庭先にいる一匹の猫。彼の名前はミーシャ。
ミーシャは柔らかな午後の光の中、地面で遊ぶスズメたちのさえずりを耳にして嬉しくなった。
ミーシャはスズメとの運命の出会いを求めて、ゆっくりと身を屈め、目の前のスズメに焦点を合わせる。ミーシャのしなやかな体すべては、シンフォニーの休止符のように静かな情熱と緊張感でいっぱいになる。シッポだけがピクピクと震えている。
ミーシャは無心になり、静寂を破り一気に飛び出した。
スズメたちは一斉に羽ばたき逃げ去った。
ミーシャはスズメとただ一緒に戯れて遊びたかったのに。
庭先に残ったのは退屈だけだった。
夕暮れが迫りミーシャは家に帰って行った。
「静かな情熱」
お祭りでジョーカー姿の男が子どもたちに飴を配っていた。子どもたちは美味しい飴に夢中になり、お祭り広場を離れ、男に付いて奥深い森林へ向かった。
そこで男は言った。
「この森林を切り拓いて宮殿を作るんだよ」と。
子どもたちは言われた通りに伐採を始めた。
しかし、どう切っても木々は空に向かって伸び続け、ますます森は深くなっていった。
とうとう子どもたちは森を出られなくなってしまった。
すると遠くから
「大人から搾取されないために森を切り拓き続けるのだ。子どもだけの宮殿をつくるのだよ」
という声が聞こえ、ジョーカーはいつの間にか姿を消してしまった。
子どもたちは飴も失い迷子になって大声で泣き続けた。
「遠くの声」
☆サタイア的お話
皆さん、桜学園高校へのご入学おめでとうございます。今日は特別な日ですね。
さて、皆さんは、猫でいうと1歳になったところです。
1歳の猫たちは春になるとみんな一斉に恋をする時期です。猫も将来の幸せを考えて頑張っているんです。
皆さんも、勉学に、スポーツに、仲間との友情、そして素敵な恋愛にも挑戦していってください。
これからの高校生活が皆さんにとって素晴らしいものになりますよう、校長からの挨拶とさせていただきます。
「春恋」
僕ね、小学校の図画の時間に、社会で猫が働いている未来の絵を描いたんだ。
国語の授業で「猫の手も借りたい」という表現を勉強したから、人口が減少していく将来には、猫がしっかり教育されて、いろんな分野で大活躍すると思ったの。
AIと猫が一緒に働く時代がやってくるっていう絵を描いたんだよ。
「未来図」
学生だった頃、僕はある選択について悩んでいた。その時、頭上に「君が道に迷った時は左を選べ」という言葉がハラリと降ってきたんだ。僕はその言葉を恩寵のひとひらかと信じたよ。
そしてそれ以来、決断を迫られるたびに、いつも左の道を選び続けた。
だけど、最近になって気づいたんだ。実は、僕が選びたいものを、自らの手でいつも左側に置いていたってことにね。
つまり、僕は最初から自分自身で決定をしていたというわけだ。
そう考えると恩寵でも何でもない。僕はただ自分が選んだ道を歩いていただけだったのさ。
「ひとひら」