黒瀬くらげ

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5/5/2023, 2:17:16 PM

命は大切に





「ねぇ...君、死にたい?」


「は...?」
「君さぁ、ここんとこ死にたいって思ってない?」
「は...?なんですか、急に」
「オレの質問に答えてよ」
「いい加減にしてください...警察呼びますよ」
「ケーサツ?それって...オレより偉いヒト?」
「は?...なんなんですか」
「オレは死神」
「すみません...俺、用事あるんで」
「お前が死にたいなら...殺してあげるよ?」



俺はいつも通り家に帰るために歩いてた。
塾で疲れてたから、なるべく早く帰りたかった。
塾から家までの帰り道は、そこまで遠くなかった。
ただ...俺はあんまり通りたくない場所が
1箇所あった。
そこはとても暗くて、人通りも少なくて
色んな意味で怖かった。だから通りたくなかった。
でも、今日は早く帰りたかった。だから
怖いけど...頑張って通った。
そしたらこの死神とやらに会った。
怖くてしょうがないのに...足が動かない。
この人が死神かそうでないかはどうでもいい。
死神でも変質者でも逃げなきゃいけない。
怖い。早く逃げたい。

「お前が死にたいなら...殺してあげるよ?」

「え...」
「どうだ?とりあえず死んでみるか?」
「...死にたい」
「そーかそーか...んじゃ、理由を聞こうか」
「俺は...学校でも家でも必要とされない」
「君は必要とされたいの?」
「わからない」
「うーん...曖昧だな」
「俺には居場所がない」
「君は嫌われモノなんだねぇ」
「俺はいつも殴られて...」
「えぇ...痛そうだねぇ」
「だから...もういい」
「疲れたってことかな?」
「うん...死んで全部終わりにしたい」
「なるほどねぇ」
「...」
「わかった!!まず名前を教えてよ」
「...雨宮 玲」
「アマミヤ レイ?」
「うん」
「あっはwヘンな名前だなお前」
「変なのかな」
「んー...良いねぇ」
「何が...?」
「まぁとりあえずよろしくねぇ、レイ」
「はぁ...えっと、アンタの名前は......」
「オレは死神」
「さっきも言ってた」
「だから...オレのことは死神様って呼んで」
「死神...様......?」
「そーだ」
「はぁ...」


「そんじゃーまずは、君に覚悟があるか」
「え...なんの覚悟?」
「そりゃもちろん死ぬ覚悟だよ」
「...」
「でも、死ぬんだったら殺す覚悟も必要だよなぁ」

5/4/2023, 10:57:20 PM

願いごと




「はぁ...疲れた」

私は今、学校帰りに神社で休憩してる。
こんな場所に神社があったのは知らなかった。
放課後はいつも友達と遊びに行ってたから
知らなかったんだと思う。
この神社...日陰もあるし、今日は風が気持ちいいし
割と好きかも。
学校からも家からもそこまで遠くないし。

