récit

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5/16/2025, 4:04:09 AM

オイラは、最初は中型のネズミのような生物だった。カピバラのような可愛さもなくヒトたちからはあまり好かれていなかった。
そんなある日、オイラの仲間がネズミ捕りに引っかかり、ヒトたちにいじめられたんだ。すると、仲間の身体の細胞の酵素が奇妙な反応を引き起こし、ちりちり光り始めたのさ。それ以来オイラたちはヒトたちによって捕獲され、いじめられ、光る生き物に改良された。形態も可愛く変えられて、ピカ獣と呼ばれた。
そして、今では電気代を節約するために、ヒトたちは、オイラたちをペットとして大切に飼って可愛がっている。
こんなオイラたちのご先祖たちを思うと、オイラは少し胸が痛む。

「光輝け、暗闇で」

5/14/2025, 11:19:39 PM

水兵リーベ僕の船〜♪
僕は元素記号の語呂合わせの歌を、頭の中で口ずさんだ。
なんだか頭も肩も少し凝っているし、勉強に飽きてしまって、今度は声に出して歌ってみた。
歌声がちょっとだけ空気を振動させ、リーベの船は波に揺れていくみたいに感じる。
そして、深呼吸をして身体に酸素を送り込んだ。

それから、僕はキッチンに行って、クラスのあの子の綺麗な髪の毛を想いながら、アイスカフェオレでリラックスする。

あとは歯を磨いて、もう寝るだけさ。

「酸素」

5/13/2025, 11:30:04 PM

記憶の海は、日差しを受けキラキラしている。その表面には、波に乗った軽やかな思い出たちが浮かんでいる。だけど、その深淵には重たく静かな記憶がひっそりと沈んでいるんだ。
この海の中をゆったりと泳ぐタツノオトシゴは、大切な感情や思い出の象徴だ。
彼が元気に泳ぎ回れば、記憶は楽しげに輝いている。でもある時、彼に影がさすと、海の比重が歪んでくる。ポコポコと泡が立ち、海全体が濁り始めるんだ。
でもそれは、何かを問いかけている。きっと意味がある。
タツノオトシゴのご機嫌を気にするのも必要かもね。

お題「記憶の海」

5/13/2025, 1:37:09 AM

永遠の鳥はアビーに向かってある少女について話し出した。
「彼女はみんなに愛され大切にされて、いつもにこやかな女の子だった。そんな彼女が、君に恋をしたんだよね。天使である君は、それはもう美しい光を放っていて、彼女は君のことを特別に思ってしまった。
彼女の願いは、一度でいいから君だけに愛されたいということだった。でも、アビー、君はたくさんの人に愛を注がなければならない天使の立場なんだ。だから、彼女の想いは叶わなかった。
それ以来、彼女は自分を愛することも辞めてしまって、笑顔を失ってしまった。天使の君でも、そんな過ちがあるんだね。
そして、そのことを悔いて、君は神様の赦しを得て、今は猫の姿で人々の想いをゴンドラで運んでいるんだよね」


お題「ただ君だけ」

5/11/2025, 11:39:55 PM

港に"未来への船"が停まっている。遠く沖の方には、永遠の鳥が羽ばたいるのが見えた。

笑みを浮かべた男が船のチケットを配っていて、僕はそれを受け取り意気揚々と船に乗り込んだ。
どんな素晴らしい未来に連れて行ってくれるのだろう。さぁ、出発だ。

船は高速エンジンで海を滑り、永遠の鳥の真下まで波の上を走った。そこには渦が出来ており、ここから未来へと進んでいった。

そして、僕は自分の平凡な未来を見た。それから友人や知人、日本、世界、地球、宇宙の未来も見た。全てが早送りのように未来に進み過ぎ去る。
さらに超未来へ進むと、一気に時は過去へ向かった。すごいスピードで僕の時代をも通り越してずっと昔まで遡っている。
このままでは、と考えると僕は怖くなって気を失ってしまった。

目が覚めた時、僕は港に放り出されていた。船酔いの感覚だけが残り、しばらく呆然と寝転がっていた。


お題「未来への船」

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