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8/21/2024, 11:55:38 AM

鳥のように空を飛べたなら──と想像してみる。

公共交通機関にありがちな渋滞や、待ち時間が無いのは魅力的だ。
自力故に、移動費がかからないという点も良い。
人混みもなく行けるのは、さぞや爽快だろう。

ストレスなし・金銭不要・爽快感あり。
良い事尽くめではないか。

何だか、鳥が羨ましく思えてきた。

現実的な実利以外でも、
鳥というのは羨ましい面がある。

例えば、

空へ向かって鳥が羽ばたいていく──。

この一文だけでも、絵になるではないか。
文字の世界に於いてまで、意味深なカッコ良さがあるのだからますますニクイ。


人間ではなく、鳥になるべきだったのだろうか。


そこまで思ってはたと気付く。



──あ。

──自分、高所恐怖症だった。



高い所に行くと、どうしてだか目眩がする。
それだけでなく、謎過ぎるほど足がガクガクして、体にまで力が入らなくなる。

そんな状態のものが、飛ぼうとしたらどうなるか。
答えは一つしかない。
飛ぶ前から、墜落だ。
命の危機ではないか。

無理。高い所、マジで無理。

…。

どうやら、自分は鳥にはなれない。
人間という形が最適解であると再認識した。

鳥のように飛ぶことは、百年早い──
いや、死んでも無理かもしれない。

8/20/2024, 1:48:02 PM

さよならを言う前に、メールを一通送る。

一見、何の変哲もなく、飾り気もない言葉。

その言葉の裏に隠した本当の心を

貴方は見つけてくれるかしら?

8/19/2024, 2:59:18 PM

時津風が、波止場の小舟を揺らした。

真艫を受けた小舟は、風に誘われるがまま大河の入口へと向かう。

大河の入口までもう間近という時、小舟が止まった。

小舟の先に繋げられた舫綱がミシミシと鈍い音を立て、岸から離すまいとしている。

その光景にどうしようかと迷いながらも、劣化でささくれ立つそれを取り敢えず握ってみる。
舟と風の重さがのった綱が、ギリギリと手に食い込んでいく。

痛みに顔を顰めていると

「もうその網は使い物にならんぜ」

いつの間にか現れた金の妖が、側で笑っている。

妖の長い金の鬣が風に煽られ、周囲に金色を撒き散らす。

「良い風じゃねえか。今なら舟に間に合う。この風にのりゃあ遠くへ行けるだろうよ」

金の妖はそう言うと、緩慢な動作で空を仰いだ。

妖に釣られて空を仰ぎ見ると、どこまでも澄んだ青空が広がっている。

天気上々、吹き抜ける風、良好。

金の妖の言う通り、今が乗り時なのだろう。

そんな事を思いつつ空を見上げ、風に身を任せていると、体の内側が澄んでいくような感覚がする。

「乗りてぇ風ってのはコレじゃねえのか?」

金の妖が笑いながら問いかけてくる。

ああ、どこまでも見透かす妖め。

「…乗りてえ風に、遅れたヤツは」

ポツリと呟くと、

「間抜けってんだ」

金の妖が言葉を引き継ぎ、ニヤリと笑った。

妖が笑むのと同時に、手の中の綱を杭から引き千切る。チクチクと痛む綱を握りしめ、綱の先にある小舟へと向かった。

踝が浸かるほどの浅瀬を小走りで駆ける。
パシャパシャと軽やかな音は次第に消え、重たい水の塊が太ももを叩き、終には腰の高さまで迫る水が行く手を阻む。
前へ進もうとする体を押し留めようとせんばかりに、波のような水が体を襲ってくる。
手から綱が離れ、絶対絶命と思った瞬間。
伸ばした手が小舟の縁を捉えた。
水を含んで重い体を持ち上げ、舟に雪崩込む。

