暗い森の奥、一羽の黒い鳥が全力で飛んでいた。
彼のその黒い羽は無数の枝にぶつかり何度も傷を負いながらも、飛行は止むことがなかった。
暗闇の中に何かを探し求め彼は空を切り裂いていた。
いよいよ飛ぶことに疲れ果てた頃、前方に微かな光が見えた。
光は柔らかく少しずつ彼の意識に迫ってくる。
まるで彼を導いているようだ。
光が大きくなるにつれ黒い鳥の中で何かが弾ける音がした。
「あなたは誰?」
黒い鳥は光に向かって声を発する。
しかし返事は返ってこない。静けさだけがその場を包む。
その光は彼自身の内なる波動だ。
黒い鳥は暗闇の光を求めて再び力強く羽ばたいた。
「あなたは誰」
むかし、白ヤギさんと黒ヤギさんがお手紙のやり取りをしようとしました。
でも、ヤギさんは届いたお手紙を読まずに食べてしまい、彼らの気持ちを伝えることは困難だったのです。
お手紙の行方は、いつまでも彼らのお腹の中で混ざり合っていました。
メェメェー。
時は流れ、白ヤギさんも黒ヤギさんもスマホを手に入れました。
おかげで、彼らのコミュニケーションは瞬時に繋がるようになったのです。
今や、白ヤギさんと黒ヤギさんのそれぞれの画面にお互いの愛の言葉が映し出されるようになりましたとさ。
メェメェー。
「手紙の行方」
僕はなんとなく原始時代のことを考えてみた。
もし、僕が何の道具も持たずにその時代に放り出されたら生き延びることができるだろうか。多分、無理だ。
だけど、原始時代の人はなんとか知恵と工夫を駆使してその厳しい環境の中で必死に生き抜いていた。
その日々には、僕の想像を遥かに超える苦労があっただろう。
彼らは、生きる意味だの輝きだの考える暇もなく生きていたと思う。
こんなことを考えていたら、今に生きる僕は、原始時代の彼らの必死さに心打たれて、そこに輝きを見ることが出来たんだ。
「輝き」
最高に幸せな時、君は心の中で「時間よ止まれ」と叫ぶ。
でもそんな時こそ、時間は急速に過ぎ去っていく。
恋する時間というのは、短く感じるものだよ。
魔法使いの猫でも、永遠の幸せを願う君の時間を止めることは無理なんだ。
もしかしたら、160億年先に炎の再生鳥がやって来て一瞬だけ時間を止めてくれるかもしれない。しかもその後、時間は逆戻りする。
だけど誰も160億年も待てないしさ。
せつない話だね。
「時間よ止まれ」
仮面のようなフェイクの微笑みの下で、君の声が微かに震えているのが分かる。
泣きたい思いを抱えているのが伝わってくる。
だから、イケメン猫は君を夢のゴンドラに乗せて、夜空の星々の海を駆け巡るんだ。
手を優しく繋ぎ、再生の鳥が待つ場所へ向かうのさ。
やがて、窓から差し込む陽の光が君の目を覚まさせる。
その時、君は再び世界を浄化する歌を歌えるようになっているだろう。
「君の声がする」