「おねぇちゃん」

この神社、これからも来ようかな。
人も少ないし。

「おねぇちゃん」

そういえば明日数学のテストじゃん。
えーだるいな。

「おねぇちゃん!!」

「え!?」
誰?女の子?
さっきからいたっけこんな子。
でも...着物?服装がなんか和って感じ。

「えっ...と......迷子?大丈夫?」
「何言ってんの?」
「へ?」
「おねぇちゃんが迷子じゃないの?」
「え?私はただ休憩しに来ただけで...」
「!...じゃあ僕と遊んでくれるの!?」
「え...僕?男の子?てか遊ぶって何―」
「僕は女の子だよ」
「そっか...変な子だね」
「僕に向かって変な子とか失礼だぞ」
「あー、うん」
やっぱり変な子だな。なんでそんな服きてんだろ。
いや、その前に名前とかまだ知らなかった。
「ねぇ、君の名前は?」
「僕の名前だって?」
「え、そう...だけど」
「うーん...わかんないなぁ」
「え?どういうこと?」
「あー、わかった!!「神様」ちゃんって呼んで!!!」
「神様...ちゃん?」
「うん!!」
「え...何?え?どういう...」
いや、子供だし...遊びに過ぎない。
さっき言ってた 遊ぶ ってこれのことなんかな。
「あー...おけ、神様ちゃん」
「なぁに?」
「さっき言ってた遊ぶってどーゆーのなの?」
「あー...僕、暇だったんだよね」
「そーなんだ」
「この神社...人が来なくてさ、すごい暇だった」
「あー、なんかして遊ぶ?」
どうせ鬼ごっことかで満足するっしょ。
まぁ色々気になるところはあるけど、
この子なりの設定とかなんかな。
まぁいい。
「ねーねー神様ちゃん」
「んー?」
「暇ならさ...お姉ちゃんと遊ぶ?」
「え!遊んでくれるの!?」
「もちろん」
「やったー!!」
「じゃあ、鬼ごっこか隠れんぼどっちが――」
「じゃあおねぇちゃんの名前聞いてもいい?」
「え?」
「名前」
「あ...あぁ、私は 水谷 凛 」
「みず......えーと」
「凛」
「りんちゃんね!!」
「そーそー」
「僕は神様ちゃんだよ!」
「うん、それさっき聞いた」
「じゃあ遊ぼう!」
「んじゃあ鬼ごっこか隠れん―――」
「りんちゃん」
「へ?」
「りんちゃんは...何か「願いごと」ある?」
「え...っと、まぁ一応あるけど」
「じゃあそれ、僕に教えて」
「なんで」
「だって...遊んでくれるって言ったじゃん」
「私の願いごとをバカにする気?」
「願いごとを叶えてあげる」
何言ってんのこの子。
いや、でもただの子供。
適当にあしらっとけば別に問題はない。
「あー、えーと...私の願いごとは......」
願いごと なんだろう?
あんまり考えたことなかった。
友達とは上手くやっていけてるし、
家族とも仲は良いし。
勉強も意外と出来てるし。
なんだろ。
あ、あれかも。
「あー、彼氏が...欲しい」
「かれし?」
「うん」
「えー、そんなのいる?」
「いるよ、てかめちゃ大切でしょ」
「なんで?」
「イチャイチャとかしたいじゃん」
「はぁ...えー、誰でもいい?」
「ダメに決まってんだろーが」
「えー?ダメなの?」
「ダメだよ」
「じゃあどんな彼氏が欲しいの」
「高身長でイケメンで優しくて、私のこと―――」
「そんなのいなくない?」
「えー...神様なんだから、どーかお願いしまーす」
「...もう、願い叶えないよ?」
「あ、別に良いよ」
「僕怒った」
「あーあ怒っちゃった」
「りんちゃん、神社の中...1回見直してきて」
「え?神社の中?なんで」
「色々書いてあるから探してきて」
「何を?」
「自分で考えて」
あーあ、神様怒っちゃったよ。
しゃーない、めんどいけど探すか。


一通り神社の中を探してみた。
そしたら、木でできた看板みたいなものに
書いてあった。


叶神(かなえがみ)

叶神は人の願いごとを叶える
願いごとが叶うのは
叶神が認めた者だけ
叶神を信じない者は願いごとが
叶えられない
叶神に認められた者はいるが
そう簡単に願いは叶わないと言われていた


スマホでも調べてみた。
そしたら、大切な情報が出てきた。

叶神に願いごとを聞かれたら、まず素直に答える。
願いごとの前に名前を聞かれたらしっかり答える。
(苗字か名前どっちかが伝わっていれば問題ない)
願いごとを叶えてあげる と言われたら。
叶うまで叶神に付き合わなくてはいけない。
願いごとは叶神に認められた人のみ叶う。
叶神に認めれるにはまず叶神を信じること。
稀に、叶神に嫌われることもある。
嫌われたら願いごとは叶わず、
叶神が怒っている状態だとその者に災いが起きる。
叶神に嫌われても大丈夫なのは1回目のみ。
2回嫌われたら、叶神はその者に災いを起こす。
1回嫌われたらまず自分の情報を叶神に話すべき。
大体は満足して機嫌をなおすと言われている。

