ソラシド

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12/2/2023, 9:10:38 AM

#距離

近づいてみないと分からないこともある。
怖いから、知らないから、不安だから、傷つきたくないから。いろんな理由を盾にして、大切な自分のこころを守ってきた。
私を脅かすものからは、離れて、全力で逃げて、「どうせまた」と決めつけて、そうやって守ってきたの。

繊細で、敏感な、脆いこころには、
愛が眩しすぎて、離れたくなる。

愛されたいのに、愛されることを恐れて、
愛されない、愛されないって泣いてるの。

優しい手も、暖かな温もりも、慈しむ愛も、たしかにあるのに。
自分を守っていた盾は、いつしか自分を傷つけるための矛になっていたね。

遠ざかるほどに孤独は感じるけれど、近づいたから感じる暖かさもある。

近づくほどに目を瞑りたい光もあるし、遠く離れるほどに見える星もある。

どの距離が一番いい心地よいのか分からなくて、
分からないまま、振り子みたいに行ったり来たり。

私が見えて、貴方を感じられる距離が、きっと私たちを大切にできる距離感だよね。

11/30/2023, 9:51:18 AM

#冬のはじまり

季節の変わり目は、とても曖昧だと思う。気づいたら秋が終わって、冬を連れてきてた。でも、そうだな。気づいたらって言うのかいい。
朝晩の底冷えする寒さとか、暖かいスープが身体の芯にまで染み渡るとか、ふわふわのニットに包まれていつもより何倍も可愛い女の子とか、澄んだ夜空に輝く月とか。
暮らしの中で、当たりまえになって見逃してしまっているものたちの変化に気づいたとき。「あ、いいな」って思うの。
季節を感じることがとても嬉しいような。それがなぜなのかは分からないけど、寒いから嫌だなってだけじゃない良さをふとした時に感じて気づいた時に、心が満たされる感じ。素敵もの見つけちゃった、って。
「ここから冬です」と決まってないのがいい。期限がないのがいい。曖昧で、限りがないから、どう思うのかは自由なところがいい。

冬の夜空を見上げて、身体の中の不要なものを全部一掃するみたいに冷たい空気で呼吸する隣には愛しい人がいて、どんなに寒くても私の心だけは温かいまま。はあ、と白い息をまじえて「寒いね」って笑い合ったら、私より少しだけ熱を持った手に包まれる。濁りのない透き通った冬の空の下では、月の光が辺りを照らしてて、恥ずかしそうにはにかんだ笑顔がよく見えた。
寒いからって言い訳は、しばらく使えそう。
冬はまだはじまったばかりだから。

はじまって、終わるころに、またはじまって。
ぐるぐる回る季節。私たちみたいに。

11/26/2023, 11:21:38 AM

#微熱

「好きだけど、付き合わない」

人を好きになったら付き合うという恋の一般常識の中に、こんな選択肢があると知ってから、大分と心が楽になった。
恋が全く分からないわけではない。初恋だって、ちゃんとあった。幼稚園でいつもお弁当を食べる班の隣だった男の子。まだあどけない顔つきの子どもたちの中でも、一際目を引く美少年だった。
残念ながら彼とは学区が違って別々の小学校に上がることになったけれど、小学校になってからはまた別の子を好きになったし、6年間、一途に恋心を向けていた。
10代の青春時代に、しっかりと恋という感情に熱くなって、切なくなって、胸を高鳴らせていたにも関わらず、だ。

その先の欲望が全くといっていいほどない。
好きな人は、見ているだけで幸せ。話せたらすごく嬉しいし、優しくされたら自分に好意があるのではと自惚れるくらいチョロい。
笑顔で微笑まれた日なんかは、心臓がギュンと音を立てて――キュンではない、ギュン――全身が麻痺する。

自分のものにならなくても、別にいい。見てるだけで幸せだから。
そう思う裏には、あの人には自分よりもいい人がいるから、という思いがあるのかもしれないんだけど。
だから、「好きだけど付き合わない」選択は、自分を守るための盾。

「彼のこと、好きなんだよね」

意図せずに耳に入ってきた隣のグループの会話に、ドキッとして息をのんだ。
まさか、あいつを好きになるやつなんているのか。幼なじみのポジションに甘えていた自分の中に、ふつふつと熱が湧く。
誰かのものになる。
こんな時に、いやでも思い知らされる。

自分の中に絶えず宿っていた微熱に、自分のものにしたい欲望があるだなんて。

11/15/2023, 1:35:01 PM

#子猫

生命の儚さといったら、花か散ってしまうくらいに脆い。
触って存在を確かめることができるのに、わずかな衝撃で呆気なく散る。
いずれ死が来るなら、早いか遅いかのたったそれだけの差だ。
今ここで終わらせても、そういう運命だったと悲しいけれど受け入れるしかない。

「生きたくない」

ぽっかりと虚しく空いた穴から、そっと囁かれた言葉が身体を巡って脳に到達する。
でも、死にたいわけでもない。
暑い、眠い、だるいと、普段なーんにも考えないで無意識に溢れ出るそれと同じような重さだ。

辛いときに、逃げ出したいときに、もう限界ってときに、命を盾にして自分を守ってきた。
しかし、今はどうだ。生きたくないことが根のように張り巡らされてしまい、生きたくないが口癖になっている。
でも、本当につらいのだ。つらくてつらくて堪らない。
大切な命を賭けてしまいたくなるくらいに、つらい夜が。

「にゃーん」

鈴の音を鳴らして、愛猫がお腹を横断した。
横になった私のそばに小さな体をぴったりとくっ付けて目を閉じると、すぐにグルル……と喉のエンジンが全開になった。

気分屋だなあと、丸こい鼻筋を撫でる。
気持ちよさそうにしちゃって、何を考えてるんだか。いや、何も考えてないのか。
私はこんなにも頭の中がいっぱいなのに。撫でられてだらしなくなった顔をみていたら、考えることが馬鹿らしくなってくる。

ふっ、と息を吐くと、今度はもふもふの毛並みに手を滑らせた。
ゆっくりと上下に動く体がこの子の呼吸を感じさせる。

無防備になったその体に耳を付けてみた。

――生きてる。

こんなにも小さな体で、生きてる。
私よりも小さな小さな体で。

胸がギュッとなった。
鼻の奥がツンとして、息をするのが苦しくなった。

死にたい人間のぽっかりと空いた穴に、この子の温かさが伝わって、愛猫の形でぴったりと嵌る。

冷たい夜の布団の中で、ふたつの命の音が静かに鳴り響いていた。

11/14/2023, 10:11:32 AM

#また会いましょう

別れ際の言葉は「またね」がいい。

たとえ社交辞令でも、
また会いたいです、会えるかもしれません、会えるでしょう、会うつもりです、って再会する未来がある気がするから。

言っている人は、深い意味なんて考えてなくて、ただ結びの言葉に「またね」と言ってるにすぎないかもしれない。

ただの文字として並べた「またね」の言葉について、ニュアンスや雰囲気や色やイメージや含みの、とりとめのないことをたくさん考える時間がとても、とても好き。

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