夜空を見る。
目に飛び込んできた美しい星屑がいつか落ちてくるんじゃないか、自分のものになるのではないかと、いつもワクワクしていた。
あれから数十年。私は天文学者となり、すっかり夢のない大人になってしまった。
手に入れたかった星空は背伸びしても届かない。
落ちてくる星は小さすぎて燃え尽きてしまうし、その他の溢れる星は私が手に入れるには大きすぎる。
そう、思っていたのだが。
私が新しい星を発見すると、世界は一気に輝きを増した。
その星は、生命がいる可能性が極めて高いとか。
私は二つの意味で、新たな星を発見した。
クラスの一番後ろ、窓際の席に座った少女が俺を見つめている。
気づいたのは席替えをした翌日だった。
最初は、薄気味悪いと感じた。
だって、授業中もずっとこっちを見ていて、俺が振り返っても目を逸らさない。
そんな彼女の瞳が他の人より黒く見えて、不気味に感じていた。
しばらく経っても、その感情は変わらなかった。
だけど少しだけ、彼女に興味を持ち始めたのかもしれない。
いつからか、彼女が俺を見つめる理由を考え始めた。
単純に自分が気になるのか、それともいつのまにか怨みをかったのだろうか?
寝癖がついているとか?……にしては何日も続く。
最初は、やはりネガティブなものだった。
でも、ある日それが覆った。
いつものようにふと俺が振り返ると、彼女は驚いた顔をしてそっぽを向いた。
その顔が赤面しているように見えたから、だから、こう思ってしまった。
――もしかして、彼女は俺が好きなのか?
そう思ってからは早かった。
見つめる彼女のすまし顔が、酷く可愛く見えてきたのだ。
思春期の男子とは単純なもので、いつのまにか彼女を見ると鼓動が早まるようになっていた。
「最近よくボーッとしてるくね?どーした?」
隣の席の親友が言う。
「俺……好きな人、できたかも」
そう言った俺の顔は、確かに赤くなっていた。
そして夜、明日の放課後に告白すると……決めた。
そして翌日、席替えがあった。
親友とはバラバラになってしまったが、なんと彼女が隣だった。
これはチャンスではないか?今言った方がいいんじゃないか?
思考が巡る中、ふと彼女の方を見る。
彼女は、別の方向を見ていた。
その視線の先には、さっきまで隣にいた、親友。
その時、察してしまった。
ああ、彼女が見てたのは俺じゃなく、俺の隣の――
彼の瞳は私ではなくどこか遠くを見ている。
「ちょっと、ちゃんと聞いてるの?」
私が語りかけても、どこか上の空だった。
彼はあまり食べようとしない。
私が食料を渡しても、
生気のない瞳でただ見つめるだけ。
「食べないの?」
でもそのおかげで私はあまり飢えなかった。
彼は外に出ようとしない。
私があまり出させたくないのもあるが、
彼は外に出ようとしなかった。
(やはり彼は他と違うのだろうか?)
そう思っても、彼の白い肌に触れる勇気はなかった。
ある日突然彼に襲われ、噛まれた。
「いつか来ると思っていたが、こんなに唐突だとは。」
その時だけは彼がはっきり私を見つめていた。
手を伸ばし、彼の青い顔に手を添える。
その体に体温はない。
そのまま私は倒れた。
彼の瞳は私ではなくどこか遠くを見つめている。
でもこれでいいのだ。
これで二人、ずっと隣にいられるのだから。
……永遠に、ゾンビとして。