ふと、あなたの髪に触れる。
自分とは違ってさらさらとした髪質。
指で掬うように持ち上げてみると、
するりと滑り落ちていった。
何も言わずされるがままの、あなたの表情が視界に入る。
その時。
あなたに好きに触れることが出来るようなこの距離感が、無性に嬉しくなって、その体をぎゅっと抱きしめた。
【5月28日 さらさら】
これで最後。もう全部終わりだ。
そう思っていたら、今までの思い出が溢れ出してきた。
他のことを考えて気を逸らそうとしてみても、まるで滝のように流れ続けて、溢れ出すものを止められない。
感情が邪魔をしてくる。終わりにしようと思ったのに。
やっぱり終わらせられない、終わらせたくないよ。
【5月27日 これで最後】
傷付けるつもりはなかった。
ただ、どうするべきか分からなくて、
取り返しのつかないような事をしてしまった気がする。
そういえば、まだ君のことを下の名前で呼んだことがなかった。今すぐ会いに行って、この気持ちを君に伝えなければいけない。
そう思った頃にはとっくにこの体は動いていた。
その日、初めて君の名前を呼んだ。
【5月26日 君の名前を呼んだ日】
眠れない夜。
ぽつり、ぽつり。
気付けば、たくさんの雫が窓を叩いていた。
雨の日は好きじゃない。晴れの日の方が好きだ。
だけど。
触れたら冷たいはずの雨粒が奏でる音には温度を感じた。
灼き尽くしてくるような陽の光とは違う、優しく包みこんでくれるような温かさ。
たまには雨の日もいいかもしれない。
やさしい雨音を子守唄に聴きながら、眠りについた。
【5月25日 やさしい雨音】
誰かの口遊む声が聞こえる。
どこかで聴いたことのある歌だった。
ひどく懐かしく感じるのに、いつどこで聴いたのか思い出すことが出来ない。
間違える筈がない。
有名なものでもなく、あの時一度だけ聴いた歌。
けれどその旋律だけは鮮明に覚えている。
あれは一体、何だったのだろうか。
【5月24日 歌】