街には夕暮れが広がっている。空は薄紫に染まり日が少しずつ影を落とす。
僕は、夏の物語のページをめくり続けていた。
そこでは、青空と白い雲と、笑い声が響く風景が、終わりを知らないかのように何度も繰り返される。
それらが指先を通じて僕の心に流れ込んでくる。
隣にいる君は、何も考えないふりをしている。けれど、その目は遠くを見つめ僕らの未来を見通しているように思える。
君は、僕らの明日に秋の栞を挟んでいるんだろう。
薄い栞には表面のこすれた音が記されている。
君の影は夕暮れの中、長く伸びている。
この微妙な沈黙の中で何かが確実に変わりつつある。
そうして、僕はまたゆっくりと次のページをめくるのだ。
お題「ページをめくる」
僕は蒸し暑い空を見上げた。湿った太陽が、何か懐かしいものを思い起こさせる。君の涙に濡れた瞳が、夢の中の光のように輝いていたことを思い出す。それは、穏やかでどこか切なげな美しさを抱えていた。
風に揺れる一輪の白いひなげしが目に留まった。その花は僕に微笑んでいるようだ。
君がいる世界は、時に色鮮やかで、時に無機質だ。その中で僕は君の存在を感じることができる。
目的地も、終わりもわからないまま、君との再会のために、僕は歩き続ける。
「True love」
クリスタルオーケストラの旋律を聴いたことがあるかい?
その音色は、宇宙の調和と深く結びついていて心地よい波動をもたらすと言われている。
瞑想みたいなものさ。
この音楽を聴けば、君のエネルギーが揺れ動き、まるでクリスタルのように輝き出すんだ。君の周りの世界がより鮮やかに映るんだ。
さあ、クリスタルコンサートで耳を澄ませてみて。
君自身がクリスタルになれる体験が待っているよ。
「クリスタル」
カーテンは多くの役割を果たしている。何度も開閉され外と内の空気を含み、風が通り抜ける。
近所にカーテンのないスタイリッシュな家があるのだが、いつも周囲の視線を気にしていなければいけないだろう。結局、数年後、その家もロールカーテンを取り付けてしまった。やはりプライバシーの保護のためにはカーテンは必要だったらしい。
カーテンは外と内を繋ぎつつも、遮断する役目を持っている。
ある子の心には、どこか分厚いカーテンで覆われているものを感じることがある。
いつかそのカーテンが開かれ、透けるレースのようにオープンになってくれる日が訪れるといいなと思う。
「カーテン」
薄緑色の紫陽花は、日を追うごとに青く変わっていく。梅雨の湿気を含んだ朝、カタツムリが葉の上をゆっくりと歩き回っていた。彼はその湿った葉の一部をちょっぴりかじるのさ。
やがて太陽がオレンジ色の光を放つと、カタツムリは葉の陰へ身を隠す。乾いた世界から逃げ込むように、自分の丸い殻の入り口をしっかりと閉じるんだ。これから訪れる夏眠のためにね。
紫陽花は確かな速度で青く変わり続け、その傍らでカタツムリは青く深い夢を夏の間見続けるのだよ。
「青く深く」