みしり、みしり、音がする。
壊れること無く、ただひたすらに痛んでいく音
いつになったら壊れてくれる?
「ありがとう~!助かった!」
「いいけど、そろそろ寝る前に明日の準備するようにしなよね」
「忘れちゃうんだよ~、LINEしてよ~?」
「授業の準備忘れいでねって??親か(笑)」
「よろしく私のママ♡」
愛嬌たっぷりの彼女はいつも忘れ物をすると隣のクラスの私の元へやってきて
「あれを忘れたー!」
「これが足りなかった!!」
「使ってたらなくなっちゃった!」
「入れ忘れた教科書をリビングのテーブルに置いてそのまま忘れちゃったよぉ」などなどバレエティ豊かに助けを求めてくる。
それがかわいくてついつい甘やかしてしまうんだよね。返しに来るときに飴や駄菓子を添えてくるのも彼女らしい。
今日の供え物のいちごみるくの飴を口に含み、貸した教科書を開く。
今日はなにを落書きをしたんだか。
「ページをめくる」
「これが言ってたやつ?」
「そうだよ、送り火と言ってね。お盆で帰ってきた人らを空へ送るための火なんだよ。おうちがわかるように目印としてやる迎え火ってのもあるんだがね。」
「へぇ~……燃やしちゃって熱くないのかな?」
「う~ん…わしらにとったら熱いかもしれないけど、ばあちゃんにとっては暖かいものだといいなとじいちゃんは思うよ」
「…多分暖かいとおもう」
「そうかい?」
「だってじいちゃん、お盆の間ずっとニコニコしてたからばあちゃんも嬉しかったとおもうよ。嬉しいとポカポカするでしょ?」
「…こりゃ参ったな」
ばあちゃんとの時間を惜しむように火を見つめるじいちゃん。
寂しそうではあったけど、来年の迎え火は一緒にやりたいなって言うと「じいちゃんが帰ってくる側じゃなかったら一緒にやろうな」なんて言うもんだから、約束守んないとお酒お供えしてやんないからねって釘指して視線を上へ向ける。
もくもくと上がる煙はなんとなくゆっくり空へ向かってるように見えた。
またね、ばあちゃん。
「遠くの空へ」
(私のばあちゃん生きてるけど(笑))
風鈴の音 編集中
朝、目を覚ましカーテンを開ける瞬間が好きだ。
暗く静かな空間が一気に彩りが溢れる。
雨の日、外の様子を見るためにカーテンを開ける瞬間が好きだ。
しとしと間近に感じる水の音、流れる筋、ここまで届く気がする濡れた土の匂い。
雷が聞こえ、その光をみようとカーテンを開ける瞬間が好きだ。
黒の空に稲光が弾け、空気を揺るがす響く音。
だけど、カーテンが開くのが嫌な瞬間もある。
それはもちろん、自分がまだ寝ているときに開けられる瞬間のことだ。
こればっかりは、開けた人物も、カーテンも憎いと感じる。
だからどうか、私の朝の楽しみを奪わないでね。
「カーテン」