これから、色々わかったことがあった。
とりあえず、もう叶神の機嫌をそこねないように。
満足するまで私の情報を話そう。


「神様ちゃーん」
「......」
まだ怒ってる。
「ねーねー話そうよ神様ちゃん」
「何を」
「私のことについて」
「!?...いいの?」
「うん」


それから私の家族のこと、友達のこと、
学校のこととか街のことをいっぱい話した。
叶神の機嫌は戻ったみたい。
でも、未だによくわからない。
本当にこの子が叶神なのか。
ただの子供じゃないのか。


あれから1週間ぐらい
神社に行って叶神と話してた。
学校帰りに神社に行くといつも待ってる。
そういえば、どうやったら願いが叶うのか
具体的な内容、知らなかった。
私は、そもそも叶神に認められてるのか。
認められたあと、どうやって願いが叶うのか。
知らないことが多すぎた。


いつものように学校帰りに神社に寄った。
いつも通り鳥居をくぐり抜けて
いつも座ってる石の方に歩いた。
そこにはいつも通り叶神が...

そこに叶神はいなかった。
どこを探しても、叶神どころか
人っ子一人いなかった。

私は認められなかったの?だったら災いが起きる。
早く叶神を見つけなきゃ。

私は神社以外も探すことにした。
神社から街への階段を駆け降りて、
走って街に.........

目の前が真っ暗になった。
何も見えない。
体が痛い。何これ。
私...ひかれたの?
最後、クラクションが聴こえた。
急いでて信号無視しちゃったのかな。
痛いなぁ。私...何を間違えたんだろ。
あ...死ぬな。これ。


叶神に認められるにはまず叶神を信じること



「僕を信じないからだよ」

りんちゃん。1回目は嫌われちゃったね。










あーあ。暇だなぁ。
誰か、遊びに来ないかなぁ。

あれ...学生かな?
ちょっと近く行こーっと。

「はぁ...疲れた」

あはは。なんだか懐かしいな。

「おねぇちゃん」
「...」
「おねぇちゃん」
「...」
「おねぇちゃん!!」
「え!?」
あはは。面白いなぁ。
「えっ...と......迷子?大丈夫?」
「何言ってんの?」
「へ?」

「君が迷子なんだよ 水谷 凛ちゃん」

「なんで私の名前......なんで...」
「僕神様だからねぇ」
「神様...?」
「そう」
「凛ちゃん」

願いごとを叶えてあげる













END

5/2/2023, 4:37:47 PM

僕は君を殺した



痛い。辛い。苦しい。
誰か助けて。

「ねぇ、やめなよ」

誰だろ。僕を助けてもいいことなんか無いのに。

「大丈夫?」
「え、うん...」
「名前は?」
「僕は...律」
「りつ?」
「うん...平井 律...君は?」
「俺の名前?」
「うん...そう」
「俺は朝霧 天音」
「あまね...いいな」
「え?」
「いや、あまねって名前いいなって」
「そうかな?」
「うん」
「ねぇ...朝霧さん」
「あまねで良いよ」
「え...あ、うん」
いきなり呼び捨てか。何なんだろ...この人。
「ねぇ...あまね」
「ん?」
「なんで僕を助けたの」
「...」
「僕が殴られてんのなんか無視した方がいいのに」
「だって痛かったでしょ?」
「......」
痛かった。殴られるのも、暴言吐かれるのも嫌だ。
辛かった。助けて欲しかった。でも...
「でも僕に関わったらあいつらが―」
「そんなのどうでもいい」
「え...」
「りつが助かるんだったらなんでもいい」
何なんだ。今まで僕の事見向きもしなかったのに。
今更助けられても信用できない。
今の言葉も信用しない。
きっと僕のことを裏で嘲笑ってんだ。
弱くて何も出来ない雑魚だって。
だったら...
「とにかく僕とはもう関わらない方がいい」
「なんで」
「君には関係ない」
「ちょっと待っ―」
僕はずっと前に決めてた。人は信用しない。
もういい。全部一人でやる。邪魔しないでくれ。


「ねぇ、やめなよ」
「大丈夫?」
「だって痛かったでしょ?」
「そんなのどうでもいい」
「りつが助かるんだったらなんでもいい」
「俺は朝霧 天音」
...何なんだよ。もう、人は信用しない。
皆助けてくれない。皆、僕を嘲笑う。
弱いやつだって。可哀想なやつだって。
皆、僕のことなんか...
「りつが助かるんだったらなんでもいい」
弱いやつ、可哀想なやつだって......
「だって痛かったでしょ?」
痛いよ。苦しいよ。辛いよ。悲しいよ。悔しいよ。

