ピカムは言葉にできない感情を彫刻という芸術で表現した。
彼の偉大な業績は芸術史に重要な何ページかを刻んだ。
後世の評論家たちはその作品を巧みな言葉で分析し語ったが、彼の芸術は決して言葉で表せるものではなかった。
そのため評論家たちの間で解説評論することへの疑問が生じた。
ある評論家は「ピカムはただの石好きだったのではないか」という見解を示した。
世間は一笑に付した。
しかし、それはあながち間違いではないのかもしれない。
石そのものにアートの魂が込められているかもしれないのだ。
今なお作品の魅力は時を超えて神秘に包まれている。
題「言葉にできない」
☆ピカムハ架空ノジンブツデス
チューリップ畑を散歩中のイケメン猫。
ピンクや赤、黄色、オレンジ、白など色とりどりのチューリップたちが春の陽気を楽しんでいる。
そんな中ひときわ妖艶な黒チューリップに出会った。
彼女たちは黒いビロードのドレスをまとった高貴な美人。
その彼女がイケメン猫に話しかけた。
「私の花言葉は“私を忘れてください”なの。寂しいけれどそれもまた運命ね。でもあなたは私を忘れないでね」
イケメン猫は答えた。
「あなたは孤高の花に見えるけどひとりぼっちじゃない。おしゃれで印象的な特別な存在だよ。僕は絶対に忘れたりしない」
黒チューリップも微笑んで言った。
「イケメン猫さんありがとう。私もあなたの優しい言葉を忘れないわ」
チューリップ畑はみんな春爛漫。
題「春爛漫」
詩は言葉の旋律。
音楽のように胸に沁みる。
喜びをも悲しみをも
包み込む言葉は
安らぎに変わり
心の奥深くに
懐かしさを感じる風景を描かせる。
届きそうなのに遠くて
ずっと想い続ける。
題「誰よりもずっと」
過去の足跡振り返り
今を見つめ
未来を形作る。
記憶は今をつなぐ。
感情は未来へ向かう。
これからもずっと。
題「これからも、ずっと」
友人Kからのe-mail。
彼は南極観測隊で働いている工学技術士である。
「やあ元気か。今オレは南極基地にいる。半年ここにいる予定だ。単身出発前には日本海に面した温泉旅館で家族と夕日を眺めながら過ごした。その時の沈む夕日が綺麗で詩人になれそうな気分だったな。
南極の夏は太陽が24時間全く沈まないんだ。夜も明るくて遮光ブラインドで人工的に暗い夜を演出している。夜は本を読んで過ごしてるよ。タイトルは"太陽の沈まぬ大英帝国史"さ。すでにもう日本の夕日が懐かしいけど南極任務を頑張るよ。半年後君と会って話すのが楽しみだ。K」
題「沈む夕日」
☆書簡体風ソウサク