息を整える暇もなく、舟の端へと向かう。
舟の先には、岸を恋しむかのように綱が風に揺れて、川面を叩いている。
濡れ鼠となっていることも忘れて、無我夢中で小舟からソレを取り外した。
もう役に立たないソレは、所々が解れて見窄らしい。河へ向かって思いっきりソレを投げ捨てると、ポチャンと軽い音がした。

劣化した綱は、暫く川面をくるくると漂っていたが、河の渦に巻き込まれ、姿を消していった。

その光景にほっと息をつき前を向くと、

「じゃあな、行ってきやがれ」

金の妖の声が、背後から響いた。

一人を乗せた小舟が、大河へ向かって進んでいく。

天気上々、気分快晴。
前途不明なれど、迷いなし。

吹き抜ける風に、小舟は大河の流れに乗ったのだった。
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空模様

8/18/2024, 2:21:09 PM

鏡を見ると

鏡の向こうに、世界が広がっているのではないかと想像してしまう。

虚像の自分が住まう、無数の平行世界──パラレルワールドが広がっているのではないかと。

パラレルワールドの世界では、様々なルートが存在している。
これから起こり得る未来だって、もしかしたらそこには存在しているのかもしれない。

だから、鏡の向こう側へ

「こちらのルートは、玉石混交なれど笑顔あり。小さな幸せに満ちているよ」

そう、微笑みながら報告する。

私の笑みにつられた鏡の向こうの私(虚像)が、笑みを返してくる。
パラレルを行く私の元にも、きっと笑顔が届いたのだろう。

パラレルの世界は、時空さえも軽やかに超える。

今が幸せであるならば、それは過去や未来、どこかしらで答えとして現れてくる。

ほら、

現に今だって──

ココでこうして貴方に出会えている。

この奇跡こそが、答えだ。

8/17/2024, 2:42:37 PM

いつまでも捨てられないもの…。

そうさなぁ、やっぱ『過去』かなぁ。
でも、まぁ。
過去は現在、思い出へと変容している最中だ。

良いアーカイブになってくれれば、幸いである。

実物で捨てられないものは、学生時代に書いた物語たち。

中学生の時に書いた人生初の物語は、ノート1冊を使いきった。

ノートに書いたものをパソコンで入力するという初体験もこの時にしている。
キーボード操作が苦手で、凄く時間がかかったのを覚えている。今となってはあり得ないことだが、手書きの方が早かったと思う。

ノートは引っ越しの時に手放してしまったが、印刷したものをまだ残している。…恥ずかしくて読めないが。

高校時代は、文章を書く部活に入っていた為、いくつか作品が残っている。

短編が、2段組構成の3ページで2つ。
中編は、2段組構成の17ページが1つ。

長編は、序章1段組構成の7ページ。
前編&中編、2段組構成の49ページ。
そして、後編は、
家族からの理解が得られず未完となった。

当時は、家にパソコンが1台しかなかった。
その為、長時間パソコンを占領する私は、使用許可がおりなくなってしまった。
当初計画していたエンディングや、シリーズ化の空想も空想のままで終わってしまった。
今思えば、もう少し上手くやればよかったとも思うのだが…。
夢中になると時間を忘れるタイプの為、遅かれ早かれこうなるのは運命だったのだと思う。

パソコンを使わせてもらえなくなってからは、手書きで部誌に参加するようになる。
その為、詩のような散文が数ページ残るばかりだ。

そういった苦い思い出も残っているものなのに、当時の文章を読むと楽しんで書いていた記憶が蘇ってくる。
生き生きとした文章が、それをよく物語っている。
故に手放すことが出来ない。

創作環境に縛られなくなった今、当時の思いが少しでも晴れれば良いとこっそり思っているのだが、文章の技巧などを過去に置き去りにしてきてしまったのだから…。
まったく…なんと言ったら良いのだか。

まだ自身の中で判然としていないが、1日も休まずここを続けられているのは、当時の思いが慰められているから──なのかもしれない。

何かが1つでも違えば、私はココにはいない。
運命とは、本当に面白いものだとしみじみ思う。

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