皆さん、桜学園高校へのご入学おめでとうございます。今日は特別な日ですね。
さて、皆さんは、猫でいうと1歳になったところです。
1歳の猫たちは春になるとみんな一斉に恋をする時期です。猫も将来の幸せを考えて頑張っているんです。
皆さんも、勉学に、スポーツに、仲間との友情、そして素敵な恋愛にも挑戦していってください。
これからの高校生活が皆さんにとって素晴らしいものになりますよう、校長からの挨拶とさせていただきます。
「春恋」
僕ね、小学校の図画の時間に、社会で猫が働いている未来の絵を描いたんだ。
国語の授業で「猫の手も借りたい」という表現を勉強したから、人口が減少していく将来には、猫がしっかり教育されて、いろんな分野で大活躍すると思ったの。
AIと猫が一緒に働く時代がやってくるっていう絵を描いたんだよ。
「未来図」
学生だった頃、僕はある選択について悩んでいた。その時、頭上に「君が道に迷った時は左を選べ」という言葉がハラリと降ってきたんだ。僕はその言葉を恩寵のひとひらかと信じたよ。
そしてそれ以来、決断を迫られるたびに、いつも左の道を選び続けた。
だけど、最近になって気づいたんだ。実は、僕が選びたいものを、自らの手でいつも左側に置いていたってことにね。
つまり、僕は最初から自分自身で決定をしていたというわけだ。
そう考えると恩寵でも何でもない。僕はただ自分が選んだ道を歩いていただけだったのさ。
「ひとひら」
少女は、色の無い青い風景の中、ひとりそぞろ歩いていた。少女は、目的の無い意味を求めている。反響することの無い音のように、漠然とした心は乳白色に塗られていた。
どこからか風がやってきて、やがて少女も恋を知る。
色が無かった青い風景は、赤く煌めきを帯びていった。心は透明に晴れ、世界は鮮やかな色を帯び始める。少女の目的と意味が明確に繋がっていく。
こうして少女は大人になり、無色の青を忘れ去っていく。
「風景」
発明家が夢博士に尋ねた。
「僕は夢と現実の境界が曖昧になってしまったんです。今が本当に現実なのかどうか、どうすればわかるでしょうか?」
夢博士はゆっくりと答えた。
「それはとても簡単なことだ。もし君がまったく知らない真新しい出来事に遭遇したら、それは間違いなく現実だ。夢の中で見るのは、いつも知っていることばかりだからね。未知の出来事は夢の中では起こらないのさ」
発明家は
「ということは、夢の中で新しい発明をすることなど無いということですね」
と少しがっかりしてため息をついた。
夢博士は言った。
「そうだ。結局そんなことは夢なのだよ」
「夢へ!」