夢の中から出ることができない。
楽しすぎて出たくないからだ。
明らかに現実はつまらない。
いや、恐怖でしかない。
20代後半によく思ったものだ。
将来の最悪の事態だけは避けようと。
しかし、その最悪の事態が発生してしまってから、どう生きたらよいのかは考えていなかった。
このような想定外の厳しい人生には、若い頃頭に浮かんだ恐怖が詰まっている。
ホラー映画は怖くない。
現実の人生そのものが一番怖いからだ。
そして、悪夢も見ない。
現実の人生がより悪夢に近いからか。
夢の中の自分は幸せである。
もちろん、日によっては小さな愛の物語の断片も出てくる時もある。
愛も恋も仲間も、夢の中に全てある。
現実のノルマが終わったら、早速、夢の中に逃げ込もう。
それはそれで、人生の安らぎになっているのだから。
最近は、現実に興味がなくなってきた。
以前は楽しそうだと思っていたことが、今は面倒なだけだと思うようになってきたからだと思う。
年をとるとは、思っていたより怖いものなのかもしれない。
物理的に衰えることに関しては覚悟していたが、心理的なものまで変化してしまうとは。
私は、思い出づくりとかいって、誰かと無理やりどこかへ行ったり、写真を撮ったりするのが大嫌いだったし、今も嫌いである。
なぜなら、自分が高齢になったときに、思い出だけを頼りに生きていきたくないからだ。
年をとっても、現実に社会に貢献したり、若い頃以上にアクティブに楽しんだりして過ごしたかったのだ。
しかし、楽しめるかどうかは、その時の心理にかかっているので、この分では楽しめることはかなり限られてきそうで、とても残念なのである。
現実がだめなら、映画や小説などは楽しめるのかということになるが、これもだめかも知れない。
映画に関しては、15分ぐらいでつまらないと判断して、観るのをやめてしまうことが多くなってきたからだ。
将来、科学が進歩して、長時間、自分の夢の中で冒険できる装置などが開発されれば、少しは楽しめるのかもしれないが。
私にとっては、いや、世界中の高齢者にとっては、それが何よりのオモテナシなのかもしれない。
世の中のほとんどの事は解明されていない。
例えば、宇宙の起源と未来、生命の起源と死後についてなど。
仮説は存在するが、立証はできない。
また、死後についてなどは、オカルトとして認識され、真剣に研究されてもいない。
科学で解明できないことは多い。
そもそも科学の歴史はまだ浅い。
科学の時代の前には、宗教の時代や占いの時代があったのだ。
人間は万能ではない。むしろ罪深い動物である。
そして味方によっては、地球にとって最も危険な害虫なのである。
最近、民家にクマが出現して人間を襲う事件が多いが、そのずっと前から、人間は自然に入り込み、破壊し、動物たちを殺してきたし、今も殺し続けている。
自然の中に勝手に道路を作って、車で鹿などの野生動物を数多殺してきたのである。
ちなみに私の猫も車に何匹ひき殺されたことか。
クマが悪いのか、人間が悪いのか。
問題は何なのか。
また、戦争は終わらない。
ウクライナやガザで起こっている侵略行為を誰が阻止できるのか。
憎しみは次世代に引き継がれる。
こうしてみると、本当に人間は罪深いのだ。
どうすれば世界は、地球は平和になれるのか。
人は幸せになれるのか。
終わらない問いが、今日も明日も続くのだ。
おそらく数年間、人と話さなくても大丈夫だと思う。
とは言え、無人島だろうが、刑務所の独房だろうが、言葉が通じない異国だろうが、ひとりで大丈夫ということではない。
今の環境では大丈夫ということである。
その理由は、猫たちに囲まれているからだと思う。
人との縁は薄いが、その代わりに動物との縁が深いのである。
捨て猫や野良猫が、いつの間にか家に居着いてしまう。
私自身が、猫が集まる体質なのだと思う。
しかし、こちらも家計に負担がかかるし、世話も大変なので経済的にも時間的にもコストがかかっている。
とは言うものの、猫の命を見捨てるわけにもいかず、家族として受け入れている状況なのである。
その見返りに、猫のお腹の、ヤワラカ感や、フワフワ感で心を癒してもらっている。
猫たちとは、テレパシーで通じているので、話さなくても大丈夫なのだ。
私には誰にも言えない秘密がたくさんある。
私はそのほとんどを墓場まで持っていくだろう。
全て、恥ずべき事柄である。
人はよく、唯一の黒歴史とか言って、自分の恥ずべき経験を否定する事があるが、私にとっては人生の大半が黒歴史なので、その唯一というところを羨ましく思う。
人に言えない秘密をたくさん持っているということは、人との距離感を縮められないということでもある。
何を考えているのかわからない人と思われ、なかなか信頼されないということになる。
しかし、それでも心をオープンにすることはできない。
信じられないが、平気で人をおとしめようとする人間がいることを知っているからである。
一方で、こんな距離感では、恋愛や友情を育むことができない。
それでもやはり、自分の過去を告白することはできない。一種の守秘義務のように。
だから、他人の秘密も守れる自信がある。
おそらく、口が硬いことに関しては、世界でも上位に入るだろう。
秘密工作員などの仕事にはピッタリの人間である。