「りつが助かるんだったらなんでもいい」

もし...もしあまねが本当に思ってるんだとしたら。
もし、本当に助けてくれるとしたら。
助けて。


「......」
人の机に花瓶なんか置くなよ。
僕はまだ死んでない。
またあいつらだ。
なんで同じクラスにするんだろ。
先生も皆、僕のことなんか―

「朝霧が平井と話してたらしいよ」

「マジか」
「えー朝霧君かっこいいのに勿体なぁーい」
「ねーほんと、平井ってあの雑魚のことっしょ?」
「おいやめろよw可哀想だろ」
あまねが僕と話してるところ見られたのか。
だからやめろって言ったのに。
「りつ」
あいつら、ついでに僕のこと言ったし。
ほんとに同じ人間とは思えない。
「りつ」
いつもそうだ。周りの奴らも見て笑ってるだけ。
皆、ヘラヘラして。気持ち悪い。

「りつ」

「...!」
「...あまね」
「おはよ」
「なんで来たの」
「昨日、中途半端な感じで終わっちゃったから」
「僕にはもう関わるなって言ったよね」
「関わらない方がいいって言われた」
「同じ意味だよ」
「いや違う」
「あまね、君は僕に......」
皆がこっち見てる。
「りつ?」
「あまね、違うところで話そう」
「わかった」


「りつ...関わるなってどういうこと」
「矛先があまねに向くってこと」
「...」
「クラスで言ってたんだ」
「「朝霧が平井と話してる」って」
「俺がりつと話して何がダメなの」
「わからないの?僕が気持ち悪いからだよ」
「気持ち悪い?」
「弱くて何も出来ない無能だから気持ち悪い」
「...」
「そんなやつとあまねが話してたら―」

「なんでそんなこと言うの」

なんで...なんであまねがそんな顔をするの。
辛いのはこっちなのに。痛いのは僕なのに。

「僕は矛先があまねに向くのが嫌だ。
僕が殴られてるのを助けてくれた。
でも僕を助けたから次はあまねが殴られる
かもしれない。暴言を吐かれるかもしれない。
それが嫌だから。もう関わらないで」
「わかった」
「...じゃあ、あの時助けてくれてありが―」
「嫌だ」
「...え」
「りつが関わって欲しくない理由はわかった。
でも、嫌だ。俺はりつと関わる。それは
俺が決めることだから」
「ねぇ...なんで今なの」
「...え?」
「今まで僕のことなんか見向きもしなかったのに」
「りつってあんま周り見ないでしょ」
「は...?」
「俺、転校生だよ」
「うそ」
「ほんと」
「え、じゃあ尚更なんで」
「俺と似てたから」
「...え、今なんて――」
「なんでもない」

あまねの顔が、見たこともないくらい悲しかった。
触れちゃいけないってすぐに理解した。


それからあまねとはいっぱい話した。あいつらの
僕に対する暴力とか暴言は変わらなかった。
変わったことは、皆のあまねへの対応だ。
あまねが僕と関わったことで矛先があまねにも
向いた。
そして...最近あまねのケガが増えた。


「あまね...大丈夫?」
「え?何が?」
「最近ケガ増えてる」
「あーwうん、大丈夫」
「本当に?」
「うん」
「やっぱり僕なんかに関わらない方が――」
「そんなこと言わないで」
「でも...僕のせいだ」
「りつのせいじゃないよ」
「ごめん」
「なんで謝るの?」
「僕は助けて貰ったのにあまねのこと
助けられてないから」
「俺は助けられなくても平気だよ」
「......」
「心配かけてごめんね」
「...」

