?あれ......寝落ちてた...?」
フクロウがプレゼントを運んでくる声で目を覚ました幼馴染が僕の書いた手紙によってあちこち奔走するのはその後しばらくしてからの話である。
HPMA side.S
11/24/2024, 4:27:40 PM