Kitty

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1/24/2024, 9:14:23 AM

『こんな夢を見た』


 とても幸せな夢だった。私とあなたが白い服を着ていて、壁や床ですらも全部真っ白。

 私を見つめるあなたは優しくて、愛しい人でも見るかのような………私ではない誰かを見ているのだろう。だって、あの人は私をそんな慈愛じみた瞳で見つめないのだから。一生叶わないとわかっていた。自覚してはいけない、望んではいけない“夢”を見てしまった。

 好き。愛してる。
あなたに贈る言葉は、そんなふた言では収まらなくて。
あなたが愛おしくてたまらなくて。

 いつか、あなたと一緒に人生を歩めたなら、

 いつか、あなたと愛しき子をこの手にだけたなら、

 いつか、あなたと一緒に土に還れたなら、


 きっと、幸せだろう。わかりたくなんてなかったよ。
私はあなたを愛しているなんて、知りたくなかった。

「大嫌いだよ、馬鹿」

 届くはずもない声を嘲笑った。

11/11/2023, 12:45:07 PM

『飛べない翼』

「あ、綺麗…」

 人は皆、翼を持っている。色も形も大きさも人それぞれだけど、みんなには見えていないのが事実。

 翼を持ってる人のほとんどは、濁った色で折れていて痛そうなの。まぁ、痛覚も感覚すらもないみたいで痛がる様子は微塵もないけれど。

 でも、翼は大切なものだと思う。翼が折れてしまった人は、二度と飛び立つことができない。

 つまり、諦め続けて中途半端な希望を抱えて生きるしかないの。……僕が見てきたのは、だいたい頑張っている人ばかり。

 人一倍頑張っている人。

「僕の翼は………」

 頑張ることも挑戦することもいいことだけど、大きなことほど、失敗してしまった時や挫折してしまった時に、翼が大きく折れてしまう。

 頑張るものが大きければ大きいほど、それに比例して翼は飛べなくなる。飛べない翼になってしまう。

 だから無理しないでね。あなたのそんな姿見たくないから。

11/5/2023, 4:22:23 AM

『哀愁をそそる』

 哀愁、知りたくもなかったことだ。私は平穏に楽に生きたいだけだ。苦痛なんてことは大嫌いで感じたくもない。

「君はどう思う?」

 ベランダの柵に軽く触れ、そう尋ねる。相手から答えが返ってくることはない。だって、あの人はもう………。
どうしてこうなってしまったのだろう。

 考えてもわからないな。

 視界に桜色がちらつく。幾多の花びらが楽しそうに揺れ、ベランダへと舞い降りてくる。

「早く戻ってきてくれよ……。」

 君が好きな花と季節。君が好きなものに囲まれたって、君は帰ってこなくて虚しくなるだけだ。

 どうして私を置いていったの?
辛かったなら言ってくれよ。

 あの人は私を置いて────






 ────ここから飛び降りた。

10/28/2023, 5:45:30 PM

『暗がりの中で』

思わず手を伸ばす。

そこには何もない。
家の中なのか、外なのか、何もわからない空間。

確か、さっきまで朝で学校へ行く準備をしてたはず。その証拠に私は制服を着ている。
しかし、この状況は好都合かもしれない。

ここなら、学校なんてものもないだろうし、何もしなくてもいいんだものね。

「疲れた。何もしたくない。」

頑張っても結果は出なくて、それが仇になって。
どれだけ逃げたいって思っても逃げられなくて。

私はずっと、この汚い本心を隠して生きていかなきゃ。

そんなの嫌だった。毎日毎日、蓄積されていくストレスを浄化できない。

けど、助けてくれる人もいた。ちょっと年上のあの人。
母が夜勤の時や家に居づらい時、家に泊めてくれるし、私に家事も教えてくれた。

勉強も何もかも、あの人がいたから頑張れたんだ。

「戻りたい……。」

ここにいるのも悪くないけど、

あの人との未来を見たいから、あの人と一緒に居たいから。

私はもっと生きるよ、辛くても。

そう思った途端、黒い霧のようなものがはれていく。
段々と周りが晴れていくような感じがして、気がつくと、
あの人の家の前だった。

お仕事から帰ってきたらしいあの人は驚いた顔をして、

「どこ行ってたの?心配したよ。」

「ごめんなさい、少し悩んでて。」

「……そっか、悩みは中で聞いたげる。」

ねえ、私はまだ生きるよ。

あなたとこれからも一緒にいるために。