今にも肩と肩が触れてしまいそうな距離を並んで歩く。
傘を握る手に少し、汗が滲んだことに気付かない振りをした。まさか自分がこんな状況に置かれるだなんて思ってもいなかった。
何も言わず、ただ前を向いて歩いている君は、いったい何を考えているんだろうか。なんとなくその横顔を眺めていたら、ふと目が合った。
君の口がゆるやかな弧を描く。
気付けば、さっきよりも近くに顔があった。
一瞬、睫毛が触れる程に近付いて、また直ぐに離れる。
誰にも見えないから良いでしょ、と言った君は悪戯っぽく笑っていた。
【6月2日 傘の中の秘密】
ずっと止まない雨が降り続けていた。もう自然と止むことは無いのだろうと思っていた。
こうするしか仕方がなかったとは言えど、それだけのことをした自覚はあった。
だから、もう自分を終わらせようと思っていた。
だけど、君が現れた。
雨雲を押しのけて太陽が顔を出した。
きっと君は何も知らないんだろう。でも、純粋な顔でこちらを見てくる君に応えたいと思って、自分を終わらせるのはやめた。
いつか君は全てを知ってしまうだろうけれど。
もしかするとここから離れてしまうかもしれないけれど。
それでも良いから出来るだけの事をしよう。
君の前でだけは、白く輝く自分でいたい。
そう思った頃には、雨上がりの虹がかかっていた。
【6月1日 雨上がり】
いつも何か張り合っているような気がする。
勝ち負けなんてない、大したことではないのに、なんだか納得いかないモヤモヤとした気持ちがあるから。
喧嘩をしたいわけでもないのだけれど、思ってもいないようなことをつい言ってしまう。
だけど、これは嘘じゃない。
あなたにだけは負けたくない。
【5月31日 勝ち負けなんて】
いつも通りのまったく変わりのない日常。
そんな時間がいつまでも続いていけば良いと思うのに、
過ごしていく日々のなかには日常と全然違う、良いことや悪いことが沢山ある。
だけど、その壁を乗り越えることで一つ一つ成長していくことが出来るんだろう。
それなら。
自分がどこまで行くことが出来るのか試してみたい。
この物語をこんな所で終わらせないで、
まだまだ、ずっとながく続かせていこう。
【5月30日 まだ続く物語】
ずっと同じ場所にとどまっていてはだめだ。
渡り鳥のように、状況に応じて別の場所へと移っていくべきなんだろう。
これはとうに終わっているのに。
囚われていてはいけないことは分かっているけれど。
ここを離れたくないと、そう思ってしまう。
でもきっと、ここから離れた先にはもっと綺麗な景色が広がっているはずだ。この気持ちはここに置いていこう。この記憶は一緒に持って行こう。早くここから離れないと。
だから今、心を決めて新しい場所へと歩き始める。
【5月29日 渡り鳥】