伸びた餅のちぎれた部分

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 彼の瞳は私ではなくどこか遠くを見ている。
「ちょっと、ちゃんと聞いてるの?」
私が語りかけても、どこか上の空だった。

 彼はあまり食べようとしない。
私が食料を渡しても、
生気のない瞳でただ見つめるだけ。
「食べないの?」
でもそのおかげで私はあまり飢えなかった。

 彼は外に出ようとしない。
私があまり出させたくないのもあるが、
彼は外に出ようとしなかった。
(やはり彼は他と違うのだろうか?)
そう思っても、彼の白い肌に触れる勇気はなかった。

 ある日突然彼に襲われ、噛まれた。
「いつか来ると思っていたが、こんなに唐突だとは。」
その時だけは彼がはっきり私を見つめていた。
手を伸ばし、彼の青い顔に手を添える。
その体に体温はない。
そのまま私は倒れた。

 彼の瞳は私ではなくどこか遠くを見つめている。
でもこれでいいのだ。
これで二人、ずっと隣にいられるのだから。
……永遠に、ゾンビとして。

3/13/2023, 9:52:07 PM