『暗がりの中で』
思わず手を伸ばす。
そこには何もない。
家の中なのか、外なのか、何もわからない空間。
確か、さっきまで朝で学校へ行く準備をしてたはず。その証拠に私は制服を着ている。
しかし、この状況は好都合かもしれない。
ここなら、学校なんてものもないだろうし、何もしなくてもいいんだものね。
「疲れた。何もしたくない。」
頑張っても結果は出なくて、それが仇になって。
どれだけ逃げたいって思っても逃げられなくて。
私はずっと、この汚い本心を隠して生きていかなきゃ。
そんなの嫌だった。毎日毎日、蓄積されていくストレスを浄化できない。
けど、助けてくれる人もいた。ちょっと年上のあの人。
母が夜勤の時や家に居づらい時、家に泊めてくれるし、私に家事も教えてくれた。
勉強も何もかも、あの人がいたから頑張れたんだ。
「戻りたい……。」
ここにいるのも悪くないけど、
あの人との未来を見たいから、あの人と一緒に居たいから。
私はもっと生きるよ、辛くても。
そう思った途端、黒い霧のようなものがはれていく。
段々と周りが晴れていくような感じがして、気がつくと、
あの人の家の前だった。
お仕事から帰ってきたらしいあの人は驚いた顔をして、
「どこ行ってたの?心配したよ。」
「ごめんなさい、少し悩んでて。」
「……そっか、悩みは中で聞いたげる。」
ねえ、私はまだ生きるよ。
あなたとこれからも一緒にいるために。
10/28/2023, 5:45:30 PM