「これが言ってたやつ?」
「そうだよ、送り火と言ってね。お盆で帰ってきた人らを空へ送るための火なんだよ。おうちがわかるように目印としてやる迎え火ってのもあるんだがね。」
「へぇ~……燃やしちゃって熱くないのかな?」
「う~ん…わしらにとったら熱いかもしれないけど、ばあちゃんにとっては暖かいものだといいなとじいちゃんは思うよ」
「…多分暖かいとおもう」
「そうかい?」
「だってじいちゃん、お盆の間ずっとニコニコしてたからばあちゃんも嬉しかったとおもうよ。嬉しいとポカポカするでしょ?」
「…こりゃ参ったな」
ばあちゃんとの時間を惜しむように火を見つめるじいちゃん。
寂しそうではあったけど、来年の迎え火は一緒にやりたいなって言うと「じいちゃんが帰ってくる側じゃなかったら一緒にやろうな」なんて言うもんだから、約束守んないとお酒お供えしてやんないからねって釘指して視線を上へ向ける。
もくもくと上がる煙はなんとなくゆっくり空へ向かってるように見えた。
またね、ばあちゃん。
「遠くの空へ」
(私のばあちゃん生きてるけど(笑))
風鈴の音 編集中
朝、目を覚ましカーテンを開ける瞬間が好きだ。
暗く静かな空間が一気に彩りが溢れる。
雨の日、外の様子を見るためにカーテンを開ける瞬間が好きだ。
しとしと間近に感じる水の音、流れる筋、ここまで届く気がする濡れた土の匂い。
雷が聞こえ、その光をみようとカーテンを開ける瞬間が好きだ。
黒の空に稲光が弾け、空気を揺るがす響く音。
だけど、カーテンが開くのが嫌な瞬間もある。
それはもちろん、自分がまだ寝ているときに開けられる瞬間のことだ。
こればっかりは、開けた人物も、カーテンも憎いと感じる。
だからどうか、私の朝の楽しみを奪わないでね。
「カーテン」
なにも伝えてくれない海の底のような冷たさを込めていたり
かと思えば私のことが大好きで仕方ないと輝いていたり
私の知っている深い色は表情豊かである
「お姉さま!」
「あら、どうしたの?さっきも会ったじゃない」
「いつだって会いたいの、だめ?」
ぎゅっと抱きついてくるいつもの柔らかさによしよし、と髪を撫でる
「ふふ、かわいいんだから」
「お姉さまは会いたくない?…嫌だったりする…?」
じわりと不安を漂わせるチェルに、そういうことを言わせたかったわけではなかったけど
(いつも凛としているのに、私を見つけるとパッと弾けるように幸せそうにしたりかと思えば今みたい弱々しくなるあなたがとても愛しい)
私にだけ向ける感情だと思うと尚更そう想う
「そんなわけないでしょう?私はあなたのことが大好きよ」
「っ、私もおねえさまだいすき!」
コロコロ変わる青の表情。
これほど彩り豊かな色をわたしは他に知らない
どうか、これからも傍で
あなたのその青くて深い愛を感じさせてね
「青く深く」 HPMA side.T
それは母がよく使っていたものだった。
浅いキズがあちこちにみえ、カップの底には
茶渋が円を描くように渦を巻いている。
一緒に買い物をした後に家で一息ついたとき
夜更けに台所のシンクに置いてあったり
自分の飲み物のついでに母の分を注いだり
いつもそばにあったそれは
久々に実家に帰ったときも現役でそこにいた。
見かける度に思うよ。
ただいま、母のそばにいてくれてありがとうってね。
これからも、どうか末長く母の相棒でいてね。
「マグカップ」