心の奥深くには、静かに広がる森のような神秘の場所があるんだ。
僕たちの脳細胞は、日常的に使われているのはほんの10%だと言う。
その残りの90%は、静かな森の中で眠り続けているのさ。
世に名を馳せた天才たちは、しばしばこの森を訪れ、そこで思索を巡らせる。
そして、彼らはそこから芸術のひらめきや学問の進展、政治的な決断を引き出してきたんだ。
だけど、この幻想的な世界に浸りすぎてはいけない。
ニーチェみたいに、万能感に囚われ、奇声を上げて裸のまま街を駆け抜けてしまうこともあるからね。
もし、僕がこの森に行けたとしても、森の入口付近でのんびりとお昼寝するくらいがちょうどいい。
「静かなる森へ」
☆脳は実際には100%使われているそうです
「ねぇ、君は夢って何かある?」
「うーん夢か、考えたことはあまりないな。毎日同じことに埋もれてる現実だからさ、夢なんてどこか遠い場所にあるように思えるんだ」
「確かにね、でも実は、現実というのは夢にたどり着くためのひとつのルートなんだと思うんだ。だから、夢と楽しい現実を出会わせてみるのはどうだろう?」
「ふーん、現実の中に少しの楽しみを見つけられれば、夢を見つける近道になるかもしれないな」
「結局は、毎日が大切ってわけだよ。だから面白いと思う遊びも忘れないようにしようぜ」
「面白いことから夢が見つかれば言うことないよ」
「夢を描け」
「君の想いが誰かに届かなくても、その想いはいつか違う形で実を結ぶときがやってくるんだ。だから、僕はこのゴンドラにその想いを乗せて、遥か彼方へ運ぶことにしたよ。そっとそこに置いておくんだ」
アビーは静かに手にしたゴンドラを見つめた。
アビーは信じている。
「想いって、そういうものなんだよ」と。
どんなに遠くに運ばれても、その温かさは決して消えない。
いつの日か誰かに響くことをアビーは、心から願っていた。
「届かない…」
天気のいい休日の森林公園では、野鳥のさえずりと、優しく差し込む木漏れ日が迎えてくれる。
ここでの散策コースはとても気持ちがいい。
でも、そんなひとときを邪魔するのが、時折現れる「野鳥の声真似おじさん」だ。
おじさんは、鳥の鳴き声を真似ながらサッと走り去っていく。
まるで不意打ちを狙う変な敵襲のようだ。
おじさんのヘンテコで攻撃的な声に対して、すべての野鳥が「それは違う」ときっと抗議するだろう。
「木漏れ日」
ふらりと入った懐かしい街の店で、カプチーノを一口飲む。温かなクリームが体の隅々まで浸透してくるようだ。
耳を傾けると、ラブソングが流れていた。
何度も聴いたことのあるフランス語で歌うボサノヴァ風のお洒落な旋律だ。
その歌は、朝でも昼でも夕方でも、もちろん夜でも穏やかな眠りへと誘う。人の心を包み込むような歌い方だ。
でも歌手の名前が思い出せない。それに、君と一緒に聴いたあの時間のこともいつの間にか忘れてしまっていた。
だけど今、思い出は美しく再生される。
あの時の君への感情は、もう薄れてしまったはずなのに、再びこの歌を君と共有しているかのような錯覚を覚える。
君は今どうしているのか。
返事がなくても君と一緒にいる気がするよ。
「ラブソング」