広大な荒野には、耕地や牧地にも適さない無駄に見える土地がある。
そこは、何もないエアーな空間のようで、まるで、始末に困っている使用済みの大きな空き箱みたいだ。
だけど、この役に立たなさそうな荒地に隙間なく根を張る植物たちは、驚くほど美しい色彩を纏っているんだ。
イケメン猫は、君がこれまで見たこともない景色を知っている。
足元で静かに眠る猫は夢の中の冒険者なのだよ。
「まだ見ぬ景色」
空中ブランコに乗り、イケメン猫はふわりとした空気の中を漂いスイングする。リズムよくクルクルと回りながら心が踊り始める。
この気持ちのいいノリノリな感覚の中で、空に浮かぶ忘れ去られた記憶を見つけるんだよ。
ああ、そうだった、こんなこともあったな。
イケメン猫は、置き去りにした出来事の微かな温もりにそっと触れる。
すると、心の奥で少しずつほぐれていく熱を感じる。
そして、その熱は小さな希望の粒子へと変わり、未来への大切な鍵を形作っていくのわかるんだ。
「未来への鍵」
世の中の形や様々なものごとは、いつも変わりゆく。
君は変化の新しさを楽しむかもしれないし、あるいはその目まぐるしさに少し驚くかもしれない。
その変化を傍らに置いて見てみると、実はそれは単調で平坦な景色として映ることもある。
驚きや期待の裏側には、穏やかな時間が流れている。
冬はクールで知的な姿を纏っている。でもその心はとても繊細であたたかい。
冷たい風に散った街路樹に
煌めくイルミネーションの花を飾り、寄り添いながら歩く君と僕の夢を温めてくれる。
「冬になったら」
彼はとても真面目で少し気難しく、いかめしい表情で面白いことを言う芸人コメンテーターだった。
その独特の雰囲気が視聴者やスタッフに受け入れられ人気者だったが、
芸歴が10年を迎える頃には次第に飽きられ始め、人気に翳りが見えてきた。
そこで彼はマネージャーと相談してイメチェンを図ることにした。
新しい芸風はヘラヘラした軽いノリで真面目なことを語るという、これまでと真逆のスタイルを目指すことにした。
しかしイメチェンした彼が初めて出演した朝のTVニュースで、大御所の俳優さんが老衰でお亡くなりになった訃報を、あろうことかヘラヘラしながら報じてしまった。
その時、スタジオ内は凍りつき、視聴者からの苦情がテレビ局に殺到した。
SNSでも大炎上してしまった。
彼は真面目な顔で真剣に報道をするべきだったのだ。
彼のイメチェン後のもう一つの物語は初日で終わってしまった。
「もう一つの物語」