世界の片隅にて

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4/15/2026, 11:21:38 AM

『届かぬ想い』

桜が散り、葉となり、枯れ落ちて、雪が積もる。だが、桜の木はそれだけで終わらず、次の春にはまた花を咲かすのだ。
花鳥風月、なんて言葉は桜にこそふさわしい。俺はそう感じている。四季とは、恒久に変わらぬ不変のものだ。例え存在しなくなったとしても、人はそれを語り継ぐに違いない。そうやって人は生きてきたのだから。人の営みとは、そうして加速していくものだろう?何度も見て来たよ。

桜は、季節によって姿を変える。だから言うなれば、変化の縮図だ。綺麗な姿だけではなく、散った後でさえも風情がある。ほら、立派な花鳥風月だろう。
長生きする桜はそうやって、普遍と変化の中で揺れ動いているのだ。

いつか、眠りにつける時には、桜の散る中で眠りたいものである。
……まぁ、俺が眠りにつけるのは、桜すらない無の中なんだろうが。

4/14/2026, 11:33:47 AM

『神様へ』

昔の話だ。私の居た孤児院で、おまじないのようなものが流行ったことがある。この方法をしっかりと成功させれば、ほんの小さなお願いを神様が願いを叶えてくれる、というありきたりなもの。ただ、まぁその過程が問題だった。
実際に、当時おまじないの時点で成功した者はいない。私含めてだ。

さて、そんな子供たちを苦しめた、おまじないの方法はと言うと。
まずは適当な紙に水性のペンで願い事を書く。乾かしておく必要があるらしい。次にその願い事を消す。蛇口の水を使って。そしてその上から、一番最初に書いた願い事をもう一度書くのだ。これで枕の下に入れて眠れば、翌日には願い事が叶うという。

このおまじないの問題点は、蛇口を使って、水性ペンで書いたことを洗い流す必要がある点だろう。紙が破けることが当然の事のように起きた。その結果、皆が諦めてしまいブームが過ぎ去って行ったのだが。

ただ、願い事が叶わなかった訳ではない。職員たちが「なんのお願いしてるの?」と聞いて回り、簡単なものであれば翌日に叶ったからだ。私は翌日の昼食が少し豪華になった(料理が増えすぎて残したのは内緒)。本を貰った知り合いもいたとか何とか。全員の願いを頑張って叶えてくれたように思う。

案外、神様とは身近な人間のことを言うのかもしれない。

4/14/2026, 9:35:32 AM

『快晴』

ノイズ混じりにメガホンから音声が告げられる。
「本日快晴なり、皆さん、どうかよい休日を」
鳴り響いてた朝の合図。いつ頃からだったかは定かではない。政府が作ったものなのか、あるいはこのグループ特有の合図なのか。それは定かではない。
とにかく、この音声の後に、地中の扉が開いて、一日を始めるのだ。
ある者は笑いながら外に出て居たが、時期に扉が開いても動かなくなっていく。そのうちに合図は消えて、そこには骸だけが残った。

それにしても、不思議なことである。快晴など、ここ数十年は観測されなかったというのに。なぜ快晴が合図なのだろうか。希望を謳いたかったのかもしれないし、暗号に似たなにかだったのかも。
まぁ、それを確認する術ももうないのだが。