「ものは心で見る。肝心なことは目には見えない」
「きみがバラのために費やした時間の分だけ、バラはきみにとって大事なんだ」
「家でも、星でも、砂漠でも、きれいに見えるのは何かを隠しているからなんだ」
「僕の星はたくさんの星の中に混じっている。だから、きみはどの星のことも好きになる……ぜんぶの星がきみの友だちになる。ぼくはきみに贈り物をあげたい……」
大事にしたい、星の王子さまの名言たち。
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大事にしたい
「星の王子さま」(新訳)より
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自分の書く文章が、誰かにとってプレゼントになればこれ以上の幸せはない。
そう思って、文章を紡いでいる。
見えない誰かに届けたいのはいつも、心が生み出す夢だ。
一方的なそれを、私は「あげたがり/プレゼント屋」とよんでいる。
何故か人にあげたくなってしまうのだ。
いつかそんな心をわかってくれる人と文章のコラボが出来たら──とても楽しそうだ。
ワクワクする気持ちを輝かせ、一つの星として空に打ち上げよう。
星空がまた一つ明るくなり、友だちが増える──かもしれない。
注文したCDが届かない。
SNSで情報収集をすると、
ファンの人達は次々と着弾報告をしている。
それなのに、何故。
何故、届かぬのだ。
お迎えの準備満々なのに、
何回肩透かしを食らっているのだろう。
早く聞きたいのだが?
発売日が公表されてからずっと、
楽しみにしているのだが?
それなのに、それなのに、
無情な「発送準備中」の文字。
…ぐぬぬぬ…。
何故、何故、発送準備から動かぬ…。
(それはね、発送する物が多くて大変だからよ)
(知ってるよ!物流に関わる皆様、お疲れ様です!!通販で快適なのは皆様のおかげですっ!!お世話になってますっっ!!)
再度SNSで調べてみると、
まだ届いていない人もいるらしい。
初めての注文だった為「注文時に何らかの不備があったのでは?」と心配していたのだが──
多分、大丈夫…多分?
いつもであれば
「時間よ、止まれ」と思うことが多いけれど、
今回ばかりはこう思う。
「早う時間進め」
三連休までには届くだろうか…。
首を長くして待っているけれど、
流石に首が疲れてきた。
首がもげる前に、
CDが届くことを切に願うばかりである。
SNSでは素敵な音楽だという感想ばかりが目に入る。
私も早く音の世界に浸り、想像の羽根を伸ばしたい。
そこでは、どんな音色と出会えるだろうか。
どんな景色が広がっているのだろうか。
ワクワクしたら、首の痛みが少し和らいだ。
待つ時間も想像して愛おしむ──
物事に対しての極意かもしれない。
「無い」に目を向ければ苦しくなる一方だが、
「持っている」に気がつけば幸せも気づく。
一事が万事そういうものなのかもしれない。
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時間よ止まれ
摩天楼が綺羅びやかに輝いている。
夜景──人類発展の証の一つだ。
地上に広がる光は、空の星々の輝きすら隠してしまうほど眩く輝く。
──人は、明かりを灯さずにはいられない生き物らしい。
およそ180〜80万年前、炎で動物たちから身を守っていた時代から現代に至るまで。夜を照らす「灯り」と「人」というのは、切っても切れない関係にある。
人は本能的に、明かりというものを求めてしまうものらしい。
夜景の美しい輝きには、そんな人の心が現れているのかもしれない。
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夜景
幻想的な青い花畑がある。
誰一人踏み込んだことがない、不可侵の領域だ。
青い花はそこでひっそりと生きていた。
荒らされることのない環境は、青い花にとって大切な場所であった。
ある時。
一人の旅人が、青い花の下へやって来た。
青い花は警戒した。
不可侵の領域に入り込んでくる人間がいるとは思わなかったからだ。
それに、旅人がやって来た理由も分からない。
警戒する花に対し、旅人は話しかけてきた。
人と話をしたことがなかった青い花は、素直に嬉しいと思ってしまった。
旅人は穏やかで優しい性格をしている。
怖い人ではない。
青い花は警戒を解くと、旅人との会話を楽しむようになっていった。
旅人の言葉は優しく、話す内容も青い花にとって新鮮で興味深いものばかり。
青い花はお礼に、旅人へマナを渡した。
旅人の思い出の品にでもなればと思い渡したのだが、旅人は帰らなかった。
旅人には行くべき、待つべき人がいるのを青い花は知っていた。
いつまでもこの花畑に留まらせてはいけない。
そう思った青い花は、旅人を元の道に戻すため旅人が嫌がる香りを放つことにした。
嫌な思いをすれば、旅人は立ち去り、ここにはもう来なくなる。
青い花はそのことを寂しいと思う己を叱咤しながら、嫌な香りを放ち続けた。
おかえりなさい。
大切な人の元へ。
おかえりなさい。
あなたの行くべき道へ。
そう青い花は願っていたのだが──。
嫌な香りに顔を歪めながらも旅人は尚も、真摯な言葉と優しい心で青い花に接してきた。
その姿を見て、青い花は優しい人をただ悪戯に傷つけた──己の愚かさと浅はかさを思い知ったのだった。
旅人が満足して立ち去るまで、真摯に受け入れよう。
青い花は嫌な香りを出すことを止め、旅人と向き合うことにした。
傷つけてしまった分、あげられるものはあげよう。
もし、いらないと言われたら──今度はひっそりと姿を消そう。
──ズルい青い花は、ずっと知っていた。
青い花畑を消す方法を。
旅人のことを思うならば、本当はそれが一番早いことも──。
旅人は知らないだろう。
旅人との会話でどれほど青い花が癒され、深い情を抱いたかを。
旅人がただ居てくれるだけで嬉しいと思う青い花の心を。
旅人が愛してくれた青い花畑を消すことができないことも──。
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花畑
空が泣いている。
君の悲しみが、嘆きが、
この雨を降らせているのだろう。
さて、こうしてはいられない。
準備をしなくては。
僕は、清潔で綺麗なハンカチを鞄に入れた。
ついでに美味しいお菓子とお茶も持っていこう。
ハンカチ、良し。
水筒のお茶、良し。
コップ、良し。
お菓子、良し。
傘の準備、良し。
雨靴、良し。
優しい目、濁りなし。
あっ、大きめのタオルも持っていこう。
鞄がパンパンだ。
でも、これで良し。
準備は整った。
泣いている君の元へ言葉を届けに行こう。
お節介?