ごめん。あまね。
僕、君を助けることが出来ない。
僕が弱いから。僕が無能だから。
胸を張って「あまねのこと守らせて」って
言えなかった。守れる自信がなかった。

「...あまねは優しいね 」
「...? なんでそう思うの」
「いつか話すよ」
「なんだよそれw」


あまねと出会ってから、あまねが助けてくれてから
半年経った。
あれから、だんだん僕への暴言、暴力が減った。
それと同時にだんだんあまねの怪我が増えた。
そのことについて何回もあまねに大丈夫か聞いた。
でもいつもあまねは笑ってあしらった。
助けたい。
でも本人が大丈夫と言う限り何も出来ない。
僕は、なるべくあまねの発言を意識して生活した。
助けて欲しいような発言を探してた。
でも、あまねからのSOSは見つからなかった。


僕は今日普通に登校していた。
普通に学校に行って、普通に上履きを履いて、
普通に教室に入って、普通に朝会に参加した。
朝会では悲しいお知らせがあるって
校長が言ってた。
僕は あまり僕には関係ない話だ って思った。

「今日は皆さんに悲しいお知らせがあります」

――朝霧 天音さんが亡くなりました――

「は...?」
なんで...事故?交通事故とか?
それか事件?誰かに殺された?なんで?
なんで死んだの。

「昨夜、自宅で自殺を――」

嘘だ。自殺なんて、嘘だ。
あまねは...大丈夫って..ずっと.........
え?いない?もういないの?
あまねが死んだ? 嘘つけ。
昨日まで...一緒に.....


僕はあちこち探しまわった。
いないはずない。昨日までいたんだ。

あまねのクラスに行った。
あまねの机には...花瓶が置かれていた。
あまねの荷物も何も無くて
本当にあまねが死んじゃってるみたいな。
でも、まだわからない。
死んでなんてない。そんなわけない。

僕は今まであまねと歩いた場所を駆け巡った。
学校は早退した。学校なんかより大切だった。
僕にとってあまねは...
ダメだ。あまねがいなくなったら僕は...
嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ。
嫌だ。そんなの考えられない。

そうだ...昨日あまねから教科書を借りてた。
届けに行こう。返さなきゃ。
会わなきゃ。あまねに。

僕はあまねから借りてた教科書をもって
家から飛び出そうとした。
その時――
1枚の紙が教科書から落ちた。
僕は...その紙を手に取った。
その紙は、メモ用紙のようなもので
そこまで大きくはなかった。
紙には...ただ一言......

「ごめんね」

そう書かれてた。





僕は今、学校にいる。
手の中にあるメモ用紙のような紙は、
強くにぎりしめたせいか
くしゃくしゃになってしまった。
僕はあれから2週間。あまねを探した。
今まで行った場所。あまねが好きな場所。
よく立ち止まって話した場所。
初めて会った場所。
隅から隅まで探した。だけど
どれだけ探しても
あまねなんてどこもいなくて。
皆があまねの死を忘れて笑顔で過ごしていた。
どれだけ探しても
どれだけ呼んでも
いない。
僕がどれだけ殴られても
あの時みたいに...

「ねぇ、やめなよ」

あの時みたいに...助けに来てくれない。

こうやって振り返ると
最悪な人生だったな......
でも...あまねに出会えたことが唯一の救いだった。
最悪だったけど、良かった。
ごめん。あまね。僕は助けてもらったのに。
僕は君のことを助けられなかった。

「ごめんね」

なんで君が謝るの。僕が悪いのに。
僕と関わらなかったら、こんなことには...
僕のせい...僕のせいだ。
僕が悪い。あまねの優しさに甘えてた。
最期の最後まであまねは優しかったな。
それに比べて僕は...
ごめん。あまね。ごめんなさい。


もう...そっちに逝くから。
待ってて。すぐに会いに逝くから。
もう...一人で抱え込ませないから。
また、会ったらちゃんと謝るね。
ごめんね。あまね。


そういえばあの時――

「俺と似てたから」

なんで僕を助けたか聞いた時にあまねが答えた。
どういう意味だったんだろう。
また会ったらちゃんと聞こう。

―――あれ。
頭から落ちたのかな。
飛び降りって...こんな痛いんだ。
血が出てるのがわかる。
痛い。
あれ...何だっけ。
僕にとって大切な人。
忘れちゃいけないこと。
何だっけ。
誰?
痛いよ。
痛い...



痛い。辛い。苦しい。
誰か助けて。
















END