Sasha

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9/5/2023, 10:12:36 AM

「見て、綺麗な貝殻!」 

帽子の下に弾けるような笑顔を輝かせ、君は僕を振り向いた。

「持って帰ろうかな?!」

「いいんじゃない?」

裸足になった彼女に付き合って、僕も靴を脱いだ。靴下を靴に丸めて突っ込んで、彼女と同じように視線を下に向ける。

目が慣れるにつれて、白く大きい貝殻がたくさん浜辺に落ちていることが見えてくる。

「これ、みんな欲しがるよね!お土産にしようか?!」

「ああ…。」

それはどうかな。と僕は思った。都会の狭い箱に押し込められた現代人は、大量の貝殻をかざるスペースなんて、持ってないだろう。

僕は、言葉を濁したまま、サクサクと音を立てて、乾いた浜辺を歩いた。

そのとき、見慣れない材質の丸い石が足に当たった。かすかな透明感がある、薄緑の石だ。いや、もしかしたら、ガラスが摩耗したものかもしれない。

僕はかがみこんで、石を手に取り、太陽に透かした。よく見ると、その石には、見慣れない文字が刻印されている。

「これ、何語だろう?」

僕の声に、君は足を砂まみれにしながら、こちらに歩いてきた。手には、たくさんの白い貝殻を抱えたままだ。

しかし次の瞬間、彼女は手にした貝殻を放り投げた。そして、僕の手から石を奪い取ると、小さく叫んだ。

「これ…。神代文字じゃない?」

「神代文字?!」

【貝殻】

9/2/2023, 8:26:36 AM

俺は、なかなか開けないLINEアプリをようやく起動させた。

赤いバッジが、君からのコメントが2件あることを表している。

勢いで告白してしまったけど、返事を聞く勇気はなくて、逃げるようにその場を離れてしまった。

LINEをあけるのが怖い。

【開けないLINE】

8/31/2023, 10:06:44 AM

僕は思わず、涙を流した。彼女との別れの傷が、まだ癒えていない。

何をしても、重いものが、身体の深く底に残っている。

罪悪感が、まだ僕を苦しめているのだ。

「不完全な僕を、どうか許してくれ…。」

そう思いながら、立ち去る君を窓から見下ろした日のことを思い出す。

恨まれても仕方がない。

【不完全な僕】

8/31/2023, 10:04:06 AM

信号待ちをする僕の目の前を、若い女性が軽やかに通り過ぎていく。

仕事中なのだろう、きれいなオフィスカジュアルに、ヒールの靴を履いている。

その時、ふわっとした風が、僕と彼女の間を吹き抜けた。

「これは…。」

僕は思わずハッとした。この香りは、ゆいがつけていた香水の匂いだ。

僕の頭は、あっという間に2人で過ごした日々にタイムスリップした。

【香水】

8/29/2023, 11:40:42 PM

「ごめん。俺、勘違いしてた。…本当に大事なものは形じゃないって…。そのことを、分かってなかった。」

「言葉はいらない。ただ…。」

彼女はつとそばに来ると、僕にキスをした。

そして、恥ずかしそうにうつむく。

こんな大胆なことをした癖に、と思うと急に彼女が愛おしくなった。

そんな彼女を僕は、衝動的に強く抱きしめた。

【言葉はいらない、ただ…】

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