そうだね、お節介かもしれない。
でもね、これが性なんだ。
ごめんね。
わがままで。
外に飛び出れば、ザーザーと降りしきる重い雨。
傘を叩く雨音のなんと大きなこと。
これでは嘆きの雨が、深く冷たい悲しみの海になってしまう。
もしそうなっても、普通に行くけどね。
君が「嘘だ」「信じられない」と冷たい悲しみの海に潜るのなら、海底まで迎えに行こう。
迎えに来なくて良い?
ごめん。
行くって決めちゃったから、諦めて。
君がいるのはきっと彼処。
胸に聞くとわかるんだ。
心が指し示す道を行けば、ザーザー降りの雨が強くなってきた。
君がいる場所までもう少し。
大丈夫、必ず見つけるから。
烟る雨の先に人影が見えてきた。
見つけた。
君だ。
君がいたのは、悲しみの雨が生み出した嘆きの海。
暗い顔をして、冷たい海に膝まで浸かっていた。
傘もささないで、雨にうたれている。
海の側には小さな掘っ立て小屋がある。
傘とハンカチ以外はそこに置いていこう。
雨靴も脱いで、さあ、君の元へ。
海に足をつけると、君は驚いた顔をした。
海の中に入る者なんていないと思っていたのかな?
僕は君を助けに来たんだ。
君の痛みを知らないで、助けることは出来ないだろう?
波に抗いながらジャブジャブと進む。
凍える程に冷たい水。
いつまでも浸かっていたら風邪をひいてしまうよ。
せめて、この傘を使って。
僕の差し出す傘に怯えた君は、後退りして、ますます海に入っていく。
怯える君の瞳の奥に、怒りの炎が燃えている。
何を見ても怒りや苛立ちに変えてしまうその瞳は、自身をも傷つける危険な瞳だ。
僕は傘を閉じると海に投げ捨てた。
丸腰となった僕に君が、呆気にとられた顔をしている。
ごめんね。
僕は心の中で謝ると、一気に君との距離を詰め──君を抱きしめた。
冷たい海に浸かり、雨にまで濡れる君の体は氷のように冷たい。
僕の熱が君に伝わるように、ぎゅっと抱きしめる。
悲しかったんだね。
こんな冷たい海に浸かるほど、苦しかったんだね。
大丈夫。
受け止めるよ。
君が感じた事すべて。
君は優しすぎる人だから、大変だったでしょう?
大変なのに、自分のことには蓋をして誰かに優しさを配りたくなってしまうんだ。
それは何故か、君はわかるかい?
僕はね、その答えを知っているよ。
苦労や悲しみ、心の痛みを知っているから、人に優しくなれるんだ。
ありきたりな言葉だと思った?
でも、本当なんだよ。
優しい君には当たり前過ぎて、見落としてしまったかな?
なら、それを拾って君に渡すよ。
努力家の優しい君。
もがくことを止めた君の肩が震えている。
僕は何度も君の背をさすった。
大丈夫。大丈夫。
何度失敗しても、何度挫けても、やり直せるから。
君が生きることをやめない限り、大丈夫。
君が願うことは叶うよ。
このハンカチ、良かったら使って。
涙を拭いたら、この海を出よう。
海岸の小屋が見えるかい?
彼処で一休みしよう。
体、冷えちゃったでしょう。
大きめのタオルを持ってきたから、是非使ってね。
温かいお茶もあるし、美味しいお菓子もあるよ。
ひと心地ついたら、君と語り合おう。
沢山語ろう。
君が言えなかった言葉も教えてね。
全て受け入れるよ。
肩を寄せあい二人が冷たい海を渡りきると、頭上からあたたかい光が降り注いできた。
悲しみの海は姿を消し、一面に色鮮やかな花が咲き乱れていく。
見事な花畑を穏やかであたたかな日差しが、照らしていく。
嘆きの雨が止んだ空には、綺麗な青空が広がり、虹がかかっていた。
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空が泣く