街には夕暮れが広がっている。空は薄紫に染まり日が少しずつ影を落とす。
僕は、夏の物語のページをめくり続けていた。
そこでは、青空と白い雲と、笑い声が響く風景が、終わりを知らないかのように何度も繰り返される。
それらが指先を通じて僕の心に流れ込んでくる。
隣にいる君は、何も考えないふりをしている。けれど、その目は遠くを見つめ僕らの未来を見通しているように思える。
君は、僕らの明日に秋の栞を挟んでいるんだろう。
薄い栞には表面のこすれた音が記されている。
君の影は夕暮れの中、長く伸びている。
この微妙な沈黙の中で何かが確実に変わりつつある。
そうして、僕はまたゆっくりと次のページをめくるのだ。
お題「ページをめくる」
9/3/2025, 2:26:21 AM