伸びた餅のちぎれた部分

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 クラスの一番後ろ、窓際の席に座った少女が俺を見つめている。
気づいたのは席替えをした翌日だった。
最初は、薄気味悪いと感じた。
だって、授業中もずっとこっちを見ていて、俺が振り返っても目を逸らさない。
そんな彼女の瞳が他の人より黒く見えて、不気味に感じていた。

 しばらく経っても、その感情は変わらなかった。
だけど少しだけ、彼女に興味を持ち始めたのかもしれない。
いつからか、彼女が俺を見つめる理由を考え始めた。
単純に自分が気になるのか、それともいつのまにか怨みをかったのだろうか?
寝癖がついているとか?……にしては何日も続く。
最初は、やはりネガティブなものだった。
でも、ある日それが覆った。

 いつものようにふと俺が振り返ると、彼女は驚いた顔をしてそっぽを向いた。
その顔が赤面しているように見えたから、だから、こう思ってしまった。
――もしかして、彼女は俺が好きなのか?

 そう思ってからは早かった。
見つめる彼女のすまし顔が、酷く可愛く見えてきたのだ。
思春期の男子とは単純なもので、いつのまにか彼女を見ると鼓動が早まるようになっていた。
「最近よくボーッとしてるくね?どーした?」
隣の席の親友が言う。
「俺……好きな人、できたかも」
そう言った俺の顔は、確かに赤くなっていた。
そして夜、明日の放課後に告白すると……決めた。

 そして翌日、席替えがあった。
親友とはバラバラになってしまったが、なんと彼女が隣だった。
これはチャンスではないか?今言った方がいいんじゃないか?
思考が巡る中、ふと彼女の方を見る。
彼女は、別の方向を見ていた。
その視線の先には、さっきまで隣にいた、親友。
その時、察してしまった。
ああ、彼女が見てたのは俺じゃなく、俺の隣の――

3/15/2023, 6:58:26 AM