récit

Open App

ふらりと入った懐かしい街の店で、カプチーノを一口飲む。温かなクリームが体の隅々まで浸透してくるようだ。
耳を傾けると、ラブソングが流れていた。
何度も聴いたことのあるフランス語で歌うボサノヴァ風のお洒落な旋律だ。
その歌は、朝でも昼でも夕方でも、もちろん夜でも穏やかな眠りへと誘う。人の心を包み込むような歌い方だ。
でも歌手の名前が思い出せない。それに、君と一緒に聴いたあの時間のこともいつの間にか忘れてしまっていた。
だけど今、思い出は美しく再生される。
あの時の君への感情は、もう薄れてしまったはずなのに、再びこの歌を君と共有しているかのような錯覚を覚える。
君は今どうしているのか。
返事がなくても君と一緒にいる気がするよ。


「ラブソング」

5/6/2025, 11:06